匿名・流動型犯罪グループ対策で新設された警察庁の「情報分析室」の発足式で、楠芳伸長官(右)から辞令を受け取る宇野晃情報分析室長=1日午前、警察庁 SNSでつながり、特殊詐欺や強盗などの違法行為を繰り返す匿名・流動型犯罪グループ(トクリュウ)の対策強化に向け、警察庁と警視庁は1日、組織改編し専門の新組織を立ち上げた。
トクリュウが絡む犯罪被害が後を絶たない中、関連情報を横断的に集約、分析することで中心メンバーを見極め、捜査力を集中して摘発やグループ壊滅を目指す。
警察庁の楠芳伸長官は同庁に設けた「情報分析室」の発足式で「対策の成否は国の治安に大きな影響を与える。今が正念場だ」と強調。「グループの中核的人物をあぶり出して集中的戦略的に検挙し、違法なビジネスモデルを解体しないといけない」と訓示した。
情報分析室は、都道府県警や刑事部門、生活安全部門といった組織の壁を越えてトクリュウに関する情報を集約。多角的に分析することで、指示役や資金管理役などを洗い出し、取り締まりのターゲットを選定する。分析には人工知能(AI)を活用し、組織図などをチャート化する手法も検討している。
警視庁は捜査の司令塔として、「対策本部」を新設。副総監を本部長とし、約140人体制で適用法令の検討など戦略の立案を担う。全国の警察本部から人員を集めた専従捜査班「匿流ターゲット取り締まりチーム(略称・T3)」も設け、来春までに計200人に増強する。
また、組織改編により刑事部と組織犯罪対策部を統合。新刑事部に実動部隊として特殊詐欺やトクリュウ捜査に当たる450人体制の「特別捜査課」を設置した。
迫田裕治警視総監は対策本部の発足式で、「首謀者などを必ず検挙するという気概を胸に、各種対策を加速させていただきたい」と激励した。
警察当局は、警察庁長官の指示で管轄を越えて捜査できる「広域組織犯罪捜査」の手法をトクリュウ捜査に適用することも視野に入れる。海外の捜査当局との連携や情報共有も強化する方針。