記者会見する自民党の森山裕幹事長=22日、東京・永田町の同党本部 米国の高関税措置を巡る協議で、政府が米国産コメの輸入拡大案を検討していることに対し、与党内から賛否の声が上がっている。高騰が続くコメ価格の安定化につながるとの期待がある一方、参院選を見据え自民党支持層のコメ農家が離反することへの懸念も少なくない。食料安全保障の観点から慎重論もあり、石破茂首相は難しい判断を迫られる。
「さまざまな検討の可能性がある。ミニマムアクセス(最低輸入量)で一定量が(国内に)入っており、これをどう考えるかも一つの議論だ」。自民党の小野寺五典政調会長は22日、首相官邸で記者団にこう述べ、米国産コメの輸入拡大を前向きに検討すべきだとの考えを示した。
トランプ米大統領は、日本がコメ輸入で「700%の関税を課している」と述べるなど貿易赤字に不満を募らせている。政府は交渉での説得材料として「ミニマムアクセス」と呼ばれる無関税でのコメ輸入の拡大に着目。コメの販売価格が過去最高を更新し続ける中、首相官邸幹部は「国民は支持するのではないか」と見る。
一方で農業関係者は自民の有力支持層とされ、環太平洋連携協定(TPP)交渉でコメは「重要5品目」の一つに位置付けられるなど、過去の貿易交渉で配慮されてきた。
自民内ではミニマムアクセスでの輸入拡大であれば、飼料用としても活用され国産米への影響は少ないとの見方もあるが、夏の参院選で農業票の離反を招く事態は避けたいのも本音だ。農林水産行政に通じる自民の鈴木俊一総務会長は「コメは政治的にもセンシティブ(敏感)な問題だ」と指摘する。
自民農林族重鎮の森山裕幹事長は記者会見で、輸入拡大に慎重な考えを強調。公明党の西田実仁幹事長も会見で食料安全保障の重要性を挙げ、「そこに悪影響を及ぼすことはよろしくない」とくぎを刺した。
政府・与党は参院選対策をにらみ、5月からガソリン代の10円引き下げや、7月から9月まで電気・ガス代補助の再開を実施する。逆風が予想される中、コメの輸入拡大に踏み切った場合どう受け止められるかは未知数だ。政府内でも「コメの需要は一貫して下がっている」(政府高官)などと輸入拡大に慎重論もあり、意見集約は難航しそうだ。