すっきりしない予選となってしまった。しかも、原因は違えど第2戦に続いての、ほとんどのドライバーがアタックができないままの予選結果だけに、消化不良感は大きい。今回、スーパーフォーミュラ第3戦SUGOの予選はQ3セッションで2台がSPふたつめでコースアウトし、クラッシュバリアがグラベルに散乱したところでイエローフラッグから赤旗となり、ほとんどのドライバーアタックできてない状況にも関わらずセッションはそのまま終了となった。
セッションは残り約1分30秒残っており、当然、セッションは延長されて最後の1アタック勝負となる……と思われたが、Q3セッション開始から5分30秒過ぎの段階でのあまりに早いセッション終了の決定に、ドライバーやチーム、そして多くのメディアやファンが驚く形となった。
そして当然、早々に終了を決定しなければならなかった理由があるはずだが、その説明も公式的なものはこの原稿をまとめている18時40分現在もなされておらず、サーキットを訪れたファン、そしてテレビやインターネットで観戦していたファンにとっては、もやもやが溜まったままサーキット、そしてモニター画面から去ったことだろう。
ポールポジション会見後、非公式的に関係者から赤旗終了の理由を聞くことができたが、その理由はクラッシュによる破損状況から修復にはかなりの時間が掛かってしまうことから中止との判断に至ったとのこと。安全性を確保できないという理由のため、14時22分にスーパーフォーミュラの予選Q3は終了となった。
しかしその後、15時10分からの全日本F3第9戦はほぼオンタイムの15時13分にレーススタート。結果として1時間もかからずにクラッシュの修復が完了できたことになる。その後のTCR決勝も無事に行われている。
以上の経緯から、今回の予選で不満の残るポイントをまとめると、以下のような項目になるのではないか。
1)セッション中止の判断は本当に正しかったのか?
2)セッション中止を決めるタイミングに、ファンや関係者は納得しているのか?
3)セッション中止の説明がファンに直接ないのはなぜか?
1)については、結果として1時間以内に修復ができたわけだが、2台クラッシュした状況から正確に修復時間を予測し、安全性を判断するのは難しく、一方的に批判することはできない。競技長と審査委員会の判断を尊重するべきだろう。2)については、終了の決定があまりに早かったことが問題となっており、一番の問題は3)の終了の理由説明がまったく行われない点だ。これはスーパーフォーミュラの運営に関わるJRP(日本レースプロモーション)、主催者(サーキット)、競技長とJAF派遣の審査委員会の3者の権限が複雑なことが相まって、なかなか公式に説明できない状況にある。
スーパーフォーミュラのセッション中の判定については、JRPがレースディレクターを派遣しているが、主催者側(今回はSUGOサーキット)が決める競技長に決定権があり、その決定を審査委員会が承認するという形を取っている。JRPはファンやメディアとの窓口の役割を担っているが、残念ながらレースの判定/裁定についての決定権がないため、説明できる権利がないというのが実情だ。
たとえば今回、仮に「アクシデント発生から30分、修復を試みたが、まだまだ時間が掛かりそうで安全性の保証が確保できないため、本日のメインイベントであるスーパーフォーミュラの予選のQ3をやむを得ず中止とする」という主旨の説明が主催者側、JRP、または競技長からなされていたら、ファンもメディアも、ここまでもやもやすることもなかったのではないか。
そこで思い出してほしいのは、今年のスーパーGT開幕戦での岡山戦だ。日曜日の決勝レースは悪天候により、クラッシュが続出。天候の回復を待ったが雨は激しくなりはじめ、スーパーGTのプロモーターであるGTアソシエイションの坂東正明代表が雨のなかファンの前に立ち、マイクを持って会場のファンにいの一番に中止の説明を行った。その判断、そして説明についてチームやドライバー、ファンやメディアからは不満の声を聞くことはなかった。
今回の予選でポールポジションを獲得した山本尚貴(DOCOMO TEAM DANDELION RACING)が、予選後の会見で以下のように話した。
「審査委員会の決定は尊重すべきだとは思うんですけど、いずれにしても、いいマシン、いいドライバーが集まってレベルの高い戦いをしているのに、このような終わり方になって、サーキットに来てくれたお客さまがレースを見に来てくれなくなってしまうかもしれない。そうならない状況をこれからみんなで作っていきたい」
毎年のように繰り返されるスーパーフォーミュラの判定/裁定に関する疑問と、ファンへの説明よりも責任逃れを優先しているように感じてしまう複雑な運営スタイル。せっかくSF19という世界に誇る新型マシンを投入して、世界屈指のドライバーたちが集まっているだけに、ファンが納得できる運営体制になることを切に願う。
※その後、JRPがレースディレクター名義で「予選Q3中、SPコーナーで2台連続してのクラッシュが発生し、停止した2台の車両撤去作業、ならびにタイヤバリア等のコース安全設備の補修に時間を要するという状況に加え、再開後の天候の悪化も懸念されたため、競技運営の安全性を考慮し、大会競技長と競技の上、審査委員会の承認を得て、予選Q3を再開せず終了する事としました」とのリリースを発表。これまで判断の理由について、JRPがリリースを出したことはなく、予選終了からかなり時間が経っての発表ではあるが、スーパーフォーミュラにとって画期的な一歩が踏み出されたことを追記します。