2024年F1第19戦アメリカGP(オースティン) F1の人気ドキュメンタリーシリーズ『Drive to Survive(邦題:栄光のグランプリ)』を制作している動画配信サービス大手Netflixが、アメリカでのF1の放映権をめぐる競争に参入する準備を進めていると報じられている。
現在、F1はESPNと契約している。両者の契約は2018年にスタートし、2025年には現契約の3年の期限が切れる。ESPNとF1の経営陣は昨年末、契約延長について協議を開始したが、合意には至っていない。
重要なのは、F1が他の放送局と交渉することを禁じていた独占条項が失効し、Netflixのようなライバルが参入する道が開かれたことだ。
■スポーツのライブコンテンツを増やし続けるNetflix
『The Times』の報道によると、NetflixはアメリカでのF1放映権を獲得する有力候補のひとつとして浮上しているという。
この潜在的な動きは、ライブスポーツのポートフォリオを着実に拡大しているNetflixにとっては当然のものだろう。Netflixはヒットシリーズの『Drive to Survive』のおかげで、すでにF1の世界と密接な関係を築いており、F1の生中継に進出するのは自然な流れのように思われる。
さらに興味深いのは、Netflixが最近、ESPNの元制作担当副社長ケイト・ジャクソンを新たにスポーツディレクターとして迎え入れたことだ。この人事は、同社がライブスポーツ分野で存在感を強め、本格的なプレーヤーとなる意欲を示している。
すでにNetflixは、NFLや女子サッカーワールドカップといった注目のスポーツイベントの放映権を獲得してきた。Netflixは、クリスマス期間中のNFLの2試合の放送権を確保した。また、2027年と2031年の女子サッカーワールドカップのアメリカでの放送権を獲得したほか、昨年11月にはマイク・タイソン対ジェイク・ポールのボクシング試合という史上最大のストリーミングスポーツイベントを配信した。
■動画配信サービス企業には不利な面も
たとえ権利料が、ESPNが現在支払っていると推定されるシーズン当たり9000万ドル(約136億円)を超えたとしても、Netflixにはそれを支払う資金力があることは確かだ。
しかし、Netflixやアマゾン、アップルなど他のストリーミング競合企業にとっての潜在的な障害は、F1が地域的な権利契約を優先していることだ。この戦略により、グローバルストリーミング企業は世界的な配信範囲を確保できなくなる。たとえば、Netflixがアメリカでの契約を締結しても、2029年まで有効なSky Sportsのイギリスにおける独占放送権に干渉することはない。
NetflixがアメリカでのF1放映権を実際に獲得することになるかどうかはまだ不明だが、彼らが放映権をめぐる競争に参加するなら、戦いは激化し、複雑化するだろう。