来季のカップ昇格を控えパートタイム参戦を続けるコーリー・ハイム(23XI Racing/トヨタ・カムリXSE)が、値千金の今季2勝目を飾っている 伝統と格式を誇るインディアナポリス・モーター・スピードウェイ(IMS)で開催された、NASCARカップシリーズ第22戦『Brickyard 400(ブリックヤード400)』は、賞金100万ドル(約1億6400万円)を賭けた勝者総取り形式の“インシーズン・チャレンジ”最終決戦を含め、予想外の勝者と予想外の億万長者を生み出すことに。来季カップ昇格を控えパートタイム参戦を続けるコーリー・ハイム(23XI Racing/トヨタ・カムリXSE)が、陣営内のクリストファー・ベル(ジョー・ギブス・レーシング/トヨタ・カムリXSE)を振り切り、値千金の今季2勝目を飾っている。
シリーズが誇る伝統の1戦“クラウンジュエル”に数えられるビッグイベントを前に、練習走行からベルの20号車が最速を記録するなど、このIMSでもやはりカムリXSEが高速戦の週末を牽引していくかと思われたが、予選ではスパイア・モータースポーツがフロントロウを独占して、その流れと予想に待ったを掛けることに。僚友ダニエル・スアレスを引き連れたカーソン・ホセヴァー(スパイア・モータースポーツ/シボレー・カマロ)がカップ通算3回目のポールポジションを獲得し、スパイアは3台全車をトップ6に送り込んだ。
「分からないけど……このクルマに乗る首位のドライバーを追い抜ける人は居るのかな?」と、やはり冗談混じりで答えたホセヴァー。「だから(決勝では)なんとか先頭集団に留まって、レースをうまくコントロールしつつ楽しみたいね。あぁ、この雰囲気をしっかり味わい尽くすつもりさ。ここは僕のお気に入りのサーキットで、もちろん地元のミシガンも観客の雰囲気は最高だが、このインディという場所も大好きで、ここの観客も本当に素晴らしいからね」
もう1台のマイケル・マクドウェル(スパイア・モータースポーツ/シボレー・カマロ)を6番手に挟み、タイラー・レディック(23XI Racing/トヨタ・カムリXSE)、タイ・ギブス(ジョー・ギブス・レーシング/トヨタ・カムリXSE)、そして選手権首位デニー・ハムリン(ジョー・ギブス・レーシング/トヨタ・カムリXSE)のカムリ艦隊が背後に並んだ決勝では、序盤からディフェンディングチャンピオンのカイル・ラーソン(ヘンドリック・モータースポーツ/シボレー・カマロ)にまたしても不運が襲う。
今季、度重なる悪夢に泣かされ続けている王者は、この日も10番手グリッドから28周目という早い段階でのピットストップで、首位を狙える位置まで順位を上げたものの、その17周後に左リヤタイヤがバースト。バックストレッチの終盤でタイヤの空気が抜けると、急激に姿勢を乱した5号車カマロZL1はリヤからウォールに激突し、大きな損傷を負った。
「もちろん、ガッカリしている」とインフィールド・ケア・センター(救護所)を後にし、またもや戦略が崩れ去ってしまった日曜を振り返るラーソン。「好スタートと戦略のおかげで10番手からトップに浮上し、多くのポイントを獲得し、かつレースの残りを通じてそのポジションを維持できる絶好の状況を築けていた。本当に残念だが、これもレースの一部だ……予兆はまったくなかった。アクセルを戻した瞬間、車体が沈み込むのを感じてスピンしてしまったんだ……」
これでラーソンは、シカゴランドとアトランタのエコーパークで2戦連続34位に終わり、直近のノースウィルクスボロでの15位を挟み、ここIMSではリタイアを喫し最下位(39位)に沈んだ。そして同じく僚友チェイス・エリオット(ヘンドリック・モータースポーツ/シボレー・カマロ)も、リッキー・ステンハウスJr.(ハイエク・モータースポーツ/シボレー・カマロ)と接近戦を繰り広げていた60周目にターン2アウト側でウォールの餌食となる。
そのラーソンが起因となった最初のコーション(イエロー)で、ちょうどピットロードにいたのがハイムで、このイエローフラッグ期間で集団のペースが落ちる間に順位を上げ、残り1周のスプリントを経てギブスに次ぐ2位でステージ1を終える。さらに114周目にデブリ(コース上の破片)回収によるコーションが発動した際も、ロングラン戦略で燃料を多めに搭載していたハイムの67号車は給油時間が短く済み、迅速な作業から首位でコースに復帰。120周目のリスタートでハムリンに首位を奪われたものの、再度の仕切り直しでふたたびポジションを奪い返した。
この首位奪還の契機となったのが、アトランタの勝者ライアン・ブレイニー(チーム・ペンスキー/フォード・マスタング)で、ポジションを争っていた120周目にジョン・ハンター・ネメチェク(レガシィ・モーター・クラブ/トヨタ・カムリXSE)と交錯した12号車マスタングは、接触したノーズに巻き込まれるように9台を飲み込むマルチクラッシュを引き起こした。
この結果“インシーズン・チャレンジ”の最終候補者として対決した第25シードのトッド・ギリランド(フロント・ロウ・モータースポーツ/フォード・マスタング)が、最終的に24位でブレイニーのリザルト26位を上回り、賞金100万ドルを総取りした。
「最高の気分だ」と、都合5週間を勝ち抜いてチャレンジを制したギリランド。「もちろん、今日は24位よりもう少し良い成績を残したかったけれど、やるべきことはやった。実際、このチャレンジを通してずっと、それが僕たちの目標だった。ギリギリで勝ち抜いたんだし、大きな賞だ。チームに100万ドルが入るなんて、本当にすごいことだよ!」
前述のとおり、この127周目のリスタートでインサイドのボトムレーンを選択した首位ハムリンに対し、ハイムはアウトサイドレーンを選択。ハムリンの背後にはJGR配下のベルとチェイス・ブリスコ(ジョー・ギブス・レーシング/トヨタ・カムリXSE)が並んだが、こちらの3台は上手く連携が取れず。一方、前戦勝者ジョーイ・ロガーノ(チーム・ペンスキー/フォード・マスタング)からの“プッシュ”を得たハイムが首位に立ち、以降は追い縋る20号車カムリXSEを乱気流の中に留めることで、先輩ベルを今季6度目の2位に抑えた。
「正直言って、優勝できるとは思っていなかった。彼がコントロールを失っていると(ハイムは最終ホワイトフラッグのターン1進入時に一度だけ大きくスライド)聞いていたが、あれが唯一のチャンスだと分かっていた」と24歳の勝者を称えたベル。
「彼がミスをするのを待つしかないと思っていたし(残り)35周というのは、とにかく長い。彼が一度でもミスをすれば、チャンスが巡ってくると思っていたが、彼は素晴らしい走りを見せ、精神的な強さも抜群だった。彼は35周とも素晴らしい走りをし、僕にはチャンスがなかったよ」
そんなベルに0.287秒差で先着し、最終34周のグリーンフラッグ走行に費やした労力に困憊の様子を見せたハイムは、この6月に初開催されたコロナド海軍基地での初優勝を経て、今季カップ8戦目にして2勝目、そして誰もが夢見る“クラウンジュエル”制覇を成し遂げた。
「ああ、本当に大変だったよ。日陰ができてペースが上がってからは、必死でしがみついていた」と明かした勝者ハイム。「クルマがすごく不安定になってしまっていたし、この夜を通してクリーンエアをほとんど感じられなかったから、各ターン出口に集中してベルとロガーノをダーティエアの中に留めておくのに、人生で一番苦労したよ」
「息切れがヒドいし、本当にハードなレースだった。でも夢が叶った気分だ。ブリックヤードで優勝するなんて信じられない。ピットストップのタイミングが早かったおかげで、あとはすべてのラップを自分のペースで走り切ることができた。ミスは一切なかったね!」
そのIMSで土曜夜に併催されたNASCARオライリー・オートパーツ・シリーズ第22戦『Pennzoil 250 presented by Take 5 Oil Change(ペンゾイル250プレゼンテッド・バイ・テイク5・オイル・チェンジ)』は、期待のホープであるカーソン・クヴァピル(JRモータースポーツ/シボレー・カマロ)が初優勝を飾るのに絶好のタイミングを掴み、チーム共同オーナーのデイル・アーンハートJr.もしばらく言葉を失うほどの感動的なフィナーレに。
記録尽くしの1日となったJRモータースポーツは、2024年王者ジャスティン・オルゲイヤー以下、ロス・チャスティン、チェイス・エリオットがそれぞれ2位から4位を占め、出場ドライバー4名全員によるトップ4独占を達成。これがJRMにとって今季14勝目となり、同チームが昨年樹立した記録に並ぶ6人目のウイナーが誕生するとともに、これで79戦連続して少なくとも1名のドライバーをトップ10に送り込み、RFKレーシングが2008年から2010年にかけて樹立した記録に並んでいる。
一方、今週はIMSの近郊インディアナポリス・レースウェイ・パーク(IRP)で開催されたNASCARクラフツマン・トラックシリーズ第16戦『TSport 200 presented by Warn Industries(ティースポーツ200プレゼンテッド・バイ・ウォーン・インダストリーズ)』は、完璧な走りで全200周のうち198周をリードし、両ステージを制覇したレイン・リッグス(フロント・ロウ・モータースポーツ/フォードF-150)が今季5勝目、キャリア通算10勝目を達成。「まるでクルーズコントロールを使っているかのように走れた……」という男が、レギュラーシーズン・チャンピオンの座を射止めるまであと一歩のところに迫っている。
[オートスポーツweb 2026年07月28日]