『スマホ2』は白石麻衣の大きな転換点に? 中田秀夫監督が引き出した“奥にある強さ”

4

2020年02月21日 06:21  リアルサウンド

  • チェックする
  • つぶやく
  • 日記を書く

リアルサウンド

『スマホを落としただけなのに 囚われの殺人鬼』(c)2020映画「スマホを落としただけなのに2」製作委員会

 今年に入って早々に乃木坂46からの卒業を発表した白石麻衣。3月に発売されるシングルをもって卒業するとのことで、今後の活動については女優業はもちろん、先日出演した番組では作詞などの音楽活動への意欲も示していた。そうした中で、白石がヒロインを務める映画『スマホを落としただけなのに 囚われの殺人鬼』(以下、『スマホ2』)が2月21日より公開される。本作の完成披露試写会の舞台挨拶で白石は、「撮り終わったときに卒業につながるものがあった」と明かしており、アイドルから女優への大きな転機となる作品になったようだ。


参考:【ほか場面写真多数】谷原章介を無視する白石


 この『スマホを落としただけなのに』は、一昨年公開され大きな話題を集めた作品の続編だ。前作では田中圭演じる富田がタクシーでスマホを置き忘れてしまったことがきっかけで、彼の恋人である北川景子演じる稲葉麻美が何者かに狙われていくという物語が展開。そんな2人に助言をするセキュリティ会社の青年・浦野(成田凌)が実はとんでもないサイコキラーだったという結末に至ったわけだが、今回はその浦野を捕まえた刑事の加賀谷(千葉雄大)を主人公にした新たなストーリーが展開していく。


 浦野の起こした事件の現場から新たな死体が発見され、加賀谷は収監中の浦野のもとを訪れ、そこで彼にネット犯罪のノウハウを教えたというブラックハッカーのMという存在を知らされる。そしてMを追い詰めるために2人が手を組むという、なんだか『羊たちの沈黙』のレクターとクラリスを想起させる物語である。そんな中で白石が演じているのは、加賀谷の恋人である松田美乃里という女性。彼女がカフェでフリーWi-Fiを繋いだことから謎の男に情報を抜き取られ窮地に陥る様子が、Mを追う物語と並行して描かれていくのだ。


 白石のこれまでの女優としてのキャリアを振り返ってみると、乃木坂46のメンバーらと共演した『初森ベマーズ』(テレビ東京系)や『あさひなぐ』では、どちらも西野七瀬演じる主人公と対になるポジションとして、グループ内での立ち位置と同様、ツートップとしての存在感を見せつけていた。その一方で、単独での出演作では映画『闇金ウシジマくん Part3』での夢を追う若手タレント役から、『やれたかも委員会』(MBS・TBS)でのドライなキャラクター、『俺のスカート、どこ行った?』(日本テレビ系)でのやさぐれた教師役などと、比較的インパクトの強さが目立つもののジャンルを問わず幅広い役柄をこなしている印象を受ける。


 今回の美乃里というキャラクターは、現代的なネット社会の闇に飲み込まれていくという点において一昨年主演を務めた『世にも奇妙な物語』(フジテレビ系)の一編『フォロワー』に通じるものがあるだろう。同作ではSNS上で虚栄を張りつづける主人公が、自分を支持してくれるフォロワーからのネットストーキングによって追い詰められていく姿が描かれていた。もっとも、同作では孤独な戦いを強いられていくのに対して、今回の『スマホ2』では加賀谷という存在が近くにあり、彼に守られるだけでなく時には自ら囮になって力を貸すことも厭わない強さを備えた役柄として描かれており、大きな違いが見受けられる。短編と長編の違いはあれども、華やかな見た目だけに留まらずに、その奥にある強さを引き立たせるというのは、『クロユリ団地』や『劇場霊』などでアイドル女優を魅力的に描き出した中田秀夫監督ならではといえよう。


 すでに乃木坂46を卒業しているメンバーでは、西野を筆頭に『パンとバスと2度目のハツコイ』や『まだ結婚できない男』(カンテレ・フジテレビ系)などのロマコメ作品を中心に存在感を示す深川麻衣に、舞台劇からコメディ、シリアスまで幅広くこなしている若月佑美ら、いずれも女優としてのキャリアを順調に伸ばしているわけだが、白石も彼女たちに追随するだけの逸材なのはいうまでもない。前述の完成披露の舞台挨拶では「これからもたくさん演技をしていきたい」という女優業への強い意気込みも語っていた白石。名前の後ろに“(乃木坂46)”と付かなくなってから、白石麻衣はどんな女優へと成長していくのか大いに楽しみである。 (文=久保田和馬)


このニュースに関するつぶやき

ニュース設定