あらゆる対比が不思議なバランスで成立 高畑充希『メゾン・ド・ポリス』はユニークなドラマに?

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2019年01月12日 06:02  リアルサウンド

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 元警察関係者が暮らすシェアハウスを訪れた新人女性刑事が、一癖も二癖もあるおじさんたちにてんてこ舞いになりながら事件を解決する。一言で言ってしまえば実にハートウォーミングなコメディ展開を予感させるプロットだが、いきなり火だるまになる男性の姿から始まるという衝撃的な幕開けとなった1月11日スタートのTBS系列金曜ドラマ『メゾン・ド・ポリス』。


参考:高畑充希が語る、『メゾン・ド・ポリス』座長としての務め 「愛がある方ばかりですごく安心感」


 第1話では、ある男性が公園で焼死体として発見され、その手口が5年前に起きた連続殺人事件と酷似。その事件の捜査に当たっていた元捜査一課の刑事・夏目(西島秀俊)に会いにきた新人刑事の牧野ひより(高畑充希)は、そこで元警察関係者のおじさんたちに気に入られ、期せずして捜査を手伝ってもらうことになる。しかし、5年前の事件の犯人はすでに逮捕・起訴され死刑判決を受けて上告中にもかかわらず、今回起きた事件が同一犯のものと思われる共通点が見つかるのだ。


 一声で警察組織を動かす権力を持つ元警察庁のキャリア・伊達(近藤正臣)に元科捜研のエース・藤堂(野口五郎)、たたき上げの所轄刑事・迫田(角野卓造)、元警務課で現場に憧れを持つ高平(小日向文世)、そして元捜査一課のエリート・夏目と、よく共同生活ができるなと驚いてしまうほどに個性がバラバラの面々が集まる「メゾン・ド・ポリス」。しかし、彼らのバランスの悪さから生じる“ちょっと間の抜けた刑事ドラマ”感と、扱われる事件が持つバックグラウンドのヘビーさのバランスによって、このドラマが作り上げられていると言ってもいい。


 死刑囚の息子の無実を信じる無垢な母親かと思わせて、息子の犯した罪を知りながらもその罪を打ち消すために別の犯人を仕立て上げようと、息子の犯行を模倣する“モンスターペアレント”の極致。そういったテーマであったり、シェアハウスという土台となる設定が現代的なものであるのに対し、おじさんたちから醸し出されるのは、良い意味で前近代的な空気感。この第1話を見た限りでは、ありとあらゆる対比が不思議なバランスで成り立ち、かなりユニークなドラマになっていくような予感が漂う。


 そういった点では、本作のチーフ演出家であり第1話の演出を担当した佐藤祐市の技量が遺憾なく発揮される作品となるに違いない。とくに脚本は昨秋の『累-かさね-』に続くタッグとなる黒岩勉で、そこに西島秀俊が加わることで人気作『ストロベリーナイト』と同じ布陣ができあがる(だから居酒屋のシーンで『ストロベリーナイト』が登場したのだろう)。扱う事件こそ単発であるが、最近のこのタイプの作品の潮流通り「ひよりが刑事になった理由」と「夏目が刑事を辞めた理由」がドラマの根幹となることだろう。ここにもまた、対比構造ができあがっているわけだ。(久保田和馬)


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