ゴジラ・ウルトラマンなどの超高額胸像届かずスタチューメーカー「CoolProps」が破産 購入者・東宝・円谷を取材、「一生に一度の贅沢だった」「返金よりも商品を」と悲鳴

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2025年06月15日 20:51  ねとらぼ

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【画像で見る:破産申請を行ったCoolProps】

 特撮作品などのキャラクターの胸像制作などを行なっていたスタチューメーカー「CoolProps」が東京地方裁判所へ破産手続きの申請を行い、6月4日に破産手続開始決定を受けたことが分かりました。同社をめぐっては「ゴジラ」「ウルトラマン」「きかんしゃトーマス」「ロボコップ」などの高額スタチューが届かないトラブルが起こっており、SNSでも注目度の高い問題となっています。ねとらぼ編集部が購入者、破産管財人、東宝、円谷プロダクションを取材しました。


【画像で見る:トラブルになっていた会社代表】


高いクオリティーで人気だった「CoolProps」

 2012年に設立されたCoolPropsは、スタチューの制作・販売だけでなく、映画や演劇などで使用されるプロップ(小道具)の製作でも名の知られた会社。3Dモデリングや3D出力を用いて、映画「キングダム」シリーズ、「シン・仮面ライダー」、「仮面ライダーBLACK」、ドラマ「今際の国のアリス」、「日曜劇場 VIVANT」などにもスタチュー提供や制作協力を行っていました。


 過去には「AVP: エイリアン vs プレデター」などをモチーフにした作品や「ウルトラマン」シリーズの、ウルトラマンベリアル・ウルトラマンゼロ・バルタン星人の胸像を手がけたこともあり、その高いクオリティーから根強い人気を集めていました。


突然の破産開始決定

 事態が動いたのは2025年6月9日。スタチューなどを先払いで予約していた人たちに、東京地裁からCoolPropsの破産手続きが開始した旨の通知書が届いたのです。


 これを受けて購入者らはX(Twitter)などを中心に「これウルトラマン受け取れないってこと?」「ここ最近怪しかったけど、いい物を作っていただけに本当に残念」「お金は良いから物が欲しいです、まじで辛い」と複雑な心境を投稿。中には通知書が届いていない購入者が、購入者同士での情報共有や連携を呼びかける投稿も相次いでいます。


繰り返された商品到着時期変更と暗黙の了解

 今回の破産開始決定を受けて特に対応が注目されている商品は、東宝映像美術とCoolPropsが共同開発していた平成ゴジラの胸像「GODZILLA: ORIGINAL SUIT COLLECTION SUIT SIZE BUST PROP REPLICA "HEISEI" GODZILLA (平成ゴジラ)」38万5000円と、円谷プロダクション内にある造形スタジオ、「LIGHT SCULPTURE STUDIO(通称LSS)」の造形師や著名なソフビ原型師などが監修していたウルトラマンスーツCタイプの胸像「ULTRAMAN C-TYPE SUIT SIZE BUST PROP REPLICA」30万円。


 全世界限定100体と銘打たれたゴジラの胸像は、注目度とそのクオリティーの高さから高額ながらも購入希望者が続出し、2022年の予約時点では抽選販売状態になっていました。


 しかし、当初の予定では2023年2月配送予定となっていたゴジラの胸像についてCoolPropsは2023年2月27日、“COVID-19(新型コロナウィルス感染症)の影響により中国工場での製造に遅延が発生した”との理由から到着時期が2023年7月にずれ込んだと発表。これを皮切りに商品の到着遅延発表が何度も繰り返されました。


 度重なる到着遅延の発表と、問い合わせメールへのずさんな返信対応にXでは不満の声も上がっていましたが、CoolPropsは時折公式Xで製作進捗を報告。2023年9月にはゴジラの胸像の生産前サンプルが到着したことを画像付きで明かした上で、2023年内に予定している出荷に向けて生産が進んでいるとしていました。


 こうした大型スタチュー商品の到着遅延についてコレクターは、「暗黙の了解だった」だと話します。


購入者を取材:ウルトラマンの胸像の注文者

 ねとらぼ編集部が取材したのは、ウルトラマンの胸像を注文したULTRATAKU(@TAKUM78)さん。ウルトラマンファンであり、クリーチャーなどのコレクションも行っているイラストレーターです。


──CoolPropsを知ったきっかけを教えてください。


ULTRATAKU:元々CoolPropsは、エイリアン・プレデターの商品を昔から買わせてもらっている関係で知っているメーカーでした。私はウルトラマンが一番好きなので、予約開始日の2022年12月27日にツブラヤストアから予約をしました。


 ウルトラマンシリーズでいえばCoolPropsが以前発表したウルトラマンゼロの胸像も仲間と買わせてもらっていましたが、本当にクオリティーが高くて。今回のウルトラマンの胸像については、TBSのドラマ「VIVANT」に登場したりと、発売以前の実物展示にも力を入れたりしていたので、円谷プロダクションとしても肝入りの商品なのだろうという風に感じていましたから、商品の到着は心から楽しみにしていました。


──ウルトラマンの胸像は2022年12月27日〜2023年4月9日が予約受付期間で、当初の予定では2024年5月ごろ発送予定でした。そこから到着予定が2025年1月末ごろに延期され、再度2025年4月〜5月ごろに予定が延期された旨をツブラヤストア側が告知しています。こうした商品の到着遅延についてはどう感じていましたか。


ULTRATAKU:これはCoolPropsに限ったことではないのですが、大型のスタチューは到着延期、製造遅延が常というか、暗黙の了解なんです。特に海外メーカーの場合は数年遅れというのもざらで、「日本のメーカーはちゃんとしすぎだ」なんていう話もあるぐらいです。ですから今回の発送延期についてもすごく心配していたわけではなく「2、3年以内に届けばいいな」と当初は楽観視していました。


──状況が良くないのではないか? と気づいたきっかけは何だったのでしょうか。


ULTRATAKU:元々ツブラヤストアは購入者に対して細かく状況を報告してくれていて対応も丁寧な印象です。しかし、到着日とされていた2025年5月に入ってから「CoolPropsへ生産状況等の確認と度々試みているが、5月19日時点で具体的な出荷時期の連絡をもらえていない」という連絡がツブラヤストアから入り、このタイミングで「これは本格的におかしいな」と思い始めました。ただCoolProps側は「商品はできている」「物はある」と繰り返しアナウンスしていましたし、何かあるにしても商品を発送してから倒産するのではないかと思っていました。


──ULTRATAKUさんからは何かアクションを行いましたか。


ULTRATAKU:CoolProps側にメールで「ツブラヤストアからCoolPropsと連絡が取れていない旨の連絡がきたがどうなっているのか?」と問い合わせました。ただ、返事はありませんでした。


──破産を知ったきっかけを教えてください。


ULTRATAKU:ロボコップの胸像を予約していた方がXで情報発信していたのを見て知りました。そこから周りにも聞いて「本当に破産したんだ」と分かりました。ウルトラマンの胸像に関しては、ツブラヤストア経由で予約した人とCoolPropsへ直接予約した人がおり、直接予約の人には東京地裁から通知書が来ていたみたいなのですが、私はツブラヤストア経由だったので、通知書が来なかったのだと思います。


──破産を知った後の対応と今の率直な思いをお聞かせください。


ULTRATAKU:ツブラヤストアとのメールのやり取りを行い、「状況を確認している」「キャンセル及び返金について対応しようとしている」という内容の返信をいただきました。ただ私としては返金よりも、「なんとかして商品を届けてもらえないか」という気持ちが大きいです。元々「商品は作っていて倉庫にある」という話だったのでそれをなんとか送ってもらえないかと……。


 2023年に開催された「TSUBURAYA CONVENTION」ではウルトラセブンの胸像の製作が決定したと発表していたのにその後音沙汰がなかったり、購入者へのメール返信がおざなりだったりと、最近のCoolProps側の動きに対して「おかしいな」と思うところがあったのは事実です。ただ技術力は素晴らしい会社でしたし、何より、これだけの高額商品ですから注文した人たちは本当に商品の到着を楽しみにしていました。かなり厳しい状況なのは承知していますが、なんとか商品を届けて欲しいという気持ちで私はまだツブラヤストアへキャンセルの申し出をできていません。


購入者を取材:ゴジラの胸像の注文者

 続いて取材をしたのは、ゴジラの胸像を注文していたGV(@godzillavictim)さん。破産開始決定についてはXでの情報で知り、その日の夜に「破産手続開始通知書」が届いたといいます。


 ──破産を知った率直な心境をお知らせください。


GV:一生に一度の贅沢品、そのつもりで思い切って何とか購入した商品でした。「部屋で毎日ゴジラが見られる」そんな風にワクワクしていたのがこんな状況になり、正直、ゴジラや東宝という文字を見るだけで苦しくなります。東宝ゴジラ商品を購入して、こんな法的書類が送られ、 40万円が奪われるなんて、信じられない気持ちです……。


──CoolPropsは商品の発送遅延についてどのように説明していたのでしょうか。


GV:メールにて、梱包や国内輸送が遅れているだけだという通知が来ていました。個別への問い合わせにもそのように返信がありました。


──ゴジラの胸像についてはCoolPropsへの直接予約になっていると伺いました。購入の経緯はどのような物だったのでしょうか。


GV:東宝公式YouTubeで紹介されていたほか、ゴジラストアtokyoの店舗では実物の展示とともにQRコードから予約できる展示もあったので、安心して購入しました。


──東宝とは何らかのやり取りはできていますか。


GV:商品遅延のタイミングでゴジラストア宛にメールをし、CoolPropsの破産を知った後に東宝にフォームで連絡をし、商品を共同開発していた東宝映像美術にも連絡をしましたが、6月14日時点において明確な返答はありません。


 類似事例のウルトラマンの胸像に関してはツブラヤストアが返金対応するみたいだという情報を見ましたが、現状東宝は問い合わせの返信もアナウンスもしていない状況です。


 (今回の販売元はCoolPropsですが)ゴジラの胸像の発売に際しては、東宝・東宝映像美術・CoolPropsのロゴ入りで商品展開していましたし、東宝公式YouTubeやゴジラストアでの実物展示と商品予約ページの宣伝、ゴジラ公式Twitterでの商品宣伝ポストと東宝は積極的に動いていました。


 このまま放置されるのであれば、もう東宝・ゴジラのロゴが入った商品は絶対に信じられませんし、予約商品に関しては一律「返金・キャンセル」が可能としてもらえないと消費者側にリスクがありすぎると思っています。


 一方、同じ商品を購入した人の中でもゴジラの胸像を購入したロキ・ゴジ嫁(@ToYou1107)さんは、「(一連の問題は)Coolprops社の責任であり、東宝本社や東宝特撮美術に責任があるとは考えていない」との考えを示す一人です。


 取材の過程で、ロキ・ゴジ嫁(@ToYou1107)さんより破産手続き開始通知書の画像の提供をいただき、その内容を元に、ねとらぼ編集部は破産管財人に選任された桃尾・松尾・難波法律事務所の大江耕治弁護士を取材しました。


関係者を取材:CoolPropsの破産管財人

──CoolProps側は商品は製造しており、倉庫に保管しているという説明をしていたようなのですが、製品の保管状況などは確認されていますか。


大江弁護士:CoolPropsの代表者に聞き取りを行ったところ、同様の説明があった商品もありました。現在はどの商品がどういった状態か、製造委託先も含めて詳細を調査しています。


──ファンの中には、返金よりも製品の到着を求めている人も多いようです。そうした要望が叶う可能性はあるのでしょうか。


大江弁護士:商品の在庫があるかどうか、また、製造委託先に対して製造代金の支払いを行なっているかなど、詳細を調査中ではありますが、仮に商品が見つかったとしてもそうした在庫は破産法の手続きに従って換金したり処分したりすることになります。その過程で現金化できたものを法律に則って債権者に分配するという流れになるため、残念ですが購入者に製品を引き渡すことはできません。


 大江弁護士によると、今後は債権者説明会が予定されているため、CoolPropsに直接代金を支払う形で商品を予約していたなどの債権者には東京地裁より通知書が送付されているとのこと。今回のトラブルの矛先が債権者である東宝に向かっていることなどについては心苦しく思っていることを明かし、直接予約をしていたのに通知が来ていない場合は、大江弁護士宛に連絡をしてほしいとしています。


東宝・円谷プロダクションは「情報収集中」

 本件について東宝と円谷プロダクションに「いつからCoolPropsと連絡が取れなくなっているか。CoolPropsからは破産に関して説明があったか。今後の対応について」を問い合わせたところ、円谷プロダクションは取材に対してCoolPropsの破産手続が開始したことは把握しているとした上で、「弊社でも状況の確認を行なっているため、現状ではお答えすることがございません」と回答。


 東宝は「情報収集中のため、現時点では具体的な回答を差し上げることはできません」との回答を寄せました。


 一部の先払いや全額の先払いが一般的で、また、商品が遅延することも珍しいことではないという大型スタチュー商品ならではの慣例が招いたともいえる今回の問題。


 CoolPropsの内情を知る人たちからは、COVID-19の影響により、CoolPropsが委託先としていた中国の委託先工場が閉鎖したこと。主力商品だった「AVP: エイリアン vs プレデター」のプロップについて当初は20世紀フォックスからライセンスを得られていたものの、2019年にディズニーが20世紀フォックスを買収したことからライセンスが変更が発生し、予定していた商品が販売できなくなってしまったこと。代表者の変更が発生したことなどから「近年の資金繰りはかなり厳しかったのではないか」との声も上がっており、落胆の声は広がり続けています。


 また今回の破産申請を受けて、スタチューメーカーへの前払いを躊躇する人が増えているのも事実。SNSでは別メーカーの商品購入を検討していた人たちが本件の問題をきっかけに、商品の購入中止を検討したり、前払いに恐怖を感じたりしている様子も投稿されており、スタチュー業界全体に影響を及ぼしている様子です。


(Kikka)




このニュースに関するつぶやき

  • 超高額でも欲しいって思うような人達だから、なんとか商品が届けばいいんだけどね。 債権者だから資産を処分して配当が
    • イイネ!3
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