小田和正、井上陽水、松任谷由実……70年代に一世風靡し、現在も最前線で活躍するSSWの共通点

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2019年06月16日 10:01  リアルサウンド

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小田和正『この道を / 会いに行く / 坂道を上って / 小さな風景』

 昨年から今年5月にかけて『松任谷由実 TIME MACHINE TOUR Traveling through 45years』を全国40公演で開催した松任谷由実。昨年の48公演のツアーに続き、現在も全国8会場16公演の全国ツアー『明治安田生命Presents Kazumasa Oda Tour 2019「ENCORE!! ENCORE!!」』を開催中の小田和正。現在24公演のツアー『50周年記念ライブツアー『光陰矢の如し』〜少年老い易く 学成り難し〜』を開催中の井上陽水。時代と共に流行がめまぐるしく変わる音楽シーンにおいて、1970年代に一世を風靡し、長きに渡って最前線で活躍する3名の共通点とは?


(関連:小田和正のアンコールはいつまでも続いていく 『ENCORE!! ENCORE!!』横浜アリーナ公演レポ


小田和正『この道を / 会いに行く / 坂道を上って / 小さな風景』
 1960年代の日本のヒット曲は、演歌やアイドルを含む歌謡曲と呼ばれるものが中心だった。1970年代に入り、そこに加わっていったのがフォークソングやロック、そしてニューミュージック。そのニューミュージックの代表格とされるのが、井上陽水や小田和正、ユーミンらだ。ニューミュージックの定義についてはいろいろあるが、それまでの歌謡曲とは違った洋楽からの影響を受けた音楽で、単なるフォークやロックでもないという新鮮な驚きが、ニューミュージックという言葉には込められていたように思う。その新鮮さとは、誰にも似ていないオリジナリティを持っていたということ。


 たとえば小田和正は、ロックバンドのスタイルでフォークをベースにしたバンド、オフコースを結成した。キーボードをフィーチャーしたダイナミックなサウンドに、透明感のある小田の歌声がマッチ。美しい歌声とジャンルにくくられないサウンド、繊細な情景描写による歌詞は、ソロになっても変わらぬ輝きを放っている。


 アンドレ・カンドレとしてデビューした井上陽水は、アコースティックギター1本で歌うというイメージだったフォークソングに、ロックやファンクなど多彩な音楽ジャンルを融合させ、フォークの可能性をいち早く指し示した。当初からの持ち味であったシュールでシニカルな視点は、他の追随を許さないほどのオリジナリティを持っている。


 「ユーミン」こと松任谷由実は、アメリカンポップスやシンガーソングライターからの影響を基に、ジャズやボサノバ、フレンチポップなどのエッセンスを加えたサウンドで、シーンに衝撃を与えた。巧みな情景描写で表現された歌詞には、常に時代の最先端を取り入れていて、様々に表現された恋愛模様は、今も新鮮に響く。


 この三者には、誰にも似ていない個性的な歌声の持ち主であることも共通点として上げられる。曲はマネをして作ることが出来たとしても、声までは似せることはそうそう出来ない。声も、3名を唯一無二の存在たらしめている所以だろう。


令和でも求められる唯一無二の存在
 今の20〜30代のアーティストは、1990年代以降のJ-POPから影響を受けている人が少なくない。そのJ-POPの時代を作った40〜50代は、井上陽水や小田和正、ユーミンらニューミュージックの世代から影響を受けた部分が大なり小なりあるはずだ。では、そのニューミュージックのアーティストは、何から影響を受けていたのか? それはThe BeatlesやThe Rolling Stones以降のProcol Harum、キャロル・キング、Carpenters、ジョニ・ミッチェルといった洋楽のシンガーソングライターやバンドだった。日本人から影響を受けるのではなく、洋楽からダイレクトに影響を受け、それを独自の感性で咀嚼して表現する。教科書もなく独学で試行錯誤したことによって、オリジナリティが育まれた。つまり現在のJ-POPのオリジネイターとも言えるのではないだろうか。


 そんな1970年代を知らない10〜30代のリスナーにとっては、未知である1970年代に触れることが出来るのが、井上陽水や小田和正、ユーミンなどの音楽やライブだ。彼らのすごいところは、今も自身の感性をアップデートしながら作品を作り続け、最前線で活躍しているところ。たいていの60〜70歳代のアーティストは、とうに引退しているか、活動をしていてもリリースペースは遅く、新たなヒットを生むことは難しくなる。流れの早い音楽シーンでは、一時でも気を緩めれば、流行からはあっと言う間に取り残されてしまう。最前線に居続けるためには、インフルエンサーとして何かを発信し続ける努力も必要で、そのモチベーションとなるものが求められる。


 令和という新しい時代を迎え、昭和や平成の時代を懐かしむと同時に、その時代の音楽を再評価する動きもあり、10代や20代のリスナーが今新鮮さを感じている一つとして挙げられるのが、1970年代のニューミュージックだ。J-POPの原点とも呼べる、音楽の独創性と個性的な歌声が、令和の時代も変わらず唯一無二のものとして求められている。


■榑林史章
「THE BEST☆HIT」の編集を経て音楽ライターに。オールジャンルに対応し、これまでにインタビューした本数は、延べ4,000本以上。日本工学院専門学校ミュージックカレッジで講師も務めている。


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