吉川晃司の反骨がすごい!「俺は現政権がでえっ嫌い」と堂々発言、スポンサーの圧力に負けず反原発メッセージ

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2016年06月05日 12:10  リテラ

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リテラ

吉川晃司オフィシャルWEBサイト「K2 NET CAST」より

「年金運用の失敗で5兆円損したとか、川内原発の周辺は地震が起きないとか言ってたけど、ふざけんなよ」



 今月18日に、新アルバム『WILD LIPS』を発売したばかりの吉川晃司は、「AERA」(朝日新聞出版)2016年5月23日号のインタビューで現在の政治状況についてこう不満を述べた。



 また、「週刊プレイボーイ」(集英社)16年5月30日号でも、乙武洋匡の不倫問題について、不倫に関しては当人たちの問題であり他人が騒ぎ立てるものではないとしたうえで、彼が自民党から出馬予定であったことに対し、さらにバッサリとこう言い切っている。



「ただ、俺は現政権がでえっ嫌いなもんだから、疑問と残念感は残るんだけど。今、自民党から出るのはやめましょうよって思うだけで」



 大河ドラマ『八重の桜』(NHK)での西郷隆盛役や、『下町ロケット』(TBS)への出演など、最近は役者としての活動も目立つ吉川晃司の意外なこれらの発言。しかし、実は、吉川は近年、日本の政治状況についてかなり骨のある発言をし続けている。



 そのきっかけは、東日本大震災だった。宮城県出身のスタッフ二人が実家と連絡が取れないということで、彼らを連れて被災地に向かった吉川は、知人のNPO法人のスタッフに混じり石巻市でボランティア活動に参加する。



 普通、有名人の被災地ボランティアというと、炊き出しなど負担の少ない作業に参加するのが一般的だが、水球で鍛えあげ体力に自信のある彼は敢えて瓦礫の撤去作業に加わることになる。そこで見た光景は、吉川の人生観をがらりと変えてしまうものだった。



「おこがましい話ですけどね。僕は被災地で、死ぬまで忘れられない光景をいっぱい見たんです。と同時に、自分の無力さを痛感した。つまり自衛隊の人たちは重機でガーッとやってるし、看護師さんたちは野戦病院状態の中で働いてる。でも、俺はここでできることは何もないんだなと」(「週刊文春」12年4月12日/文藝春秋)



 しかし、それでも自分にできるのは歌うことだけ。そこで彼は、11年7月30日、東京ドームにて収益が被災地に寄付されるチャリティライブを開き、21年ぶりに布袋寅泰とのユニットバンド・COMPLEXを再結成させることになる。このライブにより、グッズやDVDでの売り上げも合わせて、6億5000万ものお金を被災地に送ることができた。活動休止前に布袋との殴り合いまであったと噂されるほど遺恨のあったこのグループを、なぜこのタイミングで復活させることになったのか。吉川はこう語っている。



「己の不甲斐なさとか、小ささを痛感させられた上に、さらにもっと違うものを何か感じちゃったんだよね。俺は現場に行っちゃったからね。ずるいっちゃずるいのかもしれないな。何かやっとかないとなって。でも何やればいいんだろうって。ともかくお金が、現金がないんだよ、被災者の方は。そしたら送れるものを考えようと思って、やったんだ」(「bridge」14年8月号/ロッキング・オン)



 吉川の活動はこれだけでは終わらない。3.11をめぐる一連の問題のなかで、ことさら彼に危機感を抱かせたのは、原発に関する問題であった。そこには、広島県出身という彼の出自も関係しているだろう。吉川は「あの夏を忘れない」という、広島の原爆で被爆した人々に捧げた楽曲も発表したこともある。



 そんな吉川にとって、原発の危険性が改めて浮き彫りになったのにも関わらず、それでもこの問題を見なかったことにして再稼働を進めている政府の姿勢は、どうしても不信感を抱かざるを得ないものだった。彼はそのような思いをこう語っている。



「このまま何も策を講じることなく死んじゃったら、僕ら、恥ずかしい世代ですよね。放射能のことも、僕らは本当のことを知らず、知識がないゆえに傍観してきた。それは悔いても悔やみきれない」

「次代を担う子どもたちに負の遺産を押しつけて、あとは頼むよじゃ死んでも死に切れないから、やれることはやらなきゃと思ってます。子どもに、墓に向かって「父ちゃん、何もしなかったじゃないか」とは言われたくない。せめて「いや、俺なりに頑張ったんだ」と言い返したい」(前出「週刊文春」)



 その結果、生まれたのが「絶世の美女」という楽曲である。これは、13年に発売されたアルバム『SAMURAI ROCK』に収録されている。



〈お前は絶世の美女さ/世界は跪くだけ/お前の火照った身体/誰もがお手上げだね(中略)10万年後もpillow talk/熱は冷めないんだろう/魔女も驚くmelting down/お前は全部欲しがる/Oh, No NU Days/Oh, No NU World〉



「絶世の美女」ではこのように、原子炉を悪女にたとえて、その厄介さや悪質さを訴えている。〈何言ってんだー/ふざけんじゃねー/核などいらねー〉と歌った忌野清志郎の一連の作品をはじめ、日本のロックでも反原発や反核をテーマにした楽曲は数多くあるが、そういったストレートにメッセージを主張した歌とは一線を画し、少し捻った、文脈を読み解かなければ反原発の曲とは分からないような構造の楽曲となっているのには、吉川が体験から得た学びが反映されている。



「とにかくエンターテイナーがエンターテインメントとして、今思うことをそこに映し出せてないと負けになると俺は思ったんです。直接的な言葉を乗っけるのは簡単だと思ったんですよ。それこそ『原発反対』みたいなね。これじゃあ負けだろうなあと思って、とにかく良質のエンターテインメントとして成立させたいという」

「たとえば、震災から帰ってきた時、現地のことを伝えたいと思うんだけど話せば話すほど人が引いていくのを、ものすごく痛感したんです。『ほんとはこうなっているんだよ』っていうことを話すと、みんな『へえ〜、聞きたい聞きたい』って言いながらも、心を遠ざけていくんですよ。それは自分にとってマイナスな情報になるから。なんかやらなきゃいけないと思うと大変だぞっていう目にみんな変わるの。それを見ちゃったんで、ヒステリックに言ったら人には受け入れられないっていうことがわかったんだよね」(「ROCKIN'ON JAPAN」13年6月号/ロッキング・オン)



 しかし、このように反原発のメッセージを訴え続けていれば、当然、原発スポンサー企業との間で軋轢が起こる。実際、こんな体験までしているようだ。



「リスキーだし、マイナス面も増えますよ。実際にコマーシャルの話が来る時に『原発発言、しますか?』みたいに訊くところもあるわけで。『しますよ』と言うと、その話はもうそこでなかったりするしね」(「bridge」13年3月号)



 ただ、本稿で引いた発言を見れば分かる通り、彼は諸々の圧力で発言をつぶしてこようとする勢力に屈することは一切なかった。



「金や権力で人を黙らせようとするものに対しては、自分は絶対に「はい」とは言えません」(「週刊朝日」14年9月19日号/朝日新聞出版)



 しかし、このような社会的発言をしていると必ず襲ってくるのが、「何の知識もない芸能人は黙っていろ」といった攻撃だ。そういった「炎上」に対しても、彼はこう言い切っている。



「ミュージシャンであれ芸能人であれ、政治的な発言はしないほうがいいという風潮には疑問を感じています。ひとりのこの国の民として、己が生きのびるために必要な権利を主張しないのは、おかしい」(前出「週刊朝日」)

「一時期、文化人とかエンターテイナーが政治や経済について語ることはかっこ悪いみたいな風潮が日本にもあったと思うんだけれども、今はそんなこと言ってる人がかっこ悪いと思ってますよ。どんどん言うべきじゃないのっていう」(前出「bridge」13年3月号)



 彼の言う通りである。どんな圧力にも負けず、自分が信じるメッセージを発信し続ける吉川晃司を当サイトは断固支持する。

(新田 樹)


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