震災遺構、進む劣化=維持管理に自治体苦慮―東日本大震災14年

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2025年02月25日 07:31  時事通信社

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時事通信社

外壁の一部が剥がれ落ちた震災遺構の「大川小学校」=7日、宮城県石巻市
 東日本大震災の教訓を伝える震災遺構の劣化が進んでいる。震災からまもなく14年。津波の脅威を突き付ける「物言わぬ語り部」を後世に残すため、施設の維持管理が課題となっている。

 津波で児童と教職員計84人が犠牲となった宮城県石巻市の震災遺構「大川小学校」では昨年12月、校舎の外壁の一部が高さ約1.6メートル、幅約3.5メートルにわたって剥がれ落ちた。経年劣化が原因とみられ、市は被害の拡大を防ぐために補強工事を行った。

 市は建物を被災当時のまま残す「存置保存」を方針としているが、近年は雨漏りやコウモリのふんなどの被害が相次いでいた。遺族らの要望を受け、市は昨年度から対策に乗り出しており、担当者は「経費はかかるが市の責務だ」と説明する。

 小学3年だった長女を失った只野英昭さん(53)は「被災した建物だから劣化するのはやむを得ない」としながらも、「壊れてから直すのではなく、震災後の状態を維持するような措置を施してほしい」と求める。

 岩手県宮古市にある震災遺構「たろう観光ホテル」では、維持管理費用を主にふるさと納税による寄付金で確保している。海に近い立地のため、定期的にさび止めなどの補強工事が必要だが、現状は寄付金のみで賄えているという。ただ市観光課の担当者は「ある程度年数が進めば劣化する。そのときにどの程度の傷みがあり、どういった工事で対応することになるのかは見えない」と話した。

 民間の力を取り入れる自治体もある。福島県浪江町は昨年10月から、町内にある震災遺構「請戸小学校」に指定管理者制度を導入。2023年度の来館者数は開館以来最多の約6万4000人を記録したが、今後の動向は見通せないため民間委託を決断した。

 遺構は吹きさらしのため、天井や外壁などの劣化は激しいが、同町は風化に伴う時間の流れも伝えようと、できる限りそのままの姿を残している。担当者は「最低限の安全確保は必要。今後の管理運営も含め、民間のノウハウを活用したい」と話した。 

震災遺構の「たろう観光ホテル」=2024年3月10日、岩手県宮古市
震災遺構の「たろう観光ホテル」=2024年3月10日、岩手県宮古市


震災遺構の「浪江町立請戸小学校」=1月27日、福島県浪江町
震災遺構の「浪江町立請戸小学校」=1月27日、福島県浪江町

このニュースに関するつぶやき

  • 高額のコストをかけてまで、「震災遺構」を残す必然性はまるでなし。遺構のごく一部と映像等による状況データをしっかり残せば良い。 心情的な懐いは恨み節に過ぎず、正確な情報こそがすべて。
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