限定公開( 15 )
ワタミは10月25日、サンドイッチチェーン「SUBWAY」の日本法人である日本サブウェイを買収したと発表した。米サブウェイとマスターフランチャイズ契約を締結し、今後、ワタミが日本におけるサブウェイ事業を展開することになる。今回の買収にはどのような狙いがあるのだろうか。小売・流通アナリストの中井彰人氏に聞いた。
中井氏は、今回の買収の前提として、コロナ禍による外食業界の変化があると指摘する。ワタミの主要事業は居酒屋と宅配給食だが、居酒屋はコロナ禍の外出自粛や時短営業で大きなダメージを受けた。コロナが収束し外食需要が復活した現在も、以前ほど客足は戻っていない。
日本フードサービス協会が、会員企業を対象に実施した調査がある。2024年5月の売上高をコロナ前の2019年5月と比較したところ、パブ・ビアホールは82.4%、居酒屋は67.2%となっている。「昼の外食需要はほぼ復活したものの、アルコールへの依存度が高い居酒屋やレストラン、バーなどが苦戦しています」(中井氏)。一方、好調なのがファストフードだ。前述の調査において、2024年5月のファストフード(会員企業)全体の売上高は、コロナ前(2019年5月)の127.7%を記録した。
コロナを乗り越えた“病み上がり”状態のワタミにとって、売上高アップのため「居酒屋でもう一度勝負する」ことのリスクは高い。今後の事業成長を考えると、コロナ禍も好調で乗り切ったファストフード市場に参入すべきと考えるのは自然な流れだと言える。
|
|
●「ワタミファーム」という強み
今回の買収で大きなシナジーをもたらしそうなのが、ワタミが所有・運営する農園だ。同社の農園「ワタミファーム」は国内7カ所にあり、野菜を栽培したり、乳牛を育てたりしている。
サブウェイのサンドイッチは、基本的にレタス、トマト、ピーマン、オニオンが入っている。他のファストフードチェーンと異なり、「野菜がたくさんとれる」ことが売りの1つだ。今後、ワタミファームで生産された有機野菜を、サブウェイで使用できる。「ワタミファームの農作物を有効活用するための、サブウェイという巨大な出口ができたとも言えます。サブウェイ買収により、需要から供給まで一体的なサプライチェーンを構築できるでしょう。自社農園でとれた野菜を使用することは、イメージ戦略の面でもプラスに働きます」(中井氏)
●狙うべき出店エリアは?
10月25日に開催したサブウェイとの共同記者発表会において、ワタミの渡邉美樹会長兼社長は「20年かけて3000店を目指す」と明らかにした。ワタミがサブウェイの出店を加速していく上で、中井氏は「消費者からマクドナルドとは違う使われ方をすること」を重視すべきと話す。
|
|
サブウェイでは注文の際、パンや野菜の量を選ぶことができる。好みに合わせてカスタマイズできるのはセールスポイントだが、子ども連れや大人数だと注文が面倒と感じる人もいる。「ファミリー向けのロードサイド店舗の展開は限定しつつ、オフィス街への出店は親和性が高いと考えられます」(中井氏)
時間が限られる平日ランチ時は、事前にモバイルオーダーで注文を受け付け、テークアウトにすれば回転率も上がる。加えてワタミが都心部で展開する居酒屋を、サブウェイに業態転換するのも一案だと中井氏。「既存の居酒屋店舗を活用すれば改修費用だけで済み、コストカットにもなります」(中井氏)
“病み上がり”のワタミにとって、サブウェイは回復の切り札になれるか。今後の動向に注目だ。
|
|
|
|
Copyright(C) 2024 ITmedia Inc. All rights reserved. 記事・写真の無断転載を禁じます。
掲載情報の著作権は提供元企業に帰属します。