『なつぞら』広瀬すず、草刈正雄ら“全ての開拓者”たちに乾杯! 第1回とリンクした見事な最終回

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2019年09月28日 12:11  リアルサウンド

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『なつぞら』写真提供=NHK

 『なつぞら』(NHK総合)が最終週「なつよ、あっぱれ十勝晴れ」にて、全156回の物語に幕を閉じた。『なつぞら』は、アニメーションの世界に人生をかけていく、なつ(広瀬すず)にスポットを当てながら、開拓者たちの魂を描いた作品だ。


参考:『なつぞら』がスター俳優揃いの朝ドラとなった理由 広瀬すずを中心としたキャスティングの裏側


 一人で十勝に移住し開墾を成し遂げた泰樹(草刈正雄)の魂は、すでになつの中で生きている。穏やかに自身の死期を悟る泰樹は、なつにそう告げ、亡くなった天陽(吉沢亮)の名前を挙げる。なつと天陽がどこにいたって繋がっていられるように、これからは泰樹ともそんな関係性になると。清々しい表情で伝える泰樹に、なつから飛び出すのは久々の「じいちゃん、大好き」。驚きからか、あまりの嬉しさになのか、泰樹はそのまま天陽の魂が染み込んだ畑に転がり込み、なつと笑い合う。きっと、天陽もその話を聞いて爽やかな笑みをこぼしていることだろう。


 『なつぞら』は、人との出会いと関わりのなかで、一人ひとりが人生を見いだしていく物語でもあった。なつはアニメ『大草原の少女ソラ』の完成を受けて、たくさんの出会いがなければこの作品はなかったと、マコプロダクションの製作陣に向け「全ての開拓者に乾杯!」と挨拶をした。最終回の第156回では、富士子(松嶋菜々子)が坂場(中川大志)に、照男(清原翔)が砂良(北乃きい)に改めて感謝を伝え、千遥(清原果耶)と千夏(粟野咲莉)が東京に帰るのを柴田家の人々が我が子のように惜しんでいた。そうした人から人への思いやりがあって、また人は成長し前へ進んでいけるのだと、改めて考えさせられた。


 もちろん、なつと坂場の関係性もそうだ。アニメーションや子育ての中で、困難と苦悩を乗り越えて、同じ方向を進んできた2人。「君と出会っていなければ僕の未来はつまらないにちがいない」「私もきっとあなたと出会っていなければこんなに面白くなかったと思うわ」。そう言って、2人は優(増田光桜)を連れて、また家族の夢を描いていくことを誓う。ありえないことも本当に実現してきた彼らなら、どんな未来も超えていける。


 また、最終回は、第1回とリンクする場面が多くあった。まず、『大草原の少女ソラ』の中でも風の丘として登場した十勝の丘は、なつと坂場と優が手を繋ぎ未来を見据える最後の場面でもあり、第1回のなつがスケッチをする始まりの場面でもあった。


 第1回が昭和30年8月、最終回が昭和50年8月とちょうど20年の歳月を経て、なつは家族を連れて風の丘に戻ってきたことになる。さらに、最終回ではエピローグとしてマコプロが今後携わるアニメーションが示唆されるシーンがある。それが、麻子(貫地谷しほり)が次の企画の資料として手に持つ『CUORE』と書かれた本と、坂場がなつに夢として話す奥原兄妹の経験した戦争を描いた映画。ナレーションによって、12年後になつたちがその戦争映画を完成させることが明かされるが、その直後に流れるアニメーションは、第1回でなつが戦争孤児であったことを説明するアニメーションとして流れていたものだ。


 『CUORE』は『母をたずねて三千里』、12年後に描かれる戦争映画は『火垂るの墓』。『なつぞら』は、朝ドラ100作目として、全編アニメーションのタイトルバックや過去の朝ドラヒロインが結集したりと、挑戦的な朝ドラという側面もあった。ちょうど折り返し地点での千遥の登場、「なつぞら最終回」がトレンドになったなつと坂場の結婚式が描かれた第114回と、製作陣の作品への強い思いやユーモア溢れる遊び心が随所に滲み出ていたが、その最たる演出が今回の第1回と最終回のリンクだったのではないだろうか。『なつぞら』製作陣に向けて、「全ての開拓者に乾杯!」と拍手を贈りたいくらいだ。


 言うまでもなく、「なつよ、『朝ドラ』よ、101作目に続けよ」と締めくくられたナレーションも粋な遊び心の一つ。そんな開拓者たちの魂は、朝ドラ101作目『スカーレット』にもきっと生きていくに違いない。(渡辺彰浩)


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  • あの原っぱでおんじが微笑みながら微睡むシーンを見て、一瞬ドキッとしたが、一安心。 おんじ主役で、スピンオフ希望!
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