俳優、アーティストとして多彩な才能を発揮する北村匠海の映画監督デビューが決まった。初めて短編映画の脚本・監督を務めた『世界征服やめた』が、来年(2025年)2月より東京・ヒューマントラストシネマ渋谷ほか全国で順次公開される。
【動画】「世界征服やめた」不可思議/wonderboy
本作は、いまは亡き孤高のポエトリーラッパー、不可思議/wonderboyの代表曲の一つである「世界征服やめた」に強く影響を受けた北村が、自ら企画し、脚本を書き下ろし、監督を務めて完成させた短編映画。
不可思議/wonderboyは、2009年に彗星のごとく姿を現し、独特な言葉のセンスとパフォーマンスで脚光を浴びた。11年には日本を代表する詩人・谷川俊太郎と共演し、本人許諾で「生きる」を音源化。透き通った声で歌われた同曲は、3.11直後、YouTubeにアップされ大きな反響を呼んだ。同年5月に1stアルバムを発表した矢先の6月23日、不慮の事故でこの世を去った。まだ24歳の若さ、夢半ばだった…。
北村は「学生時代の僕は、正直絶望していた。自分にとって未来が光あるものに思えなかった。そんな中、出会ったのが、ポエトリーリーディングという音楽ジャンル。中でも不可思議/wonderboyさんでした。そして『世界征服やめた』は、僕の人生を変えた曲です」と、打ち明ける。
しかし、その出会いは彼が亡くなった後。「悲しかったんです。あなたに救われた人は今もまだたくさんいますと伝えたかった。だから映画を作りたかったというのはお門違いなのかもしれませんが、『世界征服やめた』からもらった感情をいつか映画にしたかった。20歳の頃から言い続けた結果、自分が脚本・監督をやるまでに至りました」と、経緯を説明している。
「世界征服やめた」の普遍的なメッセージにインスパイアされてできた映画は、生きていくことの「意味」を求める若者たちの物語。
晴れて劇場公開が決まり、北村は「社会人として生きるということ、そこには生活があるということ、期待していた自由ではなく絶望すらもにじむ大人という概念の中で、生きて生きて生きて生きて生きるということ、生きているということは何なのか。笑うということなのか、ご飯がおいしいということなのか、友達がいるということなのか、暗闇ということなのか、小さな光をつかむということなのか。何度も書けなくなった脚本に、何度も何度もついてきてくれたスタッフさんや、キャストさん、エキストラの皆さん、全員に感謝です」と、思いの丈を込めたコメントを寄せている。
■ストーリー
変化の乏しい日常をやり過ごす中で、「自分なんて誰にも必要とされてないのではないか…」と感じる瞬間に、ふと「この世から、消えたい――」と思うことがないだろうか。主人公・彼方は、社会の中で生きる内向的な社会人。
そしてどこか飄々として、それでいて白黒をはっきりさせたがる彼方の同僚の星野。星野の選んだ決断に彼方の人生は大きく揺れ動く。「死」の意味を知る時、明日の選択は自分でできることを知る。世界征服という途方もない夢を追いかけるよりも、自分にしか描けない道がきっとある。
だって、明日は誰にだって平等にやってくるのだから。
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