AEDを模したおもちゃ「トイこころ」(坂野電機工業所提供) 突然心停止した人を救う自動体外式除細動器(AED)。電気ショックを与えることから「使うのが怖い」と思われがちな機器に興味を持ってもらおうと、北海道北見市の会社社長が実物を模した子ども向けのおもちゃを開発した。昨秋の発売後すぐに完売したが、来年3月ごろに再販する予定。社長は「親子で学ぶきっかけにしてほしい」と話す。
心臓を助けることから「トイこころ」と名付けたおもちゃは、実物と同様に本体部分と2枚の「電極パット」がコードでつながれている。イラストに従ってぬいぐるみなどの胸部にパットを付けると「電気ショックが必要だよ」と音声が流れ、ハート形のボタンを押すと本体が振動する仕組みだ。実際には電気は流れないが、心臓マッサージを繰り返すように促して、遊びながら救命方法を学べる。
開発したのは、産業電気機器の修理や点検を手掛ける坂野電機工業所の坂野恭介社長(37)。前職の臨床工学技士の経験を生かし、祖父が創業した同社で約5年前からAEDの販売を始めた。
納品時に行う救命講習で「使うのが怖い」と感じる人が多いことに気付いた。どうすればAEDを身近に感じてもらえるか思案し、「おもちゃで子どもの頃から遊べば、親しみを持ってもらえるのでは」と思い付いた。
2023年2月に3Dプリンター製の試作品をSNSで発信すると、「すてきなおもちゃですね」などと好意的な反響があったことから、商品化を決意。生産数の少なさから数十社に製造を断られたが、長野県内の会社が1000個の生産を引き受け、約2年で販売にこぎ着けた。
昨年11月に1個4000円余りで予約販売を始めると約1週間で完売した。その後も問い合わせや再販要望が相次いだことから、来年3月ごろに販売を再開する予定だ。
坂野社長は「心停止で倒れた人にいつ出会うかは分からない。おもちゃでAEDに興味を持ち、親子で一緒に救命講習に行ってもらえたら」と話している。

AEDを模したおもちゃ「トイこころ」で遊ぶ子どもたち(坂野電機工業所提供)

AEDを模したおもちゃ「トイこころ」を開発した坂野恭介社長(坂野電機工業所提供)