
人に危害を加えるクマ。13日も被害が相次ぎました。大きな課題となっているのは、捕獲を担う「ハンター」のなり手不足です。こうした状況を打開するため、東京都はハンター育成の強化に乗り出しました。
【写真で見る】クマに襲われた女性、背中には爪の痕が生々しく…
クマに襲われた瞬間…本人が語る「(Q.叫び声は?)聞こえました。『ぎゃ〜』という声だったかな」
13日午前、群馬県みなかみ町で76歳の男性とその妻が散歩中に、親子とみられるクマ2頭に襲われました。
警察によると、クマは夫婦にのしかかって、嚙みついたとみられるということです。
助けを求められた男性
「(男性は)中指と薬指の間のところがだいぶ切れて、手は血で真っ赤になっていた」
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男性も妻もケガは軽いということです。
7日には隣接する沼田市のスーパーにクマが侵入。人間の生活圏にクマが出没することはもはや珍しいことではなくなりつつあります。
クマに襲われた女性
「こんなにおっかないものだと思わなかった」
13日早朝、山形県飯豊町の自宅で、牛のエサの準備中にクマに襲われた83歳の女性。女性の腕には包帯がまかれ、背中には爪の痕が生々しく残っています。
クマに襲われた女性
「近所にも来てるけど、まさか家に来るとは思わなかった。一瞬だから分からなかった」
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女性を襲った後、その場から去ったというクマ。飯豊町はパトロールを強化するなどして、住民へ注意を呼びかけています。
クマに襲われた女性
「捕まえて山に置いてくるのは嫌だな。また来る恐れがあるから。殺してもらって」
危害を加えるクマの出没に備え、国も動きました。
クマが市街地に現れた時に一定の条件を満たせば、自治体の判断で猟銃が使用できるように法律を改正したのです。
ただ、課題もあります。ハンターの人材不足です。
全国の狩猟免許所持者は1975年度には約52万人いましたが、2020年度には22万人ほどに減少。中でも、60歳以上が6割近くを占めていて高齢化も深刻です。
かつて、北海道で牛を次々と襲った凶暴なヒグマ「OSO18」の捕獲作戦を指揮していた藤本さん。ハンターの高齢化を日々、実感しています。
南知床・ヒグマ情報センター 藤本靖 主任研究員
「今年の春も、うちの町の高齢のハンターと一緒に行動してたんですけど、耳が聞こえなくなってくるとか、ハンターの一番大切な部分が弱くなってしまう。藪の中でごそごそ動くクマは音でしか判断できない。『がさがさがさ』って。それが聞こえなくなると“クマ撃ち”できない」
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北海道では現在、ハンターの育成などを目的とした「春期管理捕獲」が行われていますが、ことし実施したのは47市町村のみ。道内に179ある市町村のうち3割ほどに留まりました。
南知床・ヒグマ情報センター 藤本靖 主任研究員
「春期捕獲の先生役になれるハンターが激減してる。やれるところがない。教えられる人がいないという裏の限界もある」
若手ハンターの育成が全国的に急務となる中、12日、東京では…
東京都猟友会・瀧嶋康廣 青梅地区長
「ひとりでも多く銃を所持して、若い力をぜひ協力していただいて」
東京都が主催する「初心者狩猟講習会」。集まったのは、大学生を含む20代から50代までの男女19人です。猟友会のハンターの動きを見学し、狩猟のノウハウを学びます。
複数のグループに分かれて山に入ると…
ハンター
「あ、来た、来た」
現場に緊張感が走ります。
猟友会のガイド
「あ、シカ、シカ、シカ!こっちこっちこっち!」
猟犬に追いかけられたシカが近くに出没しましたが、カメラも間に合わないほどの速さで駆け抜けていきました。
参加者
「すごく大きかった…」
今回は、猟友会のハンターが3頭のシカを捕獲。
参加者
「間近で体験できたのはすごく大きかった」
「思ったよりもちょっと難しかった」
東京都は、ハンターの数を増やすとともに、人とクマが遭遇しない環境をつくることが重要だとしています。
東京都環境局・上中章雄 課長
「クマが隠れる場所をなくす、草刈りとか、誘引物の除去、カキやクリの伐採などは効果があると思っている。そういったことをしっかりやることで、(クマが)人里に下りてこない環境づくりができると思っている」
「クマとの共存」に向け、対策は待ったなしです。