防災の組織体制、議論低調=災害、老朽化対策に注力―各党公約・防災「深掘り・日本の課題」【25参院選】

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2025年07月05日 07:31  時事通信社

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能登地震の地震と津波で被害を受けた石川県珠洲市宝立町の住宅街=2024年1月11日
 自然災害が頻発し、防災力の一層の強化が求められる。昨年の能登半島地震では、アクセスが限られ、高齢化や人口減に悩む地方・山間部の課題が浮き彫りとなった。防災分野は与野党に大きな方向性の違いはなく、主要政党は災害対応の強化やインフラ老朽化対策を公約に入れる。一方、石破政権肝煎りの「防災庁」への言及は少ない。野党の立場や考えも見えにくく議論は低調だ。

 ◇防災庁、26年度設置

 政府が3月に公表した南海トラフ巨大地震の新たな被害想定では、死者最大約29万8000人、災害関連死は最大約5万2000人と推計。南海トラフ地震は、30年以内の発生確率が80%程度と差し迫っており、首都直下地震と日本海溝・千島海溝地震への対策も急務となっている。

 政府は防災庁の2026年度中の設置を目指す。赤沢亮正担当相の下、有識者会議で組織体制などを議論。6月には国の事前防災や災害対応の「司令塔」としての役割を果たせるよう、専任の大臣を置き、各府省庁への「勧告権」を与えるなど方向性を決めた。十分な人員体制と必要な予算の確保を打ち出す。

 自民党は公約で設置準備を加速し、「災害に強い日本」を実現すると強調。公明党も同庁で専門人材を育成すると訴える。れいわ新選組は、より権限を強化した「防災省」の創設を主張する立場だ。一方で、立憲民主や国民民主などの野党は、同庁設置に向けた超党派の要望活動や関連議連の立ち上げに加わる一方、公約には同庁の在り方に関する突っ込んだ言及はない。

 防災庁に関する有識者会議のメンバーで国際医療福祉大学大学院の石井美恵子教授は「設置自体に賛否はなくても、具体化に向けた論戦は期待していた」と吐露。庁設置で何が変わるかが十分に浸透していない現状を指摘し、「国民に直接説明するチャンスなのに」と首をかしげる。

 ◇避難所改善、各党が言及

 しばらくの間体育館に雑魚寝状態を余儀なくされ、物資供給も遅れた能登地震の反省を踏まえ、ほとんどの党が避難所環境の改善に言及している。公明は避難所となる学校体育館へのエアコン設置、国民民主は公共施設への自家発電機の整備、共産党は女性の視点を生かした対策の推進を打ち出す。

 日本維新の会は東京一極集中を問題視し、災害時に中枢機能を代替できる「副首都」をつくると明記。参政党も非常時の対応能力確保のため、東京の主要な政府機関を移転するとしている。

 耐震化にもつながるインフラの老朽化対策は、主要政党すべてが強化を主張。自民や公明、国民民主は今年1月に埼玉県八潮市で発生した下水道管の破損が原因とみられる道路陥没事故を念頭に、上下水道の耐震化率向上や施策の充実を訴える。



 ◇施策の羅列より理念を=識者談話

 石井美恵子・国際医療福祉大学大学院教授(災害医療分野)の話 施策を並べただけの政党が多く、防災への姿勢、どういった理念を持って取り組むかがなく、一貫性が感じられない。「防災庁」について、各党の考えが見えてこないのも残念だ。基本的な考え方は示されたので、創設自体に賛否はなくても、どういう組織にすべきかの論戦は期待していた。

 物価高でその日の生活が苦しい国民がいる中で、1週間の備蓄をする余裕はない。国の責任で、国民の命と人権を守るために全力を尽くした上で、行動変容をお願いするのが筋だ。貧しいと防災に金をかけられない。経済対策も防災に通ずると考えてほしい。経済を立て直すことこそがリスクマネジメントだ。日常の脆弱(ぜいじゃく)な部分に影響が及ぶのが災害。地方部も医療や介護分野など少し余裕がある社会にしておかないと、大規模災害は乗り切れない。 

能登地震で崩れ落ちた石川県珠洲市宝立町の家屋=2024年1月12日
能登地震で崩れ落ちた石川県珠洲市宝立町の家屋=2024年1月12日

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  • 施策は並べられた,と言う事であれば、次のステップは何か?施策の具体的設計ではないか?そうすると、具体的設計を、国会が発注するように仕向ける事だ
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