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「避難所の雑魚寝は阪神大震災の時と変わらない」「避難所の運営で石川県が助けてくれない」。2024年元日の能登半島地震の被災地では、そんな声を聞いた。大災害に見舞われた時、市町村の対応には限界があるのではないか――。そんな思いから、各都道府県に取材すると、災害時の避難所の運営に当たって、市町村や政府との窓口になる支援班の設置を定めているのは、14都道県にとどまっていた。
災害救助法では、この法律が適用される大規模な災害では、避難所の運営や、食料・物資の供給、医療などを含めた救助活動の主体は都道府県と定めている。
だが、その一部を市町村に委託できることになっていて、実際の運営は市町村が主体という例がほとんどだ。
能登半島地震で被災した市町のある職員は、石川県の職員とのこんなやり取りを明かす。
「県には避難所の運営など、さまざまな業務で支援を依頼したが、何度も『それは市町の仕事です』と言われた」
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政府で防災業務を担う内閣府の担当者は「市町村への業務依頼はあくまで委託で、『監督責任は都道府県にある』というのが法律の精神だ。『災害が起きて災害救助法が適用されたら、都道府県が主体になる』と災害の度に何度も説明している」と話す。
だが、毎日新聞が都道府県の防災担当者へ取材したところ、市町村や政府との窓口になる支援班を設けることを定めているのは14都道県だった。
そのうち、北海道と山形、千葉の両県は危機管理担当の職員だけでなく、福祉や医療の担当職員も支援班に加わり、避難所での幅広い要望の声に対応することにしている。
支援班に関する定めがない府県にその理由を尋ねると、多くの自治体の担当者は「避難所の運営は一義的に市町村の仕事だから」と答えた。
内閣府のある職員は「前面に出ずに後方支援をするという都道府県の姿勢が課題」と語る。
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防災行政に詳しい片田敏孝・東京大大学院情報学環特任教授は「防災上の大きな課題は、市町村が主体になっていること。避難所の運営などを全て自前でするのは、業務量的に無理がある。平時の備蓄や訓練も含め、都道府県が広域的に対応をすべきだ」と指摘する。【矢追健介、砂押健太】
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