写真/産経新聞社4月1日に高市首相はマクロン仏大統領と会談し、7日にUAEのムハンマド大統領、8日にイランのペゼシュキアン大統領と電話会談。サナエ外交と並行して、トランプ大統領はイラン攻撃を2週間停止し、停戦協議を進めると表明したが、イランがホルムズ海峡の再封鎖に動くなど楽観視できない状況だ
ジャーナリストの岩田明子氏は、中東情勢が緊迫するなかで高市首相が独自の「サナエ外交」を展開している点を評価しつつも、その“コミュ力”が国内政治では十分に発揮されていないことに懸念を示す。そして、後半国会の参院審議は、高市首相にとっての「ホルムズ海峡と言えるかもしれない」と見る。(以下、岩田氏の寄稿)。
◆中東で動く「サナエ外交」だが、日本の存在感は低下したまま
ホルムズ海峡を安全に航行できる日は来るのか? イラン情勢が目まぐるしく変化している。4月7日にトランプ大統領が2週間のイラン攻撃停止を表明して停戦交渉が本格化したが……わずか一日でイランはホルムズ海峡の“再封鎖”に動いてしまった。米国と歩調を合わせるイスラエルが、停戦を歓迎しながら親イラン勢力のヒズボラ掃討を目的にレバノンで大規模な空爆を行ったことが原因だった。
イラン情勢を見るにつけ、日本の先行きにも不安が募る。’19年には安倍首相が米イランの緊張の高まりを受け、仲介役としてイランを訪問したが、今回、イランに交渉を促したのは事実上、中国だ。日本の対中東外交の先細りと国際的な存在感の低下は明らかだ。
高市首相は、3月の日米首脳会談を米国産原油の共同開発と第2弾の対米巨額投資という交渉カードで見事に乗り切るなど、独自のサナエ外交を展開している。4月にはUAE大統領と会談して原油の安定供給を要請し、イランのペゼシュキアン大統領とも初の電話会談を行ってホルムズ海峡の安全確保を求めた。だが、その“コミュ力”は、日本国内では影を潜めているようにも感じられる。
◆後半国会は高市政権の“国内のホルムズ海峡”に
私には高市政権が、第一次安倍政権と重なって見える。当時の安倍首相は青木幹雄参院会長から郵政造反組の復党を迫られ、参院自民との関係が悪化した。最終的に復党を認めると、「改革に逆行する」と支持率が急降下し、’07年参院選での自民大敗に繋がった。
一方、高市首相は’26年度予算の年度内成立にこだわりすぎて、参院自民との溝を深めてしまった。少数与党の参院では、予算委員長の職権で強行採決を繰り返した衆院と同じように審議を進めれば、他の法案審議も滞りかねない。それでも、高市首相は審議時間の短縮を求め続けたため、石井準一参院幹事長を中心に“不満を募らせるグループ”を形成する動きも見られる。
今後の国会には国論を二分する重要法案が控えている。政府のインテリジェンス機能強化に向けた国会情報会議設置法案を審議する参院内閣委は、多数派を占める野党の協力なしに可決するのは難しい状況だ。衆院定数削減や国旗損壊罪の創設法案などでも野党は対決姿勢を強めている。
第一次安倍政権と異なり、高市政権は高支持率を維持しいているが、党幹部は「支持率が低下すれば、すぐに造反が出る」と不安を漏らすのだ。後半国会の参院審議は、高市首相にとってのホルムズ海峡と言えるかもしれない……。
<文/岩田明子>
【岩田明子】
いわたあきこ●ジャーナリスト 1996年にNHKに入局し、’00年に報道局政治部へ。20年にわたって安倍晋三元首相を取材し、「安倍氏を最も知る記者」として知られることに。’23年にフリーに転身後、『安倍晋三実録』(文藝春秋)を上梓。現在は母親の介護にも奮闘中