アンジュルム 和田彩花は“アイドルの可能性”を広げてきた 卒業機にグループ牽引した活動を振り返る

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2019年06月18日 07:01  リアルサウンド

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アンジュルム『輪廻転生~ANGERME Past, Present & Future~』(通常盤)

 6月18日、日本武道館で行われるツアー最終公演にて、アンジュルムのリーダー兼ハロー!プロジェクト全体のリーダーを務めてきた和田彩花がグループを卒業する。和田彩花自身はこれからも歌って踊る一人のアイドルとして活動を続けていきたいと今後の展望を語っているが、ひとまずグループアイドルとしての活動には区切りをつけることになる。


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 和田彩花は、2004年に行われた『ハロプロ エッグ オーディション2004』に合格し、ハロプロエッグ(現在でいうハロプロ研修生)のメンバーとしてハロー!プロジェクトに加入。エッグ内ユニットへの参加などの下積み時代を経て、2009年にスマイレージ(現在のアンジュルム)を結成、翌2010年にシングル『夢見る15歳』でメジャーデビューを果たした。スマイレージ/アンジュルムとして今年で10年、エッグ時代から数えると15年にもなるキャリアを重ねてきた彼女は、ハロー!プロジェクトの長い歴史の中でも指折りの功労者だと言っていい。


 「アイドルの解釈の幅を広げたい」。アンジュルム及びハロー!プロジェクト卒業後の展望について、彼女は事あるごとにそう答えている(参考:HOMINIS)。その言葉は“若さ”がアイドルであることの前提条件になりがちな日本の音楽シーンに対するアンチテーゼでもあり、自分らしくあることとアイドルでいることは両立できるはずだ、という強い意志の表れでもあるだろう。これまでの活動を振り返ってみても、彼女は既存のアイドル像に収まることのない自分らしさを表現しながら、アンジュルムを「アイドル界最強」とも噂されるほどのグループへと引っ張り上げてきた。


 もともと、結成当初のスマイレージは若さとキュートさを前面に打ち出した、ハロー!プロジェクト屈指のアイドルらしいアイドルグループだった。和田彩花も当時は天然な発言や行動が目立つ、気まぐれな美少女といった印象が強かった。ミニスカートをキービジュアルにして、シングル曲「ショートカット」の発売に合わせてメンバー全員髪型をショートカットにさせられるなど、メンバーに負荷をかけることで物語性を作り出すような演出も度々行われていた。良い面も悪い面も含めて、スマイレージは“ザ・アイドル”だったと言えるだろう。


 ただ、スマイレージ時代の後半から、グループも和田彩花自身も目を見張るような成長を見せるようになった。初期メンバーの脱退や二期生・三期生の加入といったグループの変遷によってリーダーとしての自覚が芽生えたことも大きな要因だろう。一個人としては、アイドル活動と同じくらいに彼女のライフワークとなっている美術との出会いも大きかったに違いない。天真爛漫な立ち振る舞いはそのままに、時に母性を感じさせるほどの包容力でメンバーの個性を一つにまとめるリーダーの大役をこなしつつ、美術専攻で大学に進学。アイドルと美術研究を両立することで、彼女はアイドル活動の可能性を十分に広げてきたのだ。


 アイドルだからといって諦めることなく、自分のやりたいことをとことんやり抜く。そんな彼女の姿勢がアンジュルム全体に与えている影響も大きいだろう。アンジュルムが「最強」と言われる理由は、キャリアも見た目も性格も趣味・嗜好もバラバラなメンバーが遊びの場では全員で仲良くはしゃぎ、ステージに立つと一丸となって圧巻のパフォーマンスを披露する、多様な個性が集まった団結力にある。それぞれが自分らしさを活かせる土壌を作りつつも、ここぞという場では一つになって圧倒的な力を発揮することが出来るのも、和田彩花という一つの大きな柱があったからこそに違いない。


 アンジュルムは、特異なコンセプトや奇抜なパフォーマンスに頼ることなく、それぞれのメンバーが個性を発揮することで既成概念を超えていく。それは多様性の許容が当たり前になりつつある今、とても現代的な在り方のようにも思える。そんなアンジュルムを形作った最大の立役者、和田彩花は卒業に際して何を見せてくれるのか。卒業後にどのような未来を見据えているのか。また、残されたメンバーはどのように彼女の残した意志を受け継いでいくのか。6月18日をもって別の道を歩み始める和田彩花とアンジュルム。それぞれのやり方で、アイドルの可能性を広げていってほしい。(青山晃大)


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