
セルジオ越後の「新・サッカー一蹴両断」(31)
北中米ワールドカップ本大会メンバー発表前の最後の強化試合となった3月のスコットランド戦とイングランド戦、サッカー日本代表はともに1−0で勝利を収めた。特に、格上イングランドから初勝利を挙げたことは大きなニュースとなった。おなじみのご意見番、セルジオ越後氏に収穫と課題を聞いた。
【左の三笘と中村に感じる可能性】
ワールドカップのシミュレーションという意味では、スコットランド戦はほとんど参考にならない。日本の主力はベンチスタート。しかもGK以外の10人を途中で交代させた。交代枠5人の本番とは条件が違いすぎるし、相手もそんなに強くなかった。いかにも練習試合といった感じで、代表生き残りに向けて最後のアピールをしたい選手にとっては酷だった。
続くイングランド戦は歴史的な1勝だね。昨年10月のブラジル戦に続く、格上からの初勝利。ワールドカップを前に雰囲気もよくなったし、明るいニュースだ。僕もうれしいよ。
特に三笘薫(ブライトン)のゴールはお見事。自らボールを奪い、パスを出し、ペナルティエリアにタイミングよく走り込み、相手DFの足をうまくかわしながらシュートを打ち、コースも完璧だった。
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ケガで本大会出場が難しそうな南野拓実(モナコ)の穴、左シャドーをどうするのかという課題に関しては、今回のイングランド戦のように三笘が入り、ウイングバックの中村敬斗(スタッド・ランス)と時折ポジションチェンジする形が答えになるかな。両選手とも得点力が高く、カウンター主体の日本の戦い方にピタリとハマる。ふたりの同時起用には可能性を感じる。
また、守備陣ではGK鈴木彩艶(パルマ)の活躍が目についた。長期の故障から復帰したパルマではミスも見られ、試合勘も含めて少し心配していたんだけど、今回は2試合とも安定していた。身体能力が高く、シュートへの反応もボールに寄せるタイミングもいい。彼がいなければ、イングランドには勝てなかった。
一昨年のアジア杯(準々決勝で敗退した時)とは別人だ。パルマはあまり強くなく、たくさんシュートを受ける機会があるので、鍛えられたんだろうね。すばらしかったよ。
DF鈴木淳之介(コペンハーゲン)もよかった。1対1に強いし、当たり負けもしない。(身長180cmで)センターバックとしてはそんなに大きくないけど、ジャンプ力があるからヘディングも負けない。加えて、スコットランド戦のゴールに絡んだオーバーラップでもわかるように攻撃のセンスもある。あれだけ思いきった攻撃参加ができるのは頼もしい。
【自陣に引いて守る時間が長すぎる】
ここまで明るい話ばかりしてきたけど、今回の遠征で見えた課題を挙げるなら、イングランド戦では自陣に引いて守る時間が長すぎた。相手のほうがチャンスは多かったし、いつやられてもおかしくなかった。
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DFを中心にみんな体を張ってよく守り、少ないチャンスを生かして点を取った。それは褒めるべき。でも、そういう戦い方でトーナメントを勝ち上がっていくのは、体力的にも精神的にもなかなか難しい。主導権を握る時間帯をある程度つくる必要がある。カウンター頼みの攻撃パターンをどう増やすのか。選手交代も含めて、もっとメリハリのある試合運びを意識したい。
裏を返せば、まだまだ強豪と対等に戦えるレベルには達していないということでもある。現時点でのベストメンバーを揃えた日本に対し、イングランドはエースのハリー・ケイン(バイエルン)らが不在で、その4日前に行なったウルグアイ戦からも大幅にメンバーを入れ替え、実質1.5軍くらいのメンバーだった。そういう相手にも、ずっと押し込まれてしまうのが現状の力だ。
「よい守りからよい攻撃へ」と言えば聞こえはいいけど、やっているサッカーはドイツとスペインに勝った前回のカタールワールドカップの時と大差ない。ひたすら守ってカウンターを狙うだけ。相手を押し込んで勝てるようにはなっていない。
もっとも、森保一監督も選手たちもそれはわかっているだろう。森保監督は試合後のインタビューで「苦しい展開が多くて、負けていてもおかしくない試合」「このままではダメだと思います」と振り返っていた。
三笘も「(勝ったけど)本番じゃない」と浮かれていなかった。他の選手たちも大喜びする感じではなく、冷静に試合を振り返っていた。昔だったら大騒ぎでしょ。だから、そこが日本の成長であり、一番の収穫じゃないかな。
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