首相官邸=2023年1月11日、東京都千代田区 政府の個人情報保護委員会は、現在本人の同意が必要な人種や信条などの個人情報の取得について、人工知能(AI)開発など統計作成を用途とする場合は本人同意を不要とする検討に入った。要件を緩和することで、AI事業者が情報を利活用しやすくするのが狙いだ。
個人情報保護法は3年ごとの見直しを定めている。林芳正官房長官は21日の記者会見で、「新たな産業の創出・発展などを踏まえ、個人の権利利益の保護と個人情報の利活用のバランスを図りつつ検討が進められている」と語った。
同法は、人種、信条、社会的身分、病歴、犯罪歴などを取り扱いに配慮を要する「要配慮個人情報」と規定。取得するには本人の同意が原則必要だ。
AI開発では予測・分析などの精度を高めるため、膨大なデータを学習させている。学習データに要配慮個人情報が含まれる場合、事業者が本人同意を取り付けたり、情報を削除したりするなどの対応を求められる。実際、同委は2023年6月、生成AI「チャットGPT」を開発したオープンAIに対し、本人の同意なく要配慮個人情報を収集しないよう要請する注意喚起を行った。
ただ、事業者からは大量のデータの中から要配慮個人情報を探し出し、必要な措置を講じることは「現実的ではない」との声が上がっている。
こうした指摘を踏まえ、同委は本人同意が必要な情報を精査。AIの学習データなど分析結果の獲得と利用のみを目的とする場合、個人の権利や利益が侵害される恐れは少ないとして、同意は不要にできると判断した。
同委は、個人情報保護法の違反行為に課徴金を課すことも検討している。だが、自民党の一部や経済界には、企業が萎縮して自由な経済活動を阻害しかねないとの根強い反発がある。
政府は要配慮個人情報の要件緩和や課徴金制度などを盛り込んだ同法改正案について、早ければ今国会への提出を目指しているが、先行きは不透明だ。