俳優の吉沢亮が主演、横浜流星が共演する映画『国宝』(2025年公開)に、渡辺謙が出演することが発表された。吉沢(21年『青天を衝け』)、横浜(25年『べらぼう〜蔦重栄華乃夢噺〜』)、渡辺(1987年『独眼竜政宗』)と、大河ドラマの主演を務める俳優そろい踏みの映画『国宝』とは、どんな映画なのか。主な登場人物の相関図も公開された。
【画像】主演の吉沢亮 この映画の原作は、吉田修一氏の同名小説。吉田氏が3年もの間、歌舞伎の黒衣をまとい、楽屋に入った経験を血肉にし、書き上げたこん身の一作だ。映像化不可能だと言われた小説の映画化に挑んだのは、『フラガール』(2006年)や『悪人』(10年)などの李相日監督。歌舞伎界を舞台に、芸の道に人生を捧げた主人公・喜久雄(吉沢)の50年にわたる一代記を、彼を取り巻く人々の熱狂とともに描く。
渡辺は、李監督の『許されざる者』(2013年)、『怒り』(16年)で主演を務め、本作が李組3度目の参加。主演の吉沢とは初共演となる。
今回演じるのは、任侠の家に生まれた喜久雄(吉沢)の女方としての才能をみいだし、実の息子・俊介(横浜)と共に育てる上方歌舞伎の名門の当主で、大人気の看板役者・花井半二郎。
小説が出版されて直ぐに読んでいたという渡辺。「役者の心の苦悩、歓喜、そして生き様が赤裸々に描かれていた。ただあまりにも壮絶で壮大な人生は『こりゃ映像化は無理だ』とも感じていました」。しばらくして李監督から連絡があった。
「腰が浮くのを抑えながら、果たしてこの大作を支えられるか悩みました。でも、これまで数々の難題を乗り越えて来た李監督を信じ、この素晴らしい作品に立ち向かう決意を固めました」と明かしている。
相関図とともに主な出演者が一斉に発表となった。喜久雄(吉沢)の幼なじみで恋人の春江役に高畑充希。李監督とは『怒り』以来、2度目のタッグ。主演の吉沢とは『アオハライド』(14年)以来、10年ぶりの共演となる。喜久雄を追って自身も長崎から上阪し、人気役者になっていく喜久雄と俊介(横浜)をそばで見守る。
半二郎(渡辺)の妻で俊介(横浜)の母、大垣幸子役に、自身も人間国宝の歌舞伎役者を父に持つ寺島しのぶ。喜久雄の人生に大きな影響を与える人間国宝の歌舞伎役者・万菊役に田中泯。
兄のように慕っていた喜久雄に恋をする、歌舞伎役者の娘、彰子役に森七菜。父親から勘当されてまでも喜久雄と一緒になることを望み、どこまでも喜久雄に寄り添おうとするけなげな女性を演じる。
京都の花街で初めて喜久雄と出会ったその日に、自分の人生を賭ける覚悟を見せる芸妓、藤駒役に見上愛。放送中の大河ドラマ『光る君へ』(24年)で、一条天皇の正妻となった定子役の高畑と、彰子役の見上がそろって出演するというのも楽しみだ。
喜久雄の父親で、長崎の任侠一門・立花組の組長、立花権五郎役に永瀬正敏。権五郎が抗争によって命を落とすことが、喜久雄の人生を変えることになる。権五郎の後妻で、喜久雄の育ての母、立花マツ役に宮澤エマ。権五郎の死後、喜久雄の生みの母親の遺言を守り、堅気にさせるために喜久雄を大阪の花井家に送り出す。
吉沢演じる喜久雄の少年時代を、是枝裕和監督作品『怪物』(23年)の黒川想矢。横浜演じる俊介の少年時代を映画『ぼくのお日さま』(公開中)の越山敬達が演じる。
歌舞伎の興行を取り仕切る三友の社長で、喜久雄と俊介の初舞台を用意する、梅木役に嶋田久作。李組は『69 sixty nine』(04年)以来、21年ぶり。
喜久雄や俊介とともに成長していく三友の社員、竹野哲平役は、『許されざる者』、『怒り』、『流浪の月』(22年)に続く李組4度目の参加となる三浦貴大が演じる。
■新たに発表された出演者のコメント
▼渡辺謙
吉田修一さんの「国宝」出版されて直ぐに読ませていただいた。役者の心の苦悩、歓喜、そして生き様が赤裸々に描かれていた。ただあまりにも壮絶で壮大な人生は「こりゃ映像化は無理だ」とも感じていました。
しばらくして、盟友、李相日監督から連絡を貰うことになる。なんと挑戦したいとの事。腰が浮くのを抑えながら、果たしてこの大作を支えられるか悩みました。
でも、これまで数々の難題を乗り越えて来た李監督を信じ、この素晴らしい作品に立ち向かう決意を固めました。
▼高畑充希
本来は大きな空間で、全身で、浴びさせてもらうはずの歌舞伎の世界に、汗や涙も捉えられるような寄りの視点で没入する。モニターを見た時、その新鮮な世界の美しさに息をのみました。 元々美しいお2人なのに、これ以上美しくなるの?!って。(笑)私はお2人の1番近くにいつも存在しているキャラクターだったので、間近で貴重な瞬間をたくさん見られて、幸せです。そして何より、久々にまた李監督や李組の皆さんと一緒に撮影ができて、本当に楽しかった!
▼寺島しのぶ
『国宝』という吉田修一さんの途轍もない大作に挑戦された李監督の思いを受け取り参加させていただきました。今まで生きてきた私の環境や、蓄えてきたものを少しでも活かせていれば良いなぁと思っています。
吉沢亮さんと横浜流星さん、2人の少年時代を演じた黒川想矢くん、越山敬達くんの努力とガッツに脱帽です。
支えてくださるたくさんの方の思いが結集されて、素敵な作品になっている事を切に願います。
▼田中泯
万菊さんという人になるために、カラダも心も習う毎日でした。初めてその姿になった時のことでした、数えきれぬ人々の知識と経験が技となり万菊さんの姿が現れる。仰天しました。距離を縮めることのなかった歌舞伎世界の向こう側に、自分はカラダ毎さらわれたのでした。
日々自分の声に不安になり、自分の姿に困惑し、一瞬でもいいから、否一寸でも長く先人の魂が自分の体に訪れ、遊んでほしい、と願ったものでした。万菊さんという自分のうちなる異人。伝統から生まれた万菊さんは今や僕のオドリ探求の相談役であります。そして終わってほしくなかった李相日監督の撮影の一コマ一コマが僕のオドリの稽古のようでした。贅沢しました。礼
▼森七菜
はじめて一人で見に行った映画は李監督の映画でした。映画という豊かな時間を映画館で過ごすことの意味を知るという大切な一歩目を踏み出してから、ずっと憧れにしてきた李組に参加させていただけること、とても幸せに思います。
現場は緊張と衝撃の繰り返しの毎日で、喜久雄と俊介2人の人生がどれだけ壮大な舞台の上に成り立っているかを痛感しながら、青い炎のように確かな温度を静かに保ち現場に佇む吉沢さんを側で見て、寄り添っていく者としてしっかりしなくてはと自分の背中を正し続ける日々でした。情熱であふれたこの作品がたくさんの人に届きますように願っております。
▼見上愛
今回の作品に参加するにあたって、日本舞踊、三味線、舞妓さんや芸妓さんとしての所作練習に勤しみました。10代の役と30代の役をひとつの作品の中で演じるのは初めてのことで、かなり不安もありました。ですが、カメラの前に立つ前に過ごしてきた時間や、吉沢さんや監督をはじめとする、周りの皆さんの集中力と誠実さにとても助けられました。こんなにも贅沢な環境でお芝居ができたことを幸せに思います。
▼黒川想矢
初めて『国宝』のオーディションを受けた時から、僕は絶対に少年・喜久雄を演りたいと思い、気づかぬうちにその薄っぺらい覚悟を李監督につらつらと述べていました。しかし、撮影準備が進むにつれ、日本の古典芸能である歌舞伎を穢(けが)すことなく、少年・喜久雄を演じきることへの重みを痛感し、押し潰されそうな日々が続きました。
李監督や歌舞伎指導の先生からは演技に向き合う心のあり方を教えていただきました。そしてあきらめずに辛抱強く見守っていただき、前に進むための新しい心を授けてくださいました。僕にとって、撮影期間は1日1日が重く優しく美しい3ヶ月でした。たぶん僕だけでなく、多くのキャスト、スタッフの皆さんがもがき苦しんで生み出したであろう『国宝』の完成が、今となっては楽しみで仕方ありません!
▼越山敬達
今回、大垣俊介の幼少期を演じました、越山敬達です。李監督のもとでお芝居ができたこと、素晴らしい演者の皆さんと共演できたことをすごく光栄に思います。歌舞伎や大阪弁は初めての体験で難しく、俊介のことで悩むこともありましたが、僕は新しいチャレンジをするのが好きなので充実した時間を過ごすことができました。
そして監督やスタッフ、歌舞伎や方言指導の先生方、共演者の方々が最後まで支えてくださったおかげで、無事に撮影を終えることができました。公開されましたら、ぜひ劇場に足を運んでください。
▼永瀬正敏
短い期間での李組初参加でしたが、李監督を中心にスタッフの皆さん、共演者の皆さんの熱く、そしてこだわり抜いた丁寧な現場に身を委ねることが出来て、貴重過ぎる日々を過ごせました。 その静かなる熱は、きっと観客の皆さんの心の中に深々と降り積もると信じています。劇中劇、舞台に立たれた俳優の皆さんの、長い時をかけ磨かれた“魂の舞”はまさに必見です。
▼宮澤エマ
私の『国宝』との出会いは3年前、本屋で吸い寄せられるように手に取った吉田修一さんのサイン入りの文庫本でした。きっと映像化されるのではないか、李監督がメガホンを取るのかしらと当時妄想を膨らませていたので、マツ役でオファーをいただいた時はこんな事があるのかと信じられませんでした。
初めての李組の撮影は緊張と発見と苦悩と感動の日々で、短いながらも贅沢で貴重な時間でした。そうそうたるキャスト、スタッフと共にこの壮大な物語の幕開けの一員として参加できたことは心から光栄です。
▼三浦貴大
撮影現場は、まさに職人たちの集まりで、より良い作品を作ろうとする気概に満ちていました。それでいて軽やかさもあり、このような現場に身を置けたことを幸せに思います。
竹野という人物を演じる中で、ある意味俯瞰した立場で歌舞伎を、また2人の成長や葛藤を見ていましたが、私自身も素直にその場にいることで竹野の人物像と近づけるのではと思い、意識していました。刺激的で、とても良い緊張感のある現場でした。
▼嶋田久作
李相日監督とは『69 sixty nine』以来21年ぶりでした。いただいた「梅木」という人物は陽性で自分の「仁」にない役柄かとも思いましたが、久しぶりの監督との仕事。自分の狭い視野を離れて、唯唯、監督の意に沿う演技が出来ればとの思いで撮影に臨みました。
今思うと、21年分の想いが空回りして力み過ぎの不味い芝居ばかりだった気がします。ともあれ監督の「OK」はいただきました。私は李監督の判断には絶対の信頼を置いています。