政府は6日示した経済財政運営の基本方針「骨太の方針」の原案で、財政健全化の指標となる国と地方の基礎的財政収支(PB)の黒字化目標の達成時期を、従来の「2025年度」から「25年度から26年度」に後退させた。トランプ米政権の高関税政策や物価高に対応するため、政府・与党は今夏の参院選後に補正予算案の編成を視野に入れる。少数与党の石破政権下では野党からの歳出増圧力も強く、財政規律の緩みが懸念される。
PBは政策に必要な経費を国債を発行せずに税収などでどれだけ賄えているかを示す指標。内閣府は1月、25年度のPBが4兆5000億円程度の赤字になると試算していた。
これまで、財務省は法人税など税収の上振れもあり、「25年度の黒字化はあきらめていない」(幹部)としてきた。ただ、参院選を控え、与党内からは経済対策を求める声が強まっており、補正予算案の規模が膨らめば、25年度の黒字化達成は厳しい状況になる。
また、少数与党の石破政権では、野党の協力を得られなければ予算案は成立しない。野党は消費税減税やガソリン税の暫定税率廃止など家計の負担軽減策を訴えており、要求をのめば一段と財政が悪化しかねない。
バブル崩壊後、PBは赤字が続き、債務残高対GDP(国内総生産)比は200%超と、主要国で最悪の水準。日銀の金融政策の正常化で「金利のある世界」に移行し、国債の利払い費は今後増加が見込まれる。財政拡張に対する金融市場の目は厳しく、国債安定消化への懸念から、30年債など超長期国債の金利が上昇し、警告を発する。
骨太原案では「PBの一定の黒字幅を確保」し、債務残高対GDP比を「まずはコロナ禍前の水準に向けて安定的に引き下げる」とした。英国では、22年秋に財源の裏付けのない財政拡張的な政策を打ち出し、市場が混乱した「トラス・ショック」に見舞われた。債務膨張に歯止めをかけなければ、日本も「対岸の火事」ではなくなる。