
約30年にわたり米国にいる息子へ手紙を送り続ける京都市東山区の女性(93)が、日本郵便から「手書きのぬくもりの大切さを伝えてくれた」と感謝状を授与された。スマートフォンやSNS(交流サイト)で世界中連絡を取れる今日だが「書くのが大好きで、生きがいです」と筆を走らせ続けている。
手紙の主は石束陽子さん。大阪府八尾市出身で、結婚を機に同区へ引っ越した。長年、地元の児童館館長を務め「書くことが好き」と子どもたちに書道を教えてきた。
手紙を書き始めたのは30年前。料理人だった三男の高士さん(65)が米国へ旅行した際、マサチューセッツ州ボストンで日本料理店を営む知人に誘われ、そのまま移住したのだ。「驚き、寂しかった」と陽子さんは吐露する。
当時は国際電話をめったにかけられなかったため、手紙を送った。B5サイズの便箋2枚に自身が元気に過ごしていることや近況、祇園祭など季節の行事をとりとめもなくつづる。送り続けてその数は400通を超えた。
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2人が大ファンの阪神タイガースが優勝した2年前、陽子さんは高士さんの部屋にあった大きな旗やグッズを並べて写真を撮り、スポーツ紙の切り抜きと一緒に送った。「あの時の興奮を伝えたかった」と振り返る。
一方、高士さんから手紙の返信はめったになく、代わりに時折、電話がかかってくる。主に元気かどうかを尋ねられる。昨年7月に珍しく一通の手紙が届いた。中にはレストランのメニュー表と繁盛する店内、仁王立ちする高士さんの写真が入っていた。便箋は入っていなかったが、陽子さんは「新しいお店で働いているのを伝えたかったのでしょう」と顔をほころばせる。
手紙は1カ月と間を置かず送り続けている。ただ、昨年11月に背骨を圧迫骨折し、長期入院を強いられた時は筆が途絶えた。リハビリを経て自宅に戻り、3カ月越しに一通を送ると、直後に高士さんからかかってきた電話で「手紙、くれよ!」と叫ばれた。陽子さんは「求めてくれていたんだな」と、手紙で結ばれた親子の絆の太さが身にしみたという。
感謝状は2月25日に東山泉小中西学舎で贈呈された。「私が元気なうちは書き続けたい」。手紙が活力になっている。
(まいどなニュース/京都新聞)
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