インドのマハラシュトラ州アムラバティの自宅兼仕事場で漫画を描くヤシュさん=3月28日(KADOKAWA提供・時事) 【ニューデリー時事】インドの地方都市で育った兄弟が日本で漫画家デビューを果たした。世界的人気の故鳥山明さんに憧れ独習を重ねる中、日本を飛び越えて才能の発掘を目指す出版大手に見いだされた。
デビューしたのはジバンさん(22)とヤシュさん(18)による創作ユニット「masterlynx(マスターリンクス)」。今年5月、インド在住ながら「KADOKAWA」のポータルサイトで「カンフー・カンフル」の連載を始めた。
同作品は大泥棒ゴエモンと小僧バオの冒険を軸にしたアクション・コメディー。オンライン取材に応じた2人は「連載が決まった際は本当にうれしくて、夢がかなった」と声を弾ませた。
インド中央部に位置する人口100万人弱の都市アムラバティ出身。幼い頃放映されていた鳥山さん原作のテレビアニメ「ドラゴンボール」に夢中になり、本格的にのめり込んだ。キャラクターを模写し、描き方を学んだ。
それでも、「インドには漫画の技法を学ぶリソースが不十分だった」(ジバンさん)。ヤシュさんは「20世紀少年」で知られる浦沢直樹さんら他の漫画家のユーチューブチャンネルも見て技術を習得していった。
2人は欧米の顧客向けにイラストを描く仕事をしていた昨年、KADOKAWAによるせりふのない漫画の国際コンテスト開催を知った。かねて「面白い物語を作りたい」「お金にならなくてもどこかで発表したい」との思いがあり、応募したところ銀賞を受賞。月1回の連載をつかみ取った。
制作で苦労しているのは日本の「オノマトペ(擬音語や擬態語)」。2人による英語のテキストを同社編集者が日本語に翻訳・調整しながら作品作りを進めている。ジバンさんは「とにかく多くの作品を出す」と今後の目標を掲げた。
同社は2人について「日本漫画へのリスペクトを示しながら自身のスタイルを追求しようとする描き手としての貪欲さ」が魅力と指摘。インドや日本にとどまらず「世界中の人々から愛されるポテンシャルがある」と太鼓判を押す。
また近年、さまざまな企業の漫画市場参入が続いた結果、描き手の需要が高まり有望なクリエイター獲得が難しくなっていたという。そうした中同社は国外に注目し、昨年「海外マンガ編集部」を設立。海外作家の創作支援と新たな才能発掘に取り組んでいる。

インド人の漫画家兄弟の作品「カンフー・カンフル」(KADOKAWA提供・時事)

ジバンさんとヤシュさんの自宅兼仕事場の壁に貼られた日本漫画の模写など=3月28日、インド・マハラシュトラ州アムラバティ(KADOKAWA提供・時事)