クマによる過去最悪の人身被害発生を受け、政府は14日、対策パッケージを取りまとめた。「ありがたい」「適任者が集められるのか」。被害が多発する地域からは期待と不安の声が出た。
今年度の被害が37人(13日時点)で、うち全国最多の5人が亡くなった岩手県。同県矢巾町に住む60代の農業男性は「期待はしたいが、実現できるか不安もある」とこぼす。
パッケージには、人の生活圏への出没防止に向けた防護柵整備などが盛り込まれた。男性は「農家にとってはありがたい。パッケージの内容は良いと思う」と評価する一方、「死者が既に多く出ている。もう少し早くしてほしかった」と不満も口にした。
死者が4人に上る秋田県。狩猟免許を持つ自治体職員「ガバメントハンター」ら専門人材の育成が盛り込まれたことに関し、県自然保護課の担当者は「対応できる人が増えるのは望ましいが、適任者が集められるのか」と不安もこぼした。
対策には、クマ捕獲に従事する職員の育成について、先進事例を共有することも入った。担当者は「他県の良い例も参考にしたい」と力を込めた。
「すぐには役に立たない」。北海道猟友会の堀江篤会長は「国が動いてくれるのは大歓迎」と語る一方で、自衛隊・警察OBへの協力要請を疑問視する。「頭数をそろえたらいいということではない。(駆除に向けた)訓練や連携体制をつくることが先だ。辞めた人ではなく、若い世代を雇い、教育するといった長期的な体制整備が必要」と訴えた。
市街地の出没が多い札幌市の秋元克広市長は「研修や育成に課題は残る」としつつ、「人材確保の広がりがある程度期待できるのでは」と話した。