4人がクマに襲われた現場周辺を調べる警察官ら=10月24日、秋田県東成瀬村 相次ぐクマの被害を受け、警察庁は警察官による駆除の実施に向け検討を急いでいる。機動隊が保有するライフル銃の使用を想定するが、前例はなく規則の改正や射撃訓練など課題もある。警察幹部は「被害は深刻。速やかに対応可能な体制を整えたい」と話す。
警察は従来クマに対しては住民の避難誘導や安全確保、行方不明者の捜索などを実施。駆除は警察官職務執行法の「狂犬や暴れ馬などの出没で危険が生じた場合、警察官は被害防止に必要な措置を取るか関係者に命じることができる」という規定に沿い、ハンターらに対応を依頼してきた。
被害の拡大や政府の要請を受け、警察自ら駆除に乗り出した格好だが、実施にはハードルもある。一つは人員の確保だ。これまでクマに対応してきたのは地域警察官だが、クマは頭蓋骨が硬い上に皮下脂肪が厚く、地域警察官の拳銃では効果がないとみられる。
このため警察当局は機動隊が所持するライフル銃の使用を想定。ただ、機動隊でもライフル銃の訓練をしているのは銃器対策部隊など一部の人員に限られ、内容も犯人狙撃など対人のもの。実施前にはハンターからクマの生態や有効な射撃部位などを学び、射撃訓練を積む必要がある。
また、ライフルなど特殊銃の使用目的を定めた国家公安委員会規則の改正も必要だ。目的をハイジャックや人質事件などへの対応としており、クマへの発砲は想定外。実施には規則でクマ駆除を任務と定めなければならない。
警察庁は被害の大きい北海道や東北での駆除を想定し、11月4日から秋田、岩手両県に担当者を派遣。詳しい状況や自治体のニーズを調べることにしている。