日米関税交渉について、記者団の取材に応じる石破茂首相=3日、首相公邸 石破政権は大型連休が明けた後も、内外の難題への対応を迫られる。トランプ米大統領による高関税政策を巡る日米交渉の行方が最大の焦点。夏の参院選に影響を与えるのは必至で、関税協議は石破茂首相の命運を左右する可能性がある。
「われわれとして鉄、自動車、アルミニウムを含め全ての関税について協議を行っている」。首相は3日、首相公邸で記者団に対し、一連の関税措置の見直しを求める考えを重ねて示した。ただ、米側は協議の主な対象を相互関税とし、自動車や鉄鋼・アルミニウムへの関税は含まないとの認識で、日米の隔たりは大きい。
米側が設定した相互関税上乗せ分の一時停止の猶予期限は7月9日。日米はこれを意識しながら5月中旬以降に閣僚級で集中的に交渉する方針。参院選の日程は、今国会の会期延長がなければ「7月3日公示―20日投開票」となる見通しで、日米交渉の評価は参院選で有権者の審判を受けることになる。
少数与党で低支持率にあえぐ石破政権として、追加関税を回避する合意に至れば「政権浮揚につながる」との期待がある。首相は「国益」を強調しながら交渉に全力で臨む考え。6月中旬にカナダで開かれる先進7カ国首脳会議(G7サミット)に合わせた日米首脳会談も視野に入れる。
日米交渉を巡り、自民党の支持基盤への影響が大きいコメは重要な「聖域」。党関係者はトウモロコシや大豆の輸入拡大は認めたとしても「参院選を考えればコメで譲ることはできない」と強調する。
交渉が妥結せず、上乗せ分を課されたり、発動済みの自動車関税などの措置見直しを実現できなかったりした場合は、政権への打撃は避けられない。日本経済への影響も懸念される。参院選で議席を大幅に減らせば、党内で「石破降ろし」が加速するとみられる。
◇消費減税、不信任案も焦点
後半国会では物価高対策も論点となる。立憲民主党は食料品の消費税率を1年間0%にすることを参院選公約に掲げる方針。消費税減税は日本維新の会や国民民主党など野党に限らず、参院自民や公明党からも求める声が上がる。首相や自民執行部は慎重な姿勢を示しており、減税を含む経済対策の扱いが論戦のポイントとなる。
自民派閥の裏金事件を受けた「政治とカネ」の問題も収束していない。立民の野田佳彦代表は「解明に関わることは引き続きやらなければいけない」と追及を続ける意向を示した。旧安倍派幹部らの参考人招致、与野党の溝が埋まらない企業・団体献金の扱いなどを巡り首相が決断を求められる場面もありそうだ。
内閣不信任決議案の提出に関する野党の動きも注目される。野党がまとまれば可決できる政治状況の中、国民民主の玉木雄一郎代表は「引き金を引くトリガーを持っているのは野党第1党の野田氏だ」と指摘。首相を支える閣僚の一人は「可決されれば衆院解散しかない」とけん制する。野田氏は「総合的な判断が必要になる」として、日米交渉の状況も見極めながら慎重に検討する構えだ。