首都圏などで相次ぐ強盗事件で、警察当局が押収したスマートフォンが計100台超に上ることが9日、捜査関係者への取材で分かった。これまでに実行役ら計50人以上が逮捕され、上位役のリクルーターも摘発されるなど捜査は徐々に進展しているが、指示役の特定には至っていない。匿名性の壁があるためで、警察当局はスマホ解析が全容解明の鍵を握るとみて全力を注いでいる。
東京、千葉、神奈川、埼玉の4都県では8月末以降、18件の強盗事件が相次ぎ発生。住居侵入や窃盗なども含めると、北海道や山口県など全国で関連が疑われる事件は少なくとも26件に上る。4都県警の合同捜査本部は匿名・流動型犯罪グループ(トクリュウ)が関与しているとみている。
一連の事件では、逮捕された実行役の多くが「金に困ってSNSで闇バイトに応募した」などと供述した。ただ、これまでのところ指示役に関する情報は少なく、グループの全体像も判然としない。
要因とされるのが、トクリュウの特徴である高い匿名性や結び付きの緩さだ。指示役側は主にX(旧ツイッター)で実行役らを募集。秘匿性の高い通信アプリ「シグナル」や「テレグラム」に誘導し、素性を明かさぬままスマホを介しやりとりを重ねる。実行役らは初対面の仲間と現場近くで合流し、事件後は別々に逃走するケースが多い。
警察当局は100台超のスマホを押収して調べているが、「シグナル」などはメッセージが時間の経過とともに自動消去される仕組みで、解析には一定の時間を要する。アカウントにはそれぞれ携帯電話の番号が紐付いているとみられるが、他人名義の「飛ばし携帯」などを使用している可能性が高く、指示役の特定につながるとは限らないという。
さらに、それぞれの事件には実行役以外にも、運転役や凶器調達役、被害品回収役などが関与。役割が分散されているため、指示系統が見えにくくなっている。
捜査幹部は「ルフィ」と名乗る指示役らによる広域強盗事件の捜査で得た経験を踏まえ、「複数の事件に関与している容疑者は比較的指示役に近いはずだ」と指摘する。優先順位をつけて重点的に調べるとともに、強奪された金の流れなど現実社会との接点も丹念にたどることで、「ネットの社会に逃げ込んでいる指示役を追う」と意気込んだ。