『テセウスの船』白鳥玉季、大人と張れる演技に絶賛! “上手い子役”というよりも“女優”の風格

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2020年03月01日 08:01  リアルサウンド

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白鳥玉季『テセウスの船』(c)TBS

 東元俊哉の同名漫画を原作とする、竹内涼真主演ドラマ『テセウスの船』(TBS系)。主人公・田村心(竹内涼真)が31年前にタイムスリップし、警察官の父・佐野文吾(鈴木亮平)が逮捕された「音臼小無差別殺人事件」を止めるべく奮闘する同作。その中で、際立たって透明感ある魅力を放っているのが、心の姉・鈴の少女時代を演じている白鳥玉季だ。


 SNS上にも「テセウス見てて、白鳥玉季ちゃんが気になって。まだ小4だって! スゴイ」「テセウスの船の子役の女の子白鳥玉季ちゃん演技うまいよね」「テセウスの子役の白鳥玉季ちゃん可愛すぎてずっと画像見てる、、声も演技も最高だよ」などの称賛のつぶやきが多数見られる。


 白鳥玉季が演じているのは、主人公・心がまだ母親のおなかの中にいる31年前の世界の姉・鈴である。当然ながら自分の弟と知るわけもなく、タイムスリップにより、村に突然現れた何者かわからない心を、最初に受け入れたのは、他でもない姉・鈴(白鳥玉季)だった。音臼小学校の臨時教員なった心が、ウサギの変死などを巡って児童たちに反感を持たれたり、殺人犯と疑われたりしたときも、親友と喧嘩してまで庇い続けてくれるのが、やはり鈴だった。


 子猫のような雰囲気もある、華奢で小さな体に、大きく印象的な強い目と、えくぼ。愛らしさ・明るさの中には、秘められた真っすぐで強い意志が感じられる。その演技にも、漂う空気にも、もはや「上手い子役」というよりも「女優」の風格がある。


 だからこそ、まだ小4ながら、彼女が近年与えられるのは、複雑な事情を抱える少女の役柄が多い。まず多くの人が思い出すのは、黒木華主演の『凪のお暇』(TBS系)で、凪が住むアパートの隣の部屋に住んでいた鍵っ子少女・うららだろう。


【写真】『凪のお暇』出演時の白鳥玉季


 凪に対し、最初は警戒した様子も見せていたが、天然パーマの髪を触り、「うわぁ! やっぱりふわふわ!」となついてからは、トシの差のある「良き友人」になっていく。凪自身が昔から強いコンプレックスを抱いてきた髪を魅力的だと教えてくれたのも、モラハラの元彼・慎二に「凪ちゃんをいじめないで!」と体当たりして守ろうとしてくれたのも、うららだった。


 そんな強く大人びた彼女が、クラスメートの女子たちの間では自分を偽り、「空気」を読んで、みんなに合わせて生きていた。その窮屈そうな姿には、幼くして「女子の世界の面倒臭さ」の縮図を見た気がしたものだ。


 また、田中圭主演の映画『mellow』では、田中演じる独身・オシャレな花屋の店主・夏目の姪っ子・さほを演じている。さほは、転校後、小学校に行けない日がたまにあって、そんなときにやってくるのが、夏目のところだった。自身の悩みなど、多くは語らず、おじの周りの恋模様などを興味津々で眺めている、繊細で、ちょっと大人びた女の子だ。


 『凪のお暇』と『テセウスの船』『mellow』の役柄で共通しているのは、周囲の子より精神年齢が高かったり、純粋で優しかったりするために、「女子の世界」の同調圧力に馴染めず、ときどき疲弊したり、かと思えば妙に達観していたりすること。そして、そんな人間関係のわずらわしさを知る大人びた感覚を持つ一方で、子どもらしい無邪気さや素直さ、自身の中に信念や真っすぐな思いを持っていること。


 こうした「生きづらさ」に対する疲れや諦念、気丈さや芯の強さを同時に表現するのは、近年のドラマや映画において、もっぱら30代主演女優が求められがちなことだと思う。役柄が背負う、求められる要素がすでに「天才子役」というよりも「女優」なのだ。


 ところで、昔に比べ、今は非常にリアルな演技をする達者な子役が多数いる時代。その理由について、以前、週刊誌で赤ちゃん&子役タレントの連載をしたとき、子役事務所の方からこんな話を聞いたことがある。


「今の子役のレッスンでは、国語の読解問題のように、台本を読んで主人公の気持ちを考えることや、『感情の作り方』を学びます。たとえば、泣く演技では、『どういうときに人は悲しいか』と考えさせ、『自分はどんなとき悲しくなるか』を言わせてみる。答えはたいてい『宝物がなくなったとき』とか『ペットが死んだとき』なんですけどね」


 まずは自分自身の感情と向き合い、感情の作り方・表現の仕方を理解する作業をレッスンの下積みとして行うため、今の子役たちは「感情で演技をする」。だからリアルなのだという。


 そうした演技力の高い多数の子役たちと比較しても、白鳥玉季が特異なのは、「泣きの演技で見せる」という「天才子役」の域にいないこと。泣きたいときに笑顔を見せたり、悲しいときに気丈な顔を見せたり、ときには何度目の人生かと思わせるようなドキッとする大人びた顔を見せる。これで小4というのだから、何度もタイムスリップを繰り返しているのではないかと思えてしまうほどだ。


 『テセウスの船』では、再び心が事件の起こった31年前の世界に戻る展開が描かれ始めた。視聴者の願う声も多かった、白鳥玉季の再登場を果たす。今後の展開がますます楽しみだ。


(田幸和歌子)


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