今年、50周年を迎えたマイメロディは、1月18日が誕生日。マイメロディといえば、サンリオのキャラクターを代表するような優しいピンク色のイメージで、かわいらしい耳と“ずきん”が特徴の…ウサギ? 世間では「ウサギだ」「ウサギじゃない」と両方の意見があるようで…。担当デザイナーである(株)サンリオの小林久美子さんに、マイメロディの真相から、日本独特だというピンク人気まで、話を聞いた。
【画像】マイメロが闇落ち!? 地雷系ファッション風や黒いずきんも!■マイメロディは「ウサギ」? デビュー当時はピンク色のずきんではなく…
マイメロディはうさぎのような長い耳が特長的だが、サンリオのHPには「すなおで明るい、弟思いの女のコ」としか書いていない。「どう見てもウサギでしょ」「いや、実は違う!」なんて意見もあり…。真相を担当デザイナーの小林さんに聞いてみると、「マイメロディはウサギのキャラクターです。レッキスという種類のウサギがモデルとなっています」と笑顔で話してくれた。
そんなマイメロディといえば、一般的には優しいピンク色のずきんを被っているイメージ。でも、小林さん曰く、デビュー当時のずきんの色は赤だったそう。
「実は、1975年にデビューした当時はマイメロディではなく“LITTLE RED RIDINGHOOD”という名前でした。これはクリスマスプロモーションの一環で、童話“赤ずきんちゃん”のストーリーで赤いずきんをかぶったキャラクターだったのです」
では、ピンク色のずきんを被ったマイメロディはいつ、どんなタイミングで登場したのか。また、赤とピンクの違いは?
「過去の資料を見てみると、1979年にはピンクのずきんを被ったデザインのものが登場しています。そこから薄いピンクや濃いピンクのデザインなどが続きますが、1997年にイメージを刷新することになり、赤いずきんのマイメロディが再登場しました。この時はハイターゲット向け(高校生、大学生)で、現在のような甘くて可愛らしいイメージではなく、クールで媚びないデザインを目指しておりました。その後、ローターゲット向け(子ども)にピンクのずきんのデザインも再び登場するようになりました。そして今では、年齢によってずきんの色を分けることはなくなっております」
近年、推し活用のグッズシリーズ『エンジョイアイドルシリーズ』なども好調なサンリオ。その中では、ハローキティが赤、シナモロールが水色、ポムポムプリンが黄色と、各キャラクターが持つイメージカラーでの展開が多い。そんな中、マイメロディが担うのはかわいい薄めのピンクが多い印象だ。
小林さんによると、「以前、サンリオの公式Xで『マイメロディデザインの中で一番印象に残っているものは?』とアンケートをとったところ『赤ずきん』と答えた方が多かったのですが、実際に人気があるのはピンク色のずきんを被ったデザインなんです」と話してくれた。
とはいえ、この薄いピンク人気は意外にも日本独特の傾向だとか。
「実は薄いピンクやパステルカラーが人気なのは、日本特有なんです。アメリカではパキッとしたカラーの方が人気で、中国では縁起が良いとされている赤色のグッズがお好きな方が多いように思われます。パステルカラーって、海外だと赤ちゃん向けの雑貨などに使われていて、大人はあまり持っていない印象です。よくマイメロディファンの方がマイメロディに対して“バブみ”という言葉を使ってらっしゃるのを聞きますが、もしかしたら、マイメロディに対して赤ちゃんっぽさを求めている方も多いのかもしれませんね」
小林さんがピンク色に興味を持ったのは、マイメロディの担当デザイナーになってから。
「マイメロディのピンクに対してデザイナーとして感じているのは、マイメロディのファンの方は、とにかく“かわいい”を求めていること。その“かわいい”の中に優しさ、安心感、癒しを求めているのではないかなと思います」
■“地雷系ファッション”風、マイメロディ×クロミのシリーズが大人気
また、2000年代にはピンクや赤だけではなく、ギンガムチェックや星柄などさまざまな模様の“ずきん”にチャレンジしたというマイメロディ。
「この辺りから、世の中のトレンドを取り入れるようになりました。というのも、当時はバッグなど同じ型で多彩なカラー展開をすることが人気を集めた時代でした。同じ形だけど、いろんな柄があったらおもしろいかな、と思ったのです」と小林さん。
このような色々なデザインのずきんは今も続いていて、2014年にはお花でデコラティブに装飾されたずきんや、ハロウィンシーズンに合わせて真っ黒なずきんを被ったデザインも。2025年のアニバーサリーイヤーにも、さまざまなずきんをかぶったグッズが登場している。それにより、「ファンの皆様に常に新鮮な驚きを提供できたら良いなと思っております」とのことだ。
その中でも、特に近年話題となったのは「真夜中のメロクロ」デザインシリーズ。これはマイメロディとクロミが、まつ毛と目元にメイクを施し、普段よりもゴシックな雰囲気の装いに身を包んでいるデザインシリーズ。2020年代に流行った、いわゆる“地雷系ファッション”を彷彿とさせる闇感が特長。この時のデザインについて小林さんは、「新たな挑戦だった」と明かす。
「マイメロディのファンの皆さんは、非常におしゃれな方が多くて。ご自身のファッションの中に、自然にマイメロディを取り入れている方が多い印象です。そのイメージもあって、これまでにもトレンドを意識したデザインの商品をいろいろ出してきましたが、『真夜中のメロクロ』に関しては、かなり普段よりも“闇”のイメージが強く、メイクもダークな色を使用したので、『ここまで闇に振っちゃって大丈夫かな』という心配はありました。ただ、出来たものを見てみたらとても可愛くて、『これはいいね』と話したのを覚えています。実際、第3弾まで出るほど盛り上がりましたし、2025年の新春にも『真夜中のメロクロスペシャルシリーズ』が発売となるくらい愛されているので、良かったなと思います」
ちなみに、ファンと同様、マイメロディ自身もおしゃれを楽しんでいる。
「マイメロディには、立ち耳と垂れ耳のデザインがあるのですが、これは気分や感情を表す他に、おしゃれを楽しむためでもあるんですよ。皆さんが、その日の服装によってヘアスタイルを変えるように、マイメロディも耳の形でおしゃれを楽しんでいるのです。例えば、ちょっと元気なイメージの時は立ち耳に、レースやリボンをたくさん施したロリータファッションの服を着た時のような甘いイメージの時はタレ耳に といった具合に」。
そんなマイメロディが、50周年を迎えた2025年。この50年の中で大きく変わったことを聞くと、それはファン層だと小林さん。
「マイメロディのファンは、昔はほとんどお子さんが中心でした。しかし、1990年代にハローキティの人気に火がつき、高校生でも買うことができる大人っぽいデザインのピンクキルトデザインシリーズなどが登場。これがきっかけで、大人が好きなキャラクターものを持つことも珍しくはなくなっていきました。マイメロディも、今はお子さんから大人の方まで、幅広い層の方に愛されていると感じています」
昨年はハローキティが50周年、続く今年はマイメロディがアニバーサリーを迎えた。まさにサンリオを代表するキャラクターであるマイメロディ。最後に小林さんの思いを聞いた。
「日本では支持してくださる方がたくさんいてくださる一方、海外ではまだまだというところもあるので、もっと海外の方にマイメロディを知っていただける機会があればいいなと思っています。そして、ファンの方々には、ずっと応援してくださり本当にありがとうございますとお伝えしたいです。こんなに皆さんに愛されるなんて、メロディは幸せですね。これからも100年、200年、もっと長く皆さんのおそばにいられたらいいな、そんなことを願っております。これからもずっとメロディと仲良しでいてくださいね」
日本のアニメやキャラクターは、依然として海外でも人気。これだけ日本のカルチャーや嗜好が受け入れられている今、マイメロディの癒しの力、優しさのピンクが世界に広く受け入れられる日も近いだろう。
(C)2025 SANRIO CO., LTD. 著作:(株)サンリオ
(文:於ありさ)