一連の訴訟で引き下げの是非が争われた生活保護基準は、就学援助や最低賃金などさまざまな制度とも関連する。減額は受給者だけにとどまらず、多くの国民の暮らしにも影響する可能性がある。
生活保護制度は、食費や光熱水道費などを支援する「生活扶助」、家賃を支援する「住宅扶助」など8種類の給付項目がある。厚生労働省によると、2023年10月時点で東京都区部在住の両親と子1人の世帯に給付される生活扶助基準額は16万4860円、高齢単身世帯では7万7980円。ただ、労働者や年金生活者らはその分の収入が差し引かれる仕組みだ。
訴訟の対象となった13〜15年の引き下げ当時は約216万人が受給者だった。厚労省によると、その影響は18年9月まで続き、時事通信の試算では、減額幅は計3000億円規模に上る。
生活保護基準の変更で影響が及ぶ可能性のある制度は47に上るとされ、小中学生の入学準備費や給食費、修学旅行費などとして支給される就学援助もその一つ。対象児童数は13〜18年度で、年約139万〜約153万人に上る。生活保護受給世帯に加え、それに準じる困窮家庭の子どもも含まれる。
具体的には、援助対象を生活保護基準額の1.0〜1.5倍の所得としている自治体が多い。政府は基準引き下げに伴う影響ができるだけ及ばないよう通知を出したが、文部科学省の担当者は「実際に影響が生じたか調査していないため、自治体によっては対象外となった児童がいた可能性も否定できない」と説明している。
一方、最低賃金法は「労働者が健康で文化的な最低限度の生活を営むことができるよう、生活保護にかかわる施策との整合性に配慮する」と定めている。厚労省によると、この条項が導入された07年時点では、一部の自治体で生活保護の支給水準が最低賃金で働いた場合の収入より高かった。最低賃金が上がったことにより、15年以降は全都道府県で生活保護水準を上回っているという。