子連れ再婚も増えている今、再婚相手に子どもを虐待されないかと不安を覚える女性もまた多くなっている。そんなことにならないためには、やはり相手を「男として」ではなく、「人としてきちんと評価する目」が大事だと語る女性がいる。
■恋に目がくらまないように
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「私、離婚してシングルマザーになってすぐ、同い年の男と恋に落ちたことがあるんですよ」
リョウコさん(41歳)がその恋に落ちたのは33歳のとき。2歳の子を連れて離婚して半年後のことだった。
「子どもが寝たあとに彼が家に来たり、私が出かけていったり。最初のうちは楽しかったんだけど、あるとき彼がうちに来ていて、私がちょっと近くのコンビニに行ったことがあるんです。帰宅したら子どもがギャーギャー泣いていて、彼は知らん顔してテレビを観ている。どうしたのと言ったら、さあって。彼が帰ってから気になって子どもの身体を見たら、太ももにアザがあったんですよね。彼がつねったか叩いたかしたんじゃないでしょうか」
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それ以来、彼のことはまったく信頼できなくなった。別れたいと言ったら逆上され、怖くなった彼女は子どもを連れてシェルターに隠れていたこともある。
「私がうかつなことをすると、この子の命が危ないんだと肝に銘じたできごとでした。もう独身時代とは違うとも思った。心を入れ替えていかなければ、と」
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もう恋はするまいとさえ思ったが、シングルマザーとて人間だ。人を好きになることはある。
■いやというほど話し合って
子どもを保育園に預けて、とあるチェーン店のカフェでひたすら働いた。彼女のアイデアや誠意ある接客が評価されて2年後には店長に。そのころせっせと店に通ってくる男性がいた。
「近くの会社に勤めている同い年の男性でした。少しずつ話すようになって、食事に誘われたんですが、子どもがいるのでと断りました。すると彼は、『実は僕もシングルファーザーです』って。そこから一気に距離が縮まりましたね」
時間をやりくりしてお互いの家で会った。最初から子どもぐるみのつきあいだ。リョウコさんの娘は当時4歳。父親を知らない娘は、なかなか彼に懐かなかった。それでも彼はかわいがってくれた。
「彼のほうも女の子。当時6歳でした。やはり2歳のころに離婚しているので、彼女は母親を知らない。ずっと彼の実母が同居してくれていたそうですが、そのころは体調を崩して入院してらして。認知症も発症していた。彼の娘は寂しかったんでしょうね、わりとすぐ懐いてくれました」
無理をせず、少しずつ距離を縮めた。母子で彼の家に泊まりに行くこともあった。それでもリョウコさんは安易に結婚はするまいと決めていた。
「これなら一緒にやっていけるんじゃないかと思ったのは3年後です。それでも彼とはいろいろなことを話し合い続けました。もう話し合っているより一緒に住んでみよう、それから考えようと思えるようになったのは、さらにそこから1年後。今から2年前、ようやく結婚した。
「とりあえずはうまくいっています。彼と私は、もうさんざん話し合ったから、いろいろなことに鷹揚でいようと思っている。彼の娘は最初は遠慮がちでしたが、今はめちゃくちゃ甘えてくれますね。とにかく4人で仲良くやっていくこと、不満があったらすぐ言うこと、我慢しないことをいつも言っています」
誰かの我慢の上に幸せは成り立たない。リョウコさんはもっと幸せになるために、家族の間の風通しをよくしようと考えている。そのためにも意見が同じでも違っていても、夫婦それぞれを尊重しあうことが基本だという。
「人として信頼できるかどうか。そこが見極めのポイントだったような気がします」