簗和生農林水産相の辞表を受理し、取材に応じる高市早苗首相=14日午後、首相官邸 高市早苗首相が9月の内閣改造で起用したばかりの簗和生農林水産相を事実上更迭した。「予算カット」発言をはじめ、簗氏を巡る問題が次々に浮上。野党から簗氏への問責決議案提出を突き付けられ、昨年10月の就任以来初めて不祥事による閣僚交代に追い込まれた。対応が後手に回ったことは否めず、政権への打撃は必至だ。
「大臣の職を辞したいとの申し出があった。申し出を受け入れることとした」。首相は14日夜、簗氏と首相官邸で面会した後、記者団に憔悴(しょうすい)した表情で語った。
簗氏が衆院選で自身を支援しなかった首長の自治体予算を「大幅にカットした」と発言した問題が明るみに出たのは9月末。しかし、首相は当初、簗氏を守る姿勢を見せ、「とにかく働いて仕事で返せ」「人一倍働いてほしい」と鼓舞した。
簗氏は自民党派閥裏金事件の関係議員。政治資金収支報告書への不記載額は1746万円に上り、自民内には時期尚早との声もあった。それでも入閣させた背景には「私の大事な簗ちゃん」と公言してきた首相のこだわりがあった。自民中堅は「慎重論を押し切っての人事。切れば支持率低下に直結すると首相は恐れたようだ」と解説する。
しかし、包囲網は急速に狭まった。文春オンラインは7日、簗氏の陣営が衆院選の際に支援者を無料で送迎していた公職選挙法違反疑惑を報道。さらに1週間後の14日には運動員買収の疑惑を報じ、自民内では「違法性があるならかばいきれない」(関係者)との空気が一気に広がった。
世論の反発を受け、様子見ムードだった野党も攻勢を強めた。野党10党派は14日、与党の過半数割れが続く参院に簗氏問責決議案を提出することで合意。自民の青木一彦参院幹事長は無所属議員の一人に「反対してくれないか」と電話で伝えたが、この議員は首を縦に振ろうとしなかった。
問責案が提出されれば、16日からの参院予算委員会のスタートが遅れるのは確実。政府がこだわる20日の消費税減税関連法案の審議入りもずれ込む公算が大きかった。可決されれば、影響は今国会を通して尾を引く可能性があった。
国民民主党の古川元久国対委員長は記者会見で「消費税減税法案の審議に入れる状況ではない」と言い切り、首相が最優先課題に位置付ける減税法案への影響は避けられない情勢となっていた。
与党内では判断の遅れへの不満が強い。自民中堅の一人は先週、木原稔官房長官に会い、「辞めさせた方が打撃は小さい」と伝達。だが、木原氏は「まだ様子を見たい」と応じなかった。「安倍政権時代の菅義偉官房長官なら最初の時点で切っていた」(日本維新の会幹部)との声が広がる。
改造内閣では関芳弘文部科学相が衆院の内規に反して衆院議員会館で政治資金パーティーを開いた問題なども明らかになっており、公明党関係者は「次の照準は関氏だ」と手ぐすね引く。野党は「首相の任命責任は避けられない」と勢いづいており、国会で追及を強める構えだ。

高市早苗首相と面会するため、首相官邸に入る簗和生農林水産相(中央)=14日午後、首相官邸