抗がん剤が効きにくく、手術で切除しても再発するリスクが高いタイプの舌がんは、細胞内で不要なたんぱく質や小器官をリサイクルする「オートファジー」などの仕組みが活性化していることが分かった。東京科学大や自治医科大、日本医科大などの研究チームが解明し、5日付の米科学誌デベロップメンタル・セル電子版に発表した。
患者から舌がんの細胞を採取して実験容器内で立体的に培養し、長期間維持・増殖可能な「オルガノイド」を作る技術を開発。患者28人分のオルガノイドを作製して遺伝子の働きを網羅的に調べた結果、抗がん剤が効くタイプと効きにくいタイプの違いが明らかになった。
効きにくいタイプの細胞では、オートファジーのほかにコレステロールの合成が活性化し、生き残る力が強いことが判明。舌がんの組織を手術で切除し、抗がん剤治療を続けても、血管やリンパ管などを通じて他の臓器に転移し、再発する要因になるとみられる。
一方、オートファジーなどの仕組みを専用の薬剤で阻害すると、抗がん剤が効くようになり、がん細胞が死滅した。
オルガノイドは約1週間で作製できるため、将来は各地の病院で作って抗がん剤の効果が確認可能になると期待される。
東京科学大の樗木俊聡教授は「患者ごとに再発リスクを評価し、適切な治療方針を決められる」と説明。「新薬開発や(薬の効き目を検査する指標の)バイオマーカーの発見にも役立つ」と話した。