紅白よりワクワク!?『孤独のグルメ大晦日SP』意味深コメントで紐解く“年越しの顔”になった理由

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2025年12月31日 19:10  週刊女性PRIME

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松重豊

 2025年も年の瀬。毎年この時期になると取りざたされるのが、大晦日の視聴率競争だ。

紅白よりワクワク『孤独のグルメ大晦日スペシャル』

 長らく『NHK紅白歌合戦』が50%前後の視聴率を獲得して“お化け番組”と呼ばれていた時代から、『ガキ使』や格闘技番組がその牙城を崩していった時代を経て、現在はテレ朝が『ザワつく!大晦日』、TBSが『オールスター体育祭』で安定し、日テレとフジは試行錯誤が続いている。

 そんな中、ダークホースのように定着しているのが、今年で9年連続となるテレ東の『孤独のグルメ大晦日スペシャル』(テレビ東京)だ。しかも今年は、松重が公式コメントで、「紅白よりワクワクする瞬間があるやも、です」と語っている。

 それにしても、一見地味な“ひとり飯ドラマ”がなぜ大晦日の定番になったのだろうか?

 結論から言うと、『孤独のグルメ』が、日本人の大晦日の気分に非常にマッチしているからだと筆者は思うのだ。

 かつてヒット曲が、老若男女誰が聴いてもわかるものだった時代は、歌で1年を振り返る『紅白』が大晦日の気分にマッチしていた。しかし頑張って若者層を取り込もうとする昨今の『紅白』は、テレビのメイン視聴者である中高年には知らない歌ばかりで、段々気分に合わなくなっている。私も年を追うごとにテレ東の『年忘れにっぽんの歌』の方がしっくりくるようになってきているくらいだ。

 もう歌番組を見たくない層にとっては、各局のバラエティ番組はパイの奪い合いになる。しかし12月前半から続く大型バラエティ特番の連続にも食傷気味だ。そんな中、唯一ドラマが見られるのが『孤独のグルメ』だということも、強みのひとつだろう。2021年の大晦日SPでは世帯視聴率6.1%を記録し、ほかの年も4〜5%台と他局のバラエティと互角に渡り合っている。

 そして『孤独のグルメ』は、ファンならご承知のように、輸入雑貨商である井之頭五郎(松重豊)が、営業先で一仕事終えた満足感に浸りながら、偶然見つけた飲食店でひとり飯を堪能するドラマだ。

大晦日スペシャルの見どころ

 特に大晦日スペシャルは例年、五郎さんに難しい注文が降りかかり、それを解決するために北海道から沖縄は元より、果ては韓国まで出張するロードムービーの様相を呈する。それで年内ギリギリに顧客に商品を納入し、ホッと一息ついて、その年最後の食事にありつくのだ。

 この番組を観る視聴者も、年末は大忙しだっただろう。仕事はもちろん、家でも大掃除や年内の支払い、帰省、新年の準備など、綱渡りで用事をこなし、ギリギリに全て片付いた大晦日の夜に、ホッと安堵して年越しそばをすする。そんなささやかな幸せを共有できるのが五郎さんだ。

 五郎さんが独身者だということも、私のような同じ境遇の者には共感を誘う。昔の『紅白』は、一家が揃って視聴する「家族団らん」の象徴だった。だが世の中には、一人きりで年越しをする人も、想像以上に大勢いる。そんな人たちにも、五郎さんのひとり飯はシンクロする。

「この一年も大したことは出来なかったけど、そこそこ頑張ったし、どうにか今年も無事に越せそうだな。一人だって、美味しいものを食べて元気でいられれば充分幸せだ」という実感とともに。そんな大晦日の気分に寄り添ってくれるから、多くの人がチャンネルを合わせるのではないだろうか。

 さらに松重が公式コメントで語った「紅白よりワクワクする瞬間があるやも、です」という言葉の意味について。『孤独のグルメ大晦日スペシャル』では以前、一部生放送のパートが組み込まれていた。これは生の演技が放送で流れるということで、ドラマでは極めて珍しく、その生パートが今年は5年ぶりに復活するというのだ。

 私の記憶に残っているのは2018年の大晦日で、ゲストの伊東四朗も大晦日の生パートに出演した。画面にはスタッフも映り込んで現場の雰囲気が伝わり、時間ギリギリでうな重を食べ終えた松重と伊東のアドリブっぽいやり取りが緊張と笑いを誘ったのを覚えている。今、このふたりと同じ時間を共有している感じが楽しかった。

 2020年の生放送では打ち上げ花火を計画したものの、コロナの影響で最後まで成功するかわからないハラハラの中、無事に打ち上げられる感動の場面もあった。

 Tverで観ればいいやと思う人もいるかもしれないが、事後の配信版では、生放送の部分はカットや編集されることもあるので、絶対に本放送を見逃せないのもポイントだろう。

 2025年の大晦日は、おにぎりの米と具材の調達に奔走した五郎さんが、最後にゲストの新川優愛、森永悠希らが開催するカウントダウンイベントにおにぎりを提供できるか?というパートが生放送されるらしい。

 できたら我々も、コンビニのでいいからおにぎりを用意して、五郎さんと同じ時間を味わおうではないか。

古沢保。フリーライター、コラムニスト。'71年東京生まれ。「3年B組金八先生卒業アルバム」「オフィシャルガイドブック相棒」「ヤンキー母校に帰るノベライズ」「IQサプリシリーズ」など、テレビ関連書籍を多数手がけ、雑誌などにテレビコラムを執筆。テレビ番組制作にも携わる。好きな番組は地味にヒットする堅実派。街歩き関連の執筆も多く、著書に「風景印ミュージアム」など。歴史散歩の会も主宰している。

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    • イイネ!12
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