テクノロジーはエンタメを救う鍵となるか? 新型コロナ危機で注目集まる「有料配信ライブ」の可能性

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2020年03月21日 15:51  リアルサウンド

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リアルサウンド

https://www.pexels.com/ja-jp/photo/1251743/より

 新型コロナウイルス感染拡大の影響を受け、エンタメの ”空白期間”が進行しつつある状況だ。国内では政府のイベント開催自粛により、音楽、演劇、コミケなど各種エンタメイベントの中止や延期の発表、またはその可能性を示唆することが相次ぎ、海外でも今春開催が予定されていたSXSW、Ultra Music Festival Miami、Coachellaといった大規模イベントの中止や延期の発表はここ日本でも注目を集めた。また現在、ヨーロッパでは都市や国境の閉鎖による感染拡大防止のための施策により、大規模イベントだけでなく、クラブやライブハウス規模のイベントも中止を余儀なくされている。


(参考:wacci、なぜLINEのサービスを積極活用? 「ベツカノ」ヒット後に感じた“手軽なチケット”の重要性


 イベントに出演する演者、プロモーター、会場関係者などは経済的なリスクにも直面している。そういった状況の中で、今月初め、人気ヒップホップグループのBAD HOPは、予定されていた横浜アリーナでのライブイベントを中止。それに伴う負債を背負うことになったものの、無観客配信ライブを決行。同時に負債返済のためのクラウドファンディングを行い、3月20日時点で5700万円を超える支援金を集めているものの、目標額まではまだまだ届かず、依然として支援が求められる状況だ。


 とはいえ、無観客配信ライブと先述のクラウドファンディングのようなネットサービスの組み合わせは、イベント中止や延期を余儀なくされたアーティストや関係者たちにとっては経済面での急場をしのぐという意味でも大きな意味を持ち、今、こういった配信ライブの在り方に関心が寄せられている。


 そんな中、今、求められるサービスとして注目されているのが、多言語ホワイトレーベル電子チケット販売プラットフォームのZAIKOが今月発表した新システム「ライブ配信 電子チケット」だ。


 このシステムでは、アーティストやイベント主催者がライブ配信自体を”イベント”として行い、通常のリアルイベント同様に有料チケット、つまりライブ配信専用の電子チケットを販売することで収益化を実現。彼らが被る新型コロナウイルスによる損害を抑えることができるのが特長になっている。またイベントに参加する側に対しても、オンライン/オフラインのどちらで参加するかの選択肢が与えられるという意味でメリットが大きいことも特筆すべき点だろう。


 現状、新型コロナウイルス感染拡大以降、行われている配信ライブは無観客ライブが多いが、今後も様々な理由でライブの現場に参加することを自粛するファンも少なからずいることだろう。そういった人が不安なく、イベントにオンラインで参加し、好きなアーティストやヴェニューを支援できるのは、この状況での有料ライブ配信に大きな価値をもたらすはずだ。


 実際にこのシステムを利用し、人気バンドのceroが3月13日に電子チケット制ライブ「Contemporary http Cruise」を開催。ZAIKOのシステムを通じて、ファンは有料配信ライブのチケットを購入することで、無観客で行われたライブをオンラインで楽しんだ。またその際は、1000円で販売された電子チケットに加え、500円単位での投げ銭によるアーティスト支援も実施。その際はチケット購入時にファンが追加でライブに課金できる仕組みになっていた。


 日々、状況が変わる新型コロナウイルスの影響下では、いつ事態が収束するかは予想しにくい。そのような中でもエンタメ関係者は自分たちの生活を維持していく必要があり、なんらかの形で収益を上げなければならない。そういった意味で無料の配信ライブは音楽ファンにとってありがたい反面、提供する側にとっては経済面でのリスクを孕んでいる。そのような状況を打破するという意味で「ライブ配信 電子チケット」は今、エンタメ業界に求められているサービスと言えるだろう。


 リアルな現場での体験が重視されるライブビジネスにとって、今回のような不測の事態は大きな痛手に間違いない。しかしながら、そういった状況を打破とはいわないまでも緩和するという意味で、テクノロジーはエンタメを支えることができる。また事態収束後も、こういった有料配信ライブチケットは最新のテクノロジーと相性が良いため、引き続き普及が期待されるサービスではないだろうか?


 例えば、今年1月に行われた須田景凪の招待制ライブ『uP!!!NEXT 須田景凪〜晩翠〜 powered by au 5G』では、この春から国内でも商用利用がスタートする5G通信を活用したインタラクティヴなライブ施策も行われた。その試みではライブ会場であるLINE CUBE SHIBUYAと「au SHIBUYA MODI」を5Gシステムでつなぎ、MODIに集まったファンが5G端末を利用することで、ライブに参加。5Gの多接続、低遅延、大容量通信といった特性が活かされた新しい配信ライブが実現したことは記憶に新しい。


 その点で考えると今後は5Gの普及により、ミックスドリアリティ(MR)を駆使した演出が加えられた配信ライブなど、リアルイベントでは不可能な形のものが行われるようになる可能性も十分に考えられる。またもし、通常ライブと有料ライブ配信で異なる演出が行われるようになれば、ライブの楽しみ方自体を個人が好みや状況に応じて選ぶことができる“ライブ体験の民主化”にもつながるのではないだろうか?


 このようにテクノロジーの進化は、配信ライブに新しい価値をもたらす可能性を秘めている。それだけに有料ライブ配信の需要は配信ライブの発展とともにさらに拡大していくはずだ。


 なお、ZAIKOでは現在、Vimeoでのライブ配信サービスを提供しているが、今後はその他の動画配信サービスとの連携も視野に入れているようで、(実際に同社に問い合わせてみたところ、ceroの「Contemporary http Cruise」ではVimeoが活用されたとのこと)活用できる配信プラットフォームが増えていくことを含めて今後のサービスの発展にも期待したい。


(Jun Fukunaga)


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