限定公開( 2 )

ファミリーマートは11月、長距離ドライバーをターゲットにした「みなと香椎店」を、物流拠点や青果市場がある福岡市アイランドシティにオープンした。敷地面積は約2500平方メートルで、大型トラック専用の駐車場を7台分設置している。
店内にはイートインスペースが8席あり、女性運転手向けのパウダールームも設ける。「休憩所が少ない」というドライバーのニーズに応えた店舗である。ファミマは「ドライバーや物流関係者の皆さまにとって、日々の業務の疲れを癒し、ほっと一息つける『オアシス』」を目指したとアピールしている。
コンビニは弁当やおにぎりなど日配食品の納品が1日に数回ある。だが、人手不足に加えて働き方改革によってドライバーの労働時間が短縮されており、今後もこうした問題は深刻化していく可能性が高い。そこで抜本的な対策が求められている。
●1日70台のトラック→共同配送などで10台未満に
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コンビニの物流は工場から共配(共同配送)センターに配送するフェーズと、共配センターから各店舗に配送するフェーズに分けられる。かつては現在のような共同配送の仕組みがなく、商品ごとに卸業者のトラックが店舗に商品を配送していた。黎明期の1974年頃、セブン-イレブンの店舗には1日に70台ものトラックが配送していた。
その後、段階的に共同配送の仕組みを構築し、店舗への配送回数が減っていった。セブンの場合、1店舗に訪れるトラックの数は2015年以降、10台を下回っている。
弁当、おにぎりなどの日配食品はセンターから毎日配送している。多い場合は1日に3便以上、同じ店舗に配送がある。飲料や加工食品、雑貨などの常温で配送できる商品は1日1便・週5日の頻度で配送することが多い。アイスクリームや冷凍食品など、比較的販売数が少ない商品に関しては、1日1便・週2〜3日だけ配送するコンビニ業者もいる。
業界は効率化を進めてきたとはいえ、近年は「2024年問題」が大きくクローズアップされた。働き方改革関連法の施行により、ドライバーの時間外労働時間が年960時間に制限され、1カ月・1日当たりの拘束時間も定められた。人手不足も深刻で、物流問題は今後も続く長期の課題といえる。
●コンビニ御三家が進める配送改革とは
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近年、各社は店舗への配送回数の削減に取り組んでいる。
セブンは2023年以降、弁当やパンなどの配送回数を1日4回から3回に削減。弁当類を運ぶ便と、パンなどを運ぶ便を統合したほか、店舗側が1度に発注する量を変更して便数の削減に取り組んでいる。これにより、1日当たりのドライバーの拘束時間を11時間から10時間未満に減らす効果があるという。
ローソンも同様に日配食品の配送回数を1日3回から2回に削減した。深夜・午前・午後のうち、前者2つを集約。以前は配送時間を優先していたため、トラックに空きがあっても配送していたが、積載率を高めてから配送するようにした。
ファミマでは、従来配送ルートを人間が策定していたが、2022年から独自開発したAIを活用している。その結果、弁当やチルド類の配送ルートを1割削減できたとしている。
日配食品の配送回数が多いのは、店舗に保管するスペースがないうえ、消費期限が限られているためだ。配送回数を単に削減するだけでは、販売機会の損失や廃棄量の増加につながってしまう。
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そこで配送回数の削減に伴うコストアップを防ぐべく、各社は需要予測の向上にも努めている。近年チルド弁当を増やしているのも、消費期限を延ばす狙いがあるためだ。
●ファミマとローソンの共同配送も
実証実験にとどまっていた共同配送の実用化も進んでいる。
ローソンとファミマは2024年4月から宮城県や岩手県、秋田県などで共同配送を実施している。物流拠点間の配送において、ファミマは宮城県多賀城市から秋田市に、ローソンは盛岡市から秋田市に配送していた。これを共通化して、ドライバー不足に対応する狙いだ。
物流が安定する期間に週3回実施し、冷凍品が対象。10トントラック1台で、多賀城市のファミマ拠点、盛岡市のローソンの拠点で積載。その後、秋田市にあるローソンとファミマの拠点で商品を降ろす。配送1回で移動距離を120キロ、CO2排出量を56キロ削減できるという。
セブンを含む3社の取り組みもあるが、いずれも行政が絡んだ実証実験にとどまっている。共配センターから店舗への共同配送は非現実的であり、実用化は拠点間などの前段階に限られるだろう。ただし、各社はプライベートブランド商品の比率が増えている上に、その他の商品構成も異なるため、前段階でも普及する可能性は低いと考えられる。
●自動運転を見据えた実証実験も
セブンでは、三井物産流通グループやスタートアップと共同で自動運転の実証実験も発表した。2025年12月から2026年4月までに3回実施する。
埼玉県の拠点から兵庫県にある拠点への配送が対象だ。高速道路の一部が実験エリアで、性能は運転支援機能にやや毛が生えた程度の「レベル2」に過ぎないが、特定条件下で完全自動運転を行える「レベル4」の実装を見据えているという。セブンはプライベートブランド商品を積載し、参画するスタートアップのT2は走行データの収集・分析を行う。
自動運転の普及は、技術革新や行政の方針次第だが、コンビニ業界では将来的に拠点間の輸送で実用化が進むかもしれない。一方、各店舗への配送は荷下ろし要員が必要なため、自動運転化のメリットは小さい。
前述の通り配送回数の削減は、弁当の改良など他の部分のアップデートも必要だ。セブンの場合、県外からの配送ができない沖縄県では、おにぎりや弁当などの品目数を本州と比較して最大3割削減している。コンビニ業界にとって物流問題は今後も課題となり続けるだろう。物流効率の向上で補えない場合は、24時間営業の廃止や品目数の削減などの対策が求められるかもしれない。
●著者プロフィール:山口伸
経済・テクノロジー・不動産分野のライター。企業分析や都市開発の記事を執筆する。取得した資格は簿記、ファイナンシャルプランナー。趣味は経済関係の本や決算書を読むこと。
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