
「アクセス過多にて、当社のオンラインショップが繋がりにくい状況になっています」ーー4月中旬、高校教科書の出版社「第一学習社」(本社、広島市西区)の通販ページに全国から熱い視線が注がれました。人々のお目当ては同社が発行する国語の副教材「カラー版新国語便覧」。国語の資料集がなぜ。同社に話を聞きました。
大ヒットのきっかけは…SNSでの拡散
同書は高校生や教員向けに作られたもの。古文、現代文、漢文、表現、言葉の学習の5部構成で、平安時代の人々の暮らしぶりから現代の創作やメール文に役立つ情報まで、国語にまつわる資料を網羅。ふんだんな写真や図版が目を引く「学習に役立つ情報を視覚的にわかりやすく整理した国語資料集」(同社サイト)です。
一般層の心をつかんだきっかけは、ネットユーザーによるSNS投稿でした。
あるユーザーが3月、同書編集者による座談会がネット上に公開されていることを知り、面白い内容だと紹介しました。
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座談会の中では、最近の便覧には文豪たちが登場するゲーム「文豪とアルケミスト」やアニメ「文豪ストレイドッグス」などのメディアミックス作品にも触れていることが話題に上っており、作品ファンらが反応し、拡散が加速。
さらに編集者たちが、便覧は大人でも役立つ一生使える教養書だと語っていたことから、今度は知識欲の旺盛な大人たちの購買意欲を刺激しました。
座談会の内容は2022年に公開されたもの。突然、脚光を浴び社内の反応は。
「このタイミングで注目を集めることを想像できた人間はおらず、まさに想定外の事態にただただ驚いています」(同社担当者)
社内では「想定外の事態」→急きょオンライン販売開始
SNSで拡散するにつれ、同社には「国語便覧を読んでみたい」という声が多数寄せられるようになり、急きょオンラインショップでの販売をスタートしました。
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3月末以降、数回に分けて再販を行いましたが、各回とも在庫は完売。「国語便覧」というキーワードはXのトレンド入りまで果たしました。4月21日の再販では発送作業の人員も確保し、「今までにはない体制を整えました」(同社)としていましたが、予想をはるかに上回るアクセスが集中し、ページが表示されなくなる場面も。
再販やアクセス集中は同社にとって初めてのこと。同社は公式Xを通じて「潤沢な在庫を用意したと、自信をもって臨んだ再販であるにも関わらず、このような結果になってしまい、申し訳ありませんでした」とお詫び。ネットユーザーからは「謝らないでください」「再販お待ちしています」「第一学習社の方々が頑張ってくれている」「無理せずがんばってください」など、好意的な反応が寄せられました。
同社担当者にあらためて同書の魅力を尋ねると、「記載されている内容は、古典文学や近現代文学だけでなく、評論テーマや現代文重要語彙に関する情報、プレゼンテーション、レポート、小論文など、表現の仕方に関する情報など多様です。高校生の国語の学習に役立つのはもちろんですが、大人になってからも、読書のきっかけ、学び直しの素材としてなど、多くの気付きを与えてくれる存在だと思います」とアピールしました。
「カラー版新国語便覧」はB5判、520ページ、価格950円(税込み1045円)。購入方法は同社オンラインショップ、もしくは書店や教科書取扱書店での取り寄せ。オンラインショップでの次回販売は5月9日の予定。再販に関する最新情報は同社公式X(@daiichi_g)で。座談会の様子は同社Webメディア「Column Lab.(コラムラボ)」にて公開中。
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同書に対するSNS上の反応を調べると、「時間があれば読んでしまう」「大河ドラマファンだから古文の学習のページはありがたい」「『文豪ストレイドッグス』に出てくる文豪たちの学び直しをしてみたい」「1000円ちょっとで買えるのバグってる」「520ページのボリュームに興奮」「便覧って大人になって読む方が楽しい」などの声がありました。
(まいどなニュース・金井 かおる)