“年金支払いミス”で600万円返還請求 年金頼みの親子は生活苦に…「こんなずさんなことあっていいのか」【news23】

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2024年06月15日 14:48  TBS NEWS DIG

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大阪府内の女性(85)が年金の過払いがあったとして、600万円以上の返還を求められました。病気で体に麻痺が残る息子(56)との生活は年金だけが頼り。支払う側のミスによって苦境に陥った親子を取材しました。

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過払いに気付かず「600万円、返還せよ」生活苦境に…

大阪府寝屋川市に住む、佐々木さん(仮名)56歳。2023年、脳梗塞を発症し、その後、左半身が麻痺しました。歩くには、杖がかかせません。

いまは週に3回リハビリをしていますが、まだ働くことができていません。生活の頼りにしているのは今年で85歳になる母親の年金です。

母親が1か月に受け取っている年金は約16万円。生活に余裕があるとは言えません。

佐々木さん(仮名)
「僕自身が今、病気をして収入がない」
「母親の年金に頼らないといけないので、正直ちょっと苦しいですね」

そんな中、佐々木さんは最近“ある事実”を知ったといいます。

佐々木さん(仮名)
「年金を返還せいと言われていまして…金額がびっくりするんですけれど…」

母親宛てに送られてきた封書に書かれていたのは…

佐々木さんの母親宛ての封書
「過払金が発生したため、支給額の一部を返還に充てさせていただいている状況です」

年金を誤って多く支給していたとして、過払い分の返還を求められているというのです。その額なんと618万円を超えます。

佐々木さんの母親
「びっくりしたわ『600万ってどういうこと?』と思ったけどな」
「不安より怒りやな。こんなん間違われたいうのは」

佐々木さん(仮名)
「もう法外ですね。普通の人間でパッと思いつくような、口に出せる金額ではないので、びっくりしましたね」

20年あまり公立小学校で教師をしていた、佐々木さんの母親。
今回、過大に支給されていたのは公立学校共済組合からの年金でした。

佐々木さんは母親の年金額の誤りに気づかなかったといいます。

佐々木さん(仮名)
「人がどれだけもらってるかって。聞きにくいし。たとえ親子でもね」
「ちょっと怒りでしょ、こんなんもう本当に」

今はもらえるはずの年金から2か月ごとの支給日に3万円が引かれています。さらに物価の高騰が重くのしかかります。買い物では…

佐々木さん(仮名)
「割引のシールですね」
「お昼なんであんまり貼ってることが少ないんですけど、たまたま見つけたので…生活が厳しいのでね、少しでも節約になるかなと」

母親の預金通帳を見せてもらうと残高は167円。年金支給日の前にはほとんどお金は残りません。

働いていた年数や所得によって変動する年金。
自分で正しい支給額か、誤った支給額かに気づくことは容易ではありません。

母親
「私も分からへん。どんなふうに計算されたのか」
「もう振り込まれたら、そうかなって思う感じやんか」

「こんなずさんなことあっていいのか…」支払いミス認めるも返還請求

なぜこんなことになってしまったのか、佐々木さんが電話で公立学校共済組合に確認してみると…。

佐々木さん(仮名)「なんで間違えたかわかってないんですか?」
公立学校共済組合「きちんと処理していたら、多額の過払いは発生しなかった。完全にこちらの処理誤りで大変申し訳ございませんでした」

佐々木さんの母親は60歳から公立学校共済組合から共済年金・日本年金機構から厚生年金を受給。

その後、夫が亡くなり、日本年金機構から遺族年金も受け取る選択をします。

それに伴い、共済年金と厚生年金は半分となるはずでした。
ところが共済年金は公立学校共済組合から誤って、全額支給されていたというのです。

公立学校共済組合はこのミスに10年気づかず、過払いの額は600万円以上に膨れ上がりました。

公立学校共済組合
「完全にこちらの処理漏れで、お母様が何か間違えたということではございません」
「ただ申し訳ないですが、本来ならお支払いすることはできなかったので、こちらのほうは返済いただくほかない」

10年前から天引きされていたことに、最近気づいた佐々木さん。
残りは約450万円で、返済には30年ほどかかる計算です。

さらに…

佐々木さん(仮名)「母親ことし85歳なんですけど、まだだいぶ残ってますよね」
公立学校共済組合「そうですね」
佐々木さん(仮名)「最終的には僕らに回ってくるんですか?」
公立学校共済組合「もしも返済が終わらない場合は、負担額についてはご遺族の方にお願いする形になります」
佐々木さん(仮名)「わかりました。ありがとうございます。失礼します」

佐々木さん(仮名)
「なんにもしてないのに僕400万円も借金あるんですか…きついな。受け取る金額に関しては、貯金もないですから」
「向こう(公立学校共済組合)におまかせとなっているのに、そこでミスがあって後になってから返せってしんどいですね…こんなずさんなことってあっていいのかな」

取材に対し、公立学校共済組合は佐々木さんの母親の年金について
ミスを認めたうえで、法律で決まっているため返還を求めるとしています。

佐々木さんは働くことができない中、「八方ふさがり」だと嘆きます。

佐々木さん(仮名)
「まさか年金絡みでお金を取られ続けるなんて考えてもいなかったので、真面目に納め続けていたらそれなりにあるのかなと思っていた」
「どうしていいのか理解できない。途方に暮れますね」

年金支給ミス 2023年度の過払いは178件 免除はされない?

上村彩子キャスター:過払い金を返還しなければいけないというのは分かるんですが、何も佐々木さんのお母様は手続きのミスもしていないですし。600万円というとても高い金額を返さないといけないわけですよね?

取材したMBS報道情報局 有馬 加奈子 記者:
これは私も「本当に返さないといけないのか」と思ったんですけれど、詳しい弁護士に聞いてみますと、今回の場合は「不当利得」といいまして、不当に得た利益に当たるので返還義務があるということです。

喜入友浩キャスター:義務がある…600万重いですね…。こうしたミスは今回のケースに限った話ではないようです。日本年金機構によりますと

▼年金の事務処理誤り
 事務処理のミス:1175件
 過払い件数:178件
 過払い合計金額:7777万2359円

喜入キャスター:単純計算すると、1件当たり平均で月額3万6000円の過払い。10万円とか100万円ではないので、気付きにくいですね。

上村キャスター:調べようもないわけですよね?
有馬記者:なかなか自分では気づきにくい。

喜入キャスター:なぜこうしたミスが相次ぐのか、年金機構の広報担当者はこう話しています。

日本年金機構 広報担当者
「人間がやることになるので、確認不足や事実関係の誤認で、誤りが起きてしまっている」

喜入キャスター:今回のケースはどんな原因があるんでしょうか?

有馬記者:今回の場合は公立学校共済組合によるもので、当時は紙で処理をしていたので、ミスが起きてしまったということでした。今はデジタルデータで処理されているようです。

上村キャスター:そもそもなぜこのミスに10年も気づかなかったのでしょうか?

有馬記者:今回の場合は日本年金機構による指摘で気づいたそうです。年金の支給額がそもそも「誤っていない」「間違っていない」前提だったので、10年間気づかれなかったのではないか。支給する側が10年間気付かなかったものを、受給者側が気づくというのは「不可能に近いのでは」と個人的には感じました。

上村キャスター:佐々木さんはお母様が亡くなったら、代わりに返済しないといけない。なかなか働けない状況で厳しいとは思うのですが、免除や減額というのはされない?

有馬記者:方法としては「相続放棄」があります。相続放棄をすると、負債も受け継がれることがないので、支払うこともなくなる。しかし当然、住宅・財産も受け継ぐことができなくなります。年金は生活に直結するものになります。「過大に支給したから返還してほしい」というだけではなく、受給者側に寄り添った対応が求められるのかなと感じます。

このニュースに関するつぶやき

  • これって悪質金融業者の「押し貸し」みたいなもんだ。年金屋は、自分のミスは自分でケツを拭け。
    • イイネ!145
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