北方領土交渉、見えぬ糸口=ウクライナ侵攻3年、墓参かなわず

88

2025年02月24日 20:01  時事通信社

  • チェックする
  • つぶやく
  • 日記を書く

時事通信社

北方領土返還要求全国大会にビデオメッセージを寄せた石破茂首相=7日、東京都港区
 ロシアのウクライナ侵攻から3年。北方領土問題を巡り、日本政府は中断した交渉再開の糸口を見いだせずにいる。石破茂首相は元島民の墓参再開を軸に働き掛けを強める方針だが、制裁解除を協議の「条件」と位置付けるロシアとの溝は深い。早期停戦を掲げるトランプ米大統領の動向も含め、視界不良の度合いを一段と増している。

 首相は「北方領土の日」の7日、返還要求全国大会に寄せたビデオメッセージで「北方四島の帰属の問題を解決し、平和条約を締結する」と訴えた。「北方四島の帰属問題」は、安倍政権が事実上の「2島返還」路線に転換して以降の2019年の大会から、首相発言で触れなくなった表現だ。首相は今回、より原則的な立場を鮮明にした。

 旧ソ連による占領から80年。千島歯舞諸島居住者連盟によると、元島民は昨年末時点で平均年齢が89歳を超え、終戦時の約1万7000人から5000人を割り込んでいる。

 メッセージで、首相は「特に北方墓参に重点を置く」と強調した。元島民が旅券や査証なしに現地を訪問して墓参りできる枠組みで、ロシアが侵攻直後の22年3月に中止を宣言。時間的制約もちらつく中、日本側は「人道問題」を前面に、ロシア側の理解を引き出したい考えだ。

 日ロ両政府は昨年、モスクワで外務省局長協議を2回開催。対話は辛うじて維持されているものの、ロシア側に軟化の気配はない。

 1月には日本の制裁を理由として、ロシア国内でビジネス支援や日本語講座を行う「日本センター」に関する日ロ覚書の適用を打ち切った。ノズドレフ駐日大使は7日付のロシア紙インタビューで「反ロ路線を放棄しない限り、本格的な2国間協力の再開はない」と突き放した。

 これに対し、日本政府関係者は「『力による現状変更への反対』は譲れない一線」と指摘。台湾併合を目指す中国をけん制する狙いもあり、制裁解除は「検討の対象外」と明言する。

 トランプ氏が重視する米ロ交渉について、日本側は「墓参も含め北方領土問題に影響を与え得る」(外務省関係者)として行方を注視。ウクライナの領土割譲に踏み込む結果になれば、ロシアが北方四島の占有に自信を深める可能性も否定できない。政府関係者は「トランプ氏がロシアにほほ笑まなければいいのだが」と懸念を口にした。 

北海道の知床半島(手前)と国後島(奥)=2022年4月
北海道の知床半島(手前)と国後島(奥)=2022年4月

このニュースに関するつぶやき

  • プーチン「ウクライナ戦争の顛末をみててなお、北方領土問題がしかも交渉で解決しうる余地があると微塵にも思いうるもんかねえ?」
    • イイネ!6
    • コメント 0件

つぶやき一覧へ(77件)

前日のランキングへ

ニュース設定