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熊本県松橋(まつばせ)町(現宇城市)で1985年に男性が刺殺された「松橋事件」で有罪となり服役後、再審無罪が確定した熊本市の故宮田浩喜さん(2020年に87歳で死去)の遺族が、違法な捜査で長期間の身柄拘束を受けたとして、国と県に計約8500万円の国家賠償を求めた訴訟の判決で、熊本地裁(品川英基裁判長)は14日、国に約2381万円の支払いを命じた。検察官に違法行為があったと認定した。一方、県への賠償請求は棄却した。
冤罪(えんざい)事件を巡る国賠訴訟で、起訴・公判を担当する検察(国)側の賠償責任が認められるのは異例。
宮田さんは85年1月に逮捕され、殺人罪などで起訴されたが、犯人性を示す証拠は「(凶器とされた)小刀にシャツ片を巻き付け、殺害後に燃やした」とする自白のみだった。1審途中から一転して無罪を訴えたが、90年に懲役13年が確定した。
しかし、弁護団が再審請求の準備中に閲覧許可が出た検察側の証拠物をチェックしたところ、「燃やした」はずのシャツ片が起訴後の県警の捜索で見つかっていたことが発覚。シャツ片に血液の付着はないとの鑑定結果も出ていたが、検察はいずれも証拠提出していなかった。宮田さんが99年に仮出所した後に弁護団は再審請求し、この新証拠が決め手となって2019年3月に再審無罪が確定した。
国賠訴訟では、こうした検察側の対応や、逮捕前から長時間に及んだ県警の任意の取り調べなどについて違法性の有無が争点だった。
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原告側は「燃やされたはずのシャツ片は、裁判の結果に影響を及ぼす可能性が明白な証拠」であり、検察側が違法に証拠隠しをしたと指摘。県警は、逮捕前の任意捜査の段階から宮田さんに長時間の取り調べを強いて自白を強要しており、限度を超えた違法捜査だと訴えた。
一方、国側は「検察官の判断に不合理な点はない」、県側も「違法な取り調べはしていない」などとして、いずれも請求棄却を求めていた。【野呂賢治、栗栖由喜】
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