【ベルリン時事】欧州の公共機関や大学でX(旧ツイッター)の利用を停止する動きが広がっている。偽情報への不十分な対応などが理由に挙がっているが、Xの運営会社を所有する米富豪イーロン・マスク氏が欧州の右派勢力に急接近していることへの反発が「X離れ」の最後の一押しになっている。
「Xはドイツや英国などの民主的な営みに干渉している疑いがある」。フランス・パリ市は16日、マスク氏の盟友であるトランプ次期米大統領が就任する20日にXの利用を取りやめると発表した。「言論の自由至上主義者」を自称するマスク氏がツイッターを買収した後、違法コンテンツや偽情報の拡散が助長されたと批判。今では英独の右派ポピュリスト政党を支援するために「(経営者としての)立場を利用している」と指摘した。
マスク氏は英国の右派政党「リフォームUK」へ巨額献金を行う可能性が取り沙汰されるほか、来月の独総選挙では極右政党「ドイツのための選択肢(AfD)」への投票を訴えている。トランプ氏の就任式には両党幹部が招かれており、米新政権への影響力をうかがわせた。
こうした中、ドイツでは国防省や東部ブランデンブルク州議会がXの利用を停止。デュッセルドルフ大学は「反民主的勢力に反対し、事実に基づくコミュニケーションを擁護する」と利用停止を呼び掛け、60以上の大学や学術機関が賛同した。
スペインの70以上の大学で構成する学長会議も17日、X離脱を表明。英国では有力紙ガーディアンが昨年11月に投稿を停止している。
競合メディアのブルースカイやマストドンなどへの切り替えを促す動きもあるが、Xに代わるほどの影響力はない。独政府のヘーベシュトライト報道官は「露出を高めることとのバランスは難しい」と苦悩をにじませた。