限定公開( 19 )

「スーパーヒューマンになるということが我々人間の生きる道」──ソフトバンクが7月14日に開催した「SoftBank World 2026」の特別講演でソフトバンクグループの孫正義会長兼社長がこう述べた。「人間が頂点の生命体の時代は終わるんです。いいか悪いかは別なんです」と述べ、AIとともに自らも進化することの重要性を説いた。
孫氏が語ったのは、約15年後にあたる2040年の世界だ。インターネット革命では「最初の20年以内に自分のポジションでトップを取れなかった会社は、その後もずっと取れてないんですね」と指摘。AI革命が始まって数年がたった今、40年のAIの姿を描くべきだとして、自らの予測と、未来で人々が選択するべき道筋を示した。
●ASIは世界GDPの20%を置き換える
同氏はまず、15年後の市場を予測した。孫氏の見立てによると、ASIが世界GDPの約20%を占め、年間売上高は7000兆円に達するという。さらに「利益率は十中八九50%近くいく。3500兆円くらいの利益を毎年稼ぐ企業がいくつか生まれる」「株式の時価総額で言えば、おそらく80%くらいになるんじゃないか」と続けた。
|
|
|
|
それを支えるデータセンターの規模について、同氏は「私は毎日考えてるんです。3テラワットです。現在の世界の発電、電力を使っている量の1.8倍になるんです」と述べた。これはデータセンターのみの電力だ。同氏によると、2040年以降も毎年1テラワット規模で増えていくという。
電力は当面ガス発電が中心になるとしつつ、40年には核融合(フュージョン)が主役になると予測する。「フュージョンでいくと、水が原材料ですから、そもそもクリーンなんです。ウランじゃないですから」と述べ、「地球の炭素問題だとか、温暖化問題というのは、嘘のように消えてなくなるんじゃないか」と予測した。
●40年のAIデータセンターの到達点
では15年先、データセンターの演算能力はどうなるのか。孫氏は単位のクイズを交えながら問いかけた。10の18乗を表す「エクサ」、その1000倍の「ゼタ」、さらに上の「ヨタ」。桁が上がるほど挙手の数は減っていった。「ゼタの次を知ってる方、1人でもいたら手を挙げてください。私の腕時計あげます」。手は挙がらなかった。
孫氏が40年のAIデータセンターの到達点として示したのは、ヨタのさらに上で10の30乗を表す単位「クエッタ」。「クエッタを知らない人がAIを語るな」と、同氏は言い切る。
|
|
|
|
これらのインフラを構築するために、どのくらいの費用が必要なのか。孫氏は「15年先ぐらいのことを考えなくて、インフラの世界を語るなと言いたい」「鉄道の世界とか、高速道路っていうのは15年なんて当然かかるでしょう。コンピュートの世界もかかるんです」と前置きした上で、「年間5兆ドルの投資が必要になります。800兆円です」と力説する。
この金額を投資しても「経営が成り立つ」という。「世界のGDPの20%、7000兆円の売り上げが毎年あるならば、毎年800兆円使ったって全然誤差だと。十分50%の利益はお釣りが来るじゃないか」
また、巨額投資に付きまとうバブル論にも反論。「AIはバブルかと。とんでもない愚問ですよ」「その質問をする方は、そもそもAIの本質をまったく分かってないんじゃないか」とし、「飛行機に乗ったことがない人が飛行機を語る、自動車に乗ったことがない人が自動車を語る」のと同じだとした。自身は「僕はもう今、朝から晩までAI使ってます」という。
●人類の生きる道は「スーパーヒューマン化」
孫氏は、15年後のAIがどこまで進化しているかも語った。同氏いわく、生命がバクテリア以来「自己増殖」と「自己進化」で進化してきたように、AIエージェントも同じアルゴリズムによって進化する。増殖は100兆個では止まらず1000兆個へ向かい、この流れは止められないとした。
|
|
|
|
「エージェントが100兆個いたら、地球上の生命体の中で1番多い数の生命体はエージェントになるわけです」「日本で止めようとしたってアメリカ動くわけです、アメリカが止めようとしたって中国は動くわけです」(孫氏)。
では、その世界で人間はどう生きるのか。その答えとして孫氏は「スーパーヒューマン化」を提唱した。「エージェント中心の地球生命体になったら我々どうしたらいいかということを我々は考えるべきだと思うんですね。それを拒否するのではなくて、それと共に進化をするということが必要になると思うんです。共に進化するということは何かというと、ヒューマンもスーパーヒューマンになるということであります」
そのうえで孫氏は、人類はこれまでもスーパーヒューマン化を続けてきたとした。「自分が歩くよりも早いスピードで動けるようになったわけです。それは自動車ですよね。自分が飛べる高さよりも高く飛べるようになった、それは飛行機ですよね」。テレビもラジオも、目や耳の能力を延長する道具だったという。
ただし、いずれも手足の延長にすぎなかった。「今度は初めて頭脳の延長ができるわけですね。スーパーヒューマンとしてのクライマックスがここから始まるんです」。超知性を身にまとうことが、人類の次の進化になるという見立てだ。
その具体像が、自らのエージェント化だ。自分の思考体系や経験を専用エージェントに学習させて育てれば、「これやっといてくれ」と指示するだけで、テニスや散歩の間も夜中も分身が働き続ける。「自分自身のエージェントを持たなかったらその人の進化は終わるわけですね」と述べた。
肉体労働はヒューマノイドが担い、40年には10億体が生まれると予測した。「働きの度合いとしては1体で10人分くらい。ということは、100億人の仕事をしている」と語り、労働の主役が人類からヒューマノイドに移るとする。その間人間は、「自分が1番やりたいことをやればいいんです。自分が1番感動すること、自分が今1番やりたいこと、家族と一緒に旅行に行くとか、テニスをするとか、絵を描くとか」と自身の考えを披露した。
健康寿命の延長もスーパーヒューマン化の一部だ。孫氏は「10年間の自分の命に、皆さんいくら払いますか」と問いかけつつ、AIによるパーソナライズ医療で残りの健康寿命を10年延ばせるなら「自分の生涯稼いだものの3割ぐらいは払っても惜しくないかなと。いや5割払ってもいいぞとということになる」とした。そこに巨大なAI産業が生まれるとみる。
また孫氏は、企業がAI投資を判断する物差しとして、Return on Assetならぬ「Return on AI」を提唱。「AIにかけるコストに対して、結果どのくらい生産性が上がったか。払う価値があったか」を測る指標で、「3年くらいのスパンで今これを買えば、少なくとも3年以内ぐらいに投資したものを超えるリターンが来ると信じたならばとことんやるべきだ」とした。そのうえで、経営者の一番大切な仕事は「自分の会社でAIだぞ!ということを叫んで、叫び続けていく」ことだと述べた。
|
|
|
|
|
|
|
|
Copyright(C) 2026 ITmedia Inc. All rights reserved. 記事・写真の無断転載を禁じます。
掲載情報の著作権は提供元企業に帰属します。

孫氏「人間が頂点の時代終わる」(写真:ITmedia NEWS)94

孫氏「人間が頂点の時代終わる」(写真:ITmedia NEWS)94