『アンチヒーロー』最終回は「法廷シーンが38分38秒」 飯田和孝Pが明かす

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2024年06月15日 10:00  ORICON NEWS

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日曜劇場『アンチヒーロー』の場面カット(C)TBS
 俳優の長谷川博己が主演を務める、TBS系日曜劇場『アンチヒーロー』(毎週日曜 後9:00)の最終回が、16日に放送される。12年前に起こった糸井一家殺人事件の犯人として当時・検察官だった明墨から自白を強要された志水裕策(緒形直人)の冤罪にいち早く気がついた同僚の桃瀬礼子(吹石一恵)の遺志を継ぎ、冤罪を証明すべく奔走していた明墨ら。しかし、唯一の証拠である動画は検事正の伊達原泰輔(野村萬斎)によって消され、さらには緋山啓太(岩田剛典)の事件について証拠隠滅罪に問われた明墨は逮捕されてしまう。

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 最終話目前にして全く結末を予想できなくなってしまったが、本作を手掛けた飯田和孝プロデューサーが最終話の見どころを赤裸々に語る。約4年間、構想を温めてきた『アンチヒーロー』に込めた思いとは。

――登場キャラクターたちの名前には“色”を表す漢字が入っていますが、何か意味は込められていたのでしょうか?
法律ドラマではよく“白か黒かをはっきりさせる”といった形容がされるので、そこに対して、一緒に名前で遊べると面白いのではないかと最初に考えたのがきっかけです。もともと、主人公の名前は明墨と決まっていて、企画をブラッシュアップする中で、明墨だけでなく徐々に「登場人物の名前には色を含めよう」という方向になりました。例えば、“檜山”という苗字だったのを“緋山”に変えたり、沢原麻希(珠城りょう)の名前には“麻”の色の字を入れたり、統一したコンセプトに変えていきました。

――それぞれの色に対するイメージは?
明墨の“墨”は黒と白と曖昧な感じを出していて、赤峰柊斗(北村匠海)の“赤”は熱量の高さを、紫ノ宮飛鳥(堀田真由)の“紫”はそこにちょっと冷静さを足しつつも内に熱いものを秘めている。この3人の色を掛け合わせると、ドラマのテーマカラー・至極色になるんです。そこは狙っていた部分でもありました。白木凛(大島優子)は企画書では「お嬢様だけどそこに反発しキャバクラで働くもやめて、そこから事務所に入ってくる」という設定だったんです。いろいろと含みがありそうで、実は一番真っすぐな思いを持った努力家だと考えています。青山憲治(林泰文)の青は、どんな“青”なのか私もまだ掴みきれていなくて(笑)。幅が広い色なので、どれを青とするかは人それぞれだと思うんです。例えば、TBSのコーポレートカラーを青という人もいれば、もう少し濃い色を青という人もいる。いろいろなものに溶け込める要素があると思います。

――終盤にかけて桃瀬の存在も鍵になっています。どんなイメージやメッセージを込めたのでしょうか?
このドラマの中で桃瀬は愛の象徴だったんじゃないかと。企画当初は“百瀬”にしていたのですが、ドラマは人間が動く以上、愛が動機になっていると思って“桃瀬”に変えたんです。改めて観てみると、もしかしたら彼女がこのドラマの軸になってるんじゃないかなと思いますね。第9話で桃瀬の思いと明墨が動いてきた理由の根源が見えましたが、そこに対して最終話は「それが明墨の本当の最終目的だったの?」と感じるはずなので、物語をどう締めくくるのかぜひ見届けてもらいたいです。

――主演の長谷川さんには改めてどんなことを感じますか?
昨年の3月にお会いしてオファーしてから1年3ヶ月ぐらい明墨という役と併走しているので、「本当にお疲れ様でした」と伝えたいです。『小さな巨人』の時、私は伊與田プロデューサーの下で動いていたのですが、改めてご一緒してみると、本当に唯一無二な俳優さんだなと。台本上のキャラクターを作っていく作業を監督も交えてやっていく中で、「明墨というキャラクターを良くしよう」というだけでなく、「ドラマ全体を面白いものにしよう」という熱意を持って周りを巻き込む力がある。そうやって作品に向き合う姿勢には敬意しかありません。

――最終回は明墨と伊達原の対決も見どころになるかと思います。
伊達原には、日曜劇場枠のいわゆる“勧善懲悪像で倒される敵”というより、人間味と悲哀のある感じを出してほしいと思っていました。役者として、狂言舞台や映画『七つの会議』での演技を拝見して、伊達原が持つどこか物悲しさのようなものを萬斎さんなら表現していただけるのではないかと思い、キャスティングしました。そこにプラスされるのが長谷川さんとの関係性。萬斎さんと長谷川さんは、映画『シン・ゴジラ』をはじめ、萬斎さんが企画・監修した舞台『AOI/KOMACHI』に長谷川さんが出演したりしていたのですが、実はそれを知らずにキャスティングしていたんです(笑)。“明墨正樹×伊達原泰輔”でもあり、“長谷川博己×野村萬斎”。それぞれの関係がうまくシンクロして最終話へと向かっていくことができたのは、想像していなかった部分です。2人とも数多く語り合うわけではないのですが、お互いに相手の思いを感じとって掛け合いを生み出していて、それはこれまでの関係性があってこそだなと感じます。

――SNSに寄せられる考察やドラマへの反応からはどんなことを感じていましたか?
しめしめと感じる部分ももちろんあるのですが、視聴者の反応から課題などが見つかることも多いので「あの演出だとこう感じるのか」「ここはもっと繊細にやらなければいけないんだな」と考えさせられることが多かったです。SNSに投稿してくださる方の中にはいろいろなドラマを観て目の肥えた方がいらっしゃるので、投稿から「そうか、そこが足りていなかったな」と、ドラマ制作の糧として捉えさせていただいています。

――今回、脚本は山本奈奈さん、李正美さん、宮本勇人さん、福田哲平さんの4人体制で良かったと感じることはありますか?
良かったのはアイデアが枯渇しないところ。チーム制が常にベストかというとそうではないと思いますが、こういったドラマを全10話で作ると、さまざまな事件の中でのどんでん返しやそのための仕掛けが必要だったので、みんなで議論しながらアイデアを出し合えたのはすごく良かったです。エピソードごとに4人の強みがうまく作用していました。例えば李さんは第9話冒頭の伊達原の演説シーンなど、長セリフのシーンが得意。一方で、山本さんは第2話のようなポップな展開が得意で、宮本さんは物語の中で仕掛けを構築していくこと、福田さんは構成を考えて作っていくのが圧倒的にうまい。4人のパート分けもバランス良くできたのかなと。でも、課題もたくさんあります。会話を通して自然に出てくる言葉に関してはもっと磨いていかなければいけませんし、個々のレベルを上げた分だけ今後の作品の質も良くなっていくと思っています。

――複数の事件が最終的に繋がっていくという部分では、難しさなどもあったのではないでしょうか?
1つひとつの事件が全部繋がってくると『それって、もっと前から気づいていたでしょ?』という視聴者からのツッコミも出てくると思うんです。例えば、第9話でボツリヌストキシンの検査結果の改ざんに辿り着くところは、それまで志水が映った動画を探すことに必死になっていた明墨が、桃瀬の日記と手紙、そして赤峰と紫ノ宮の成長があってこそ気づくことができたこと。桃瀬の母からもらった資料に目を通したけど改ざんの余地は疑わず、だけど12年経ってそこにようやく気がつくことができたという部分を表現する難しさを感じながら、最大限注意を払って作りました。

――全話を通して、北村さん演じる赤峰の成長と変化についてどのように捉えていますか?
正直、僕らが脚本を作っている段階では北村くんがここまで演じてくれると想像できていませんでした。実は、長谷川さん主演の『鈴木先生』の生徒役に北村くんがいたと、キャスティングした後に思い出したのですが、この作品では「北村匠海という俳優が赤峰柊斗をどう作っていくか」というプランニングが大きく影響しました。本当に見事で、僕らが想像して脚本に描いていたものの何十倍にもパワーアップした赤峰にしてくれたと実感しています。

――最終回の見どころを改めて教えてください。
『アンチヒーロー』は“父親が犯罪者に仕立て上げられたことで家族を奪われてしまった娘の思いを主人公が救う物語だ”と、企画書の表紙に書いています。このドラマの1つの目的でもあった、志水の冤罪を晴らせるのかは注目していただきたいです。個人的な話ですが、2020年に子どもが生まれて、そこから“親子”というものに対する感じ方も変わっていって。奇しくも父の日に放送される最終回は、志水と紗耶だけでなく倉田功(藤木直人)と紫ノ宮、伊達原と娘・結奈(十文字陽菜)と、“父と子の姿”も描かれているので、その部分にもぜひ注目していただけたら。あとは緋山がどうなるのか、ですね。最終話で第1話冒頭の明墨のセリフとリンクしているシーンは、僕がこのドラマで言いたかったことでもあるんです。例えば会社でハラスメントしたという噂が立てばどこの部署に行ってもその噂がつきまとう。それって、生きていく上でいくら反省しても絶対に払拭できないことだと思います。「反省したら次の一歩を踏み出せるよ」というストーリーが多いと思うのですが、そうではなく世の中の悲しい現実から逃げずに緋山の人生を描きたかったので、お気に入りのシーンです。

――miletさんが手掛ける主題歌「hanataba」がかかるタイミングも気になりますね。
毎週どこで主題歌がかかるか注目してくださっているので、最終回でも「どこでかけるか」はすごく議論しました。もともとmiletさんには「ドラマでは描かれない、明墨から紗耶への思いを歌にしてほしい」とオーダーしていたのですが、明墨の伝えきれない思いや“小さな希望”という僕の言葉をヒントにしてくださってみたいで。最初の「大嫌い 嘘じゃない」という歌い出しがすごくハマったなと思いましたし、楽曲の中でも謝罪や贖罪の気持ち、明墨の思いが「ごめんね」という歌詞に乗っかっているんだなと感じています。miletさんの楽曲だけでなく、梶浦由記さんと寺田志保さんの劇伴など全部ひっくるめてこのドラマができているので、主題歌に求める意味合いもすごく大きかったです。最終話で「hanataba」が流れるシーンは、その後の展開なども含めて、納得のタイミングで流れるんじゃないかなと。

――最後に、視聴者へメッセージをお願いします。
とにかく最終話を観ていただきたいという思いが一番強いです! 法廷シーンが38分38秒と本当に長いのですが(笑)、法律ドラマである以上、やっぱり最後の勝負は法廷ですべきだと思っているので。充実感や達成感はまだないですが、作品が世に出る以上、最後は視聴者の皆さんが観て判断していただきたいです。

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