日本人の「京都離れ」はなぜ起こったか オーバーツーリズムでもホテル高騰でもない、根本原因

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2026年06月01日 05:40  ITmedia ビジネスオンライン

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何が原因なのか

 日本人旅行客による「京都離れ」が進行中だ。


【画像】混雑している様子


 京都市観光協会データ年報によると、2025年の京都市内主要ホテルにおける日本人宿泊数は前年比10%減の354万9100人となった。コロナ前の2019年(約323万人)を上回っているものの、リベンジ消費や旅行推進政策によって増加した2022年(約534万人)をピークに、減少し続けている。


 日本人の京都離れはホテルの客室平均単価の上昇が主な要因だが、近年、SNSでは京都のオーバーツーリズムを嘆く投稿も多く、混雑を理由に京都を避ける人も増えている。歩きづらい清水寺に嵐山、乗りにくい市バスだけでなく、インバウンドの増加も京都のイメージ低下につながっているようだ。


●高まる宿泊費で日本人客が遠のく?


 2022年以降、京都市の日本人宿泊数は毎年60万人ほどのペースで減少し続けている。この間にインバウンドは増えており、総宿泊数は581万人→921万人→1006万人→1055万人と増加してきた。需要増加に伴い平均客室単価は2025年には2万1286円に上昇した。1万6000円前後のコロナ禍以前の水準を大きく上回る。


 宿泊施設は旅行者数の統計や為替、周辺施設の相場に合わせて客室単価を設定する。宿泊日数が多く、日本人より高単価な部屋を選びがちなインバウンドの方が価格への影響度は大きく、宿泊施設は強気な価格設定をするようになった。東京・大阪と同じく、京都も価格が上昇して日本人が泊まりにくい状況が起きている。


 京都市の宿泊施設数は年々増え続けている。総客室数は現在6万室で、この10年で2倍近くとなった。しかし、主要ホテルの稼働率はコロナ禍以前と変わっておらず、今後も客室単価は下がりそうにない。


 京都は関西圏からの日帰り客も多く、こうした宿泊費の上昇によって、遠方からの日本人客が減少していると推察される。


●オーバーツーリズムも深刻化


 遠方客の京都離れはオーバーツーリズムも要因とされる。2024年の水準で観光客に占める外国人の比率は2割程度に過ぎないが、SNSでは外国人客や混雑を忌避するような投稿も目立つ。


 特に混雑するのが清水寺だ。年間参拝者は2000年時点で300万人程度だったが、2024年には500万人まで増加した。最寄りのバス停から寺に通じる清水坂は人で埋まる。寺に近づくほど土産店やカフェ、テークアウトの販売店が密集し、人の歩く速度が低下するため、歩きにくくなる。八坂神社まで歩く客も多いため、混雑は周辺に波及し、裏道のような存在だった二年坂や「ねねの道」も時間帯によっては混雑している。


 嵐山周辺も混雑が激しい。JR嵯峨嵐山駅の1日平均利用客数は2010年代前半の1万1000人から、2024年には1万9000人に増加した。車の交通量が多い地区だが、徒歩の観光客が車道にまであふれる光景もよく見られる。


 例えば渡月橋は遠くから見る分には楽しめるが、歩道は狭く、混雑のため風情を感じにくい。名所の竹林も2010年代からSNSを通じて海外での知名度が上昇し、多くの客が集まるようになった。観光サイトで掲載されているような、無人の写真を撮ることはかなり難しい。


 インバウンドの増加に伴って、和牛串や焼肉店など、日本人よりも外国人向けに特化した商店や飲食店も増えた。漬物で知られる錦市場も外国人向けを対象とした店舗が多い。こうした店舗の変化も「京都らしさ」の喪失につながり、日本人客の減少に影響を与えている。


●バス「二重価格」も検討中だが……


 公共交通機関の混雑も深刻だ。事前に帰りの切符を購入していない客が多いため、京都駅の新幹線用きっぷ売場は常に長蛇の列ができる。慣れない機械の操作に時間がかかる客も目立つ。


 観光地を巡る場合は市バスを利用するのが一般的だ。しかし清水寺、祇園など名所を巡る系統は常に混雑している。京都駅のバスで清水寺に向かう場合、行列ができているため1本目のバスに乗ることは基本的にできない。また、名所付近のバス停も混雑していることが多く、客が乗車を断られる場面もよく見かける。


 過去に『京都市バス、観光客だけ「2倍運賃」検討 オーバーツーリズムだけではない切実な背景』でも解説した通り、観光名所を巡る場合、市バス以外の代替手段は少ない。市は2027年度に非市民向けの大人運賃を現状の230円から350〜400円に引き上げ、市民向けを200円とする計画だが、主目的は財政の健全化であり、客数減少の影響は小さいとみられる。


 公共交通機関の混雑解消には、バスの増便や新たな地下鉄の建設など根本的に輸送力を高める施策が必要だが、京都市交通局の財政状況から判断すると実現可能性は極めて低い。バスの混雑は今後も解消されないだろう。


●諸悪の根源は「円安」


 客室単価の上昇に加え、インバウンドの増加に伴う観光地や公共交通機関の混雑、街並みの変化が遠方から来る日本人客の京都離れをもたらしている。また、昨今の国政選挙の結果が示したように、世論では外国人に対して好意的ではない雰囲気がまん延しており、こうした世論が外国人だらけの京都を否定的に捉えることにつながっている。


 オーバーツーリズムも客室平均単価の上昇も、突き詰めれば過剰な円安が要因だ。1ドル100〜110円を推移していたドル円は現在、150円台を推移しており、単純計算で日本人の購買力は約1.5倍低下した。日本の物価水準は途上国より高く、先進国よりは低い水準だ。この間にアジア諸国は経済成長を遂げ、気軽に日本に旅行できる人が増えた。


 一方で円安を背景に海外に向かう日本人客の数は回復せず、コロナ禍以前の7割水準に留まる。このままでは京都への旅行者数も以前の水準を下回るかもしれない。過剰な円安は日本人の海外旅行ばかりか、国内旅行にも影響を与えている。


●著者プロフィール:山口伸


経済・テクノロジー・不動産分野のライター。企業分析や都市開発の記事を執筆する。取得した資格は簿記、ファイナンシャルプランナー。趣味は経済関係の本や決算書を読むこと。



このニュースに関するつぶやき

  • 狂ったように値上げしても湯水のようにお金を出してくれる外国人ばかり優遇した結果。もう宿泊料等(物価上昇分は除く)を以前レベルに戻しても日本人は振り返ってはくれない。
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