再ブームの兆し? 「スーパーカー消しゴム」が復活した理由

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2022年08月24日 11:31  マイナビニュース

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画像提供:マイナビニュース
1970年代に子どもだった人たちにはおなじみの「スーパーカー消しゴム」が今、再び注目を集めている。ここ最近は自動車関連のイベントや昭和にスポットを当てた催しでよく見かけるが、懐かしのおもちゃ(文具?)はなぜ復活したのか。仕掛け人に話を聞いてきた。


○売れてる? 「超精密スーパーカー消しゴム」とは



1970年代後半、日本で巻き起こったスーパーカーブーム。フェラーリやランボルギーニなどの高級スポーツカーに熱狂したのは主に、免許を持たない子供たちだった。彼らは憧れのアイドルやヒーローを見るように、スーパーカーに夢中になった。しかし、スーパーカーの実物を目にすることができるのは限られた機会のみ。そこで、子供たちをターゲットとした多種多様なスーパーカーグッズが生まれ、ブームとなった。中でも、定番アイテムとして広く親しまれたのが「スーパーカー消しゴム」だ。



あれから40年以上の時を経た今、スーパーカー消しゴムが復活し、話題となっている。なぜスーパーカー消しゴムはよみがえったのか。どんな進化を遂げているのか。販売元のGGF-Tを取材した。


GGF-Tが販売している「超精密スーパーカー消しゴム」はここのところ、よく売れているらしい。ラインアップの第1弾となったのは、イタリアのスーパーカーブランド「ランボルギーニ」。1970年代〜80年代にランボルギーニが送り出した「イオタ」「ミウラP400SV」「ウラッコP250S」「カウンタックLP400S」「カウンタック25thアニバーサリー」が商品化されている。


当時のスーパーカー消しゴムと比較してみると、まずサイズが大きくて立派だ。消しゴムでありながら驚くほどリアルな作りで、ミニカーファンにも刺さるのではないだろうか。箱の中には実車イラストとスペックが記載されたカードも付属。コレクター心を盛り上げてくれる。


GGF-Tではリアルな作りを実現するため、実車を使った3次元測定を行い、基本となるデータを作成。それを基にプロのモデラーが、ミニカーにふさわしいスタイルにリデザインしている。高い質感へのこだわりには、消しゴムに触れることで、スーパーカーの特徴的なスタイルを子供たちに感じて欲しいという願いが込められているそうだ。



もったいなくて使うことはできないが、消しゴムとしての性能もしっかりと備えているという超精密スーパーカー消しゴム。文具ファンには「おもしろ消しゴム」で有名なイワコーに製造を依頼するなど、品質へのこだわりは相当なものだ。ラインアップには現状、ランボルギーニに加え、同じくイタリアのスーパーカーブランドである「マセラティ」と「デ・トマソ」が加わっている。往年のスーパーカーブームを彩ったクルマを中心に商品化しているそうだ。


ところで、なぜスーパーカー「消しゴム」なのか。1970年代に流行した商品は消しゴムとしては使えない「おもちゃ」だったのだが、学校への持ち込みを可能にするため、建前として文具を装っていたそうだ。実車を操ることができない子供たちはその想いをスーパーカー消しゴムにぶつけ、三菱鉛筆の「BOXYボールペン」を用いた「机上レース」に興じた。

GGF-Tではスーパーカー消しゴムを使った遊びの再現にも力を入れている。超精密スーパーカー消しゴムには、滑りを良くする役目も果たす樹脂製の展示台が付属。消しゴムのサイズアップに合わせ、バネを強化した専用ボールペンまで製作する凝りようだ。


超精密スーパーカー消しゴムは1個550円、専用ボールペンは1,650円と当時に比べれば高価だが、こだわりの開発と少量生産のため、ほとんど利益はないという。それでも復活に取り組んだのはなぜなのか。GGF-T代表取締役社長の赤間保さんに理由を聞いた。

○スーパーカー消しゴム復刻に取り組むスーパーカーオーナー



赤間さんのもうひとつの顔はIT企業の代表だ。クルマ好きではあったものの、起業から会社を軌道に乗せるまでは仕事に追われる日々だったという。初めてのスーパーカーを手にしたのは40代になってから。新車のフェラーリだったそうだが、なぜか感動は薄かった。



赤間さんのスーパーカー熱を呼び起こしたのは、スーパーカーブームの主役の1台だったランボルギーニ「カウンタック」との出会いだった。日本中が夢中になった未来的で宇宙船のようなスタイル、乗り手を選ぶ癖のある運転方法などが、あの頃の気持ちをよみがえらせた。カウンタックを手にしたことでスーパーカー好きな仲間たちとの交流も生まれ、売りに出された懐かしのスーパーカー情報も集まるように。その縁で赤間さんは、カウンタック以外にもスーパーカーを所有するようになる。


そんな愛車たちと過ごすうちに、懐かしのスーパーカーの魅力を現代の子供たちにも伝えたいと考えるようになったという赤間さん。そこで、クルマの展示イベントなどを行う会社「GGF-T」を立ち上げた。



赤間さんは展示イベントを行っていく過程で、スーパーカーに興味を持ってくれた子供たちに何かスーパーカーにちなんだプレゼントを渡したいと考えるようになる。そこで思い浮かんだのが、自らの少年時代にコレクションや机上レースで夢中になったスーパーカー消しゴムだったというわけだ。



かつてのスーパーカー消しゴムは権利関係など一切考慮せず、小さな会社が無断で製作したものだったというが、現代はそういうわけにもいかない。メーカーとの交渉や消しゴムの造形など、復刻にはさまざまな苦労があったそうだ。そうした努力が実り、クルマ好きも納得のリアルなスーパーカー消しゴムが完成した。


何度もいうようだが、超精密スーパーカー消しゴムはビジネスとしては儲からない。しかし赤間さんは、「ビジネスとして成立しないからこそライバルの参入もなく、自分が理想とする消しゴムを作ることができる。その自由さこそ強み」と笑う。儲けるというより、魅力あふれる懐かしのスーパーカーたちを次世代に継承することが目的なのだ。そのためにも、子供たちでも手に取ることのできる身近なアイテムである超精密スーパーカー消しゴムが、未来のオーナーとスーパーカーの最初の接点になってほしいと考えているという。



赤間さんは今後も超精密スーパーカー消しゴムのラインアップを拡充し、懐かしの名車たちの魅力を多くの子供たちに伝えていく考えだ。レトロブームの影響もあり、取り扱いたいという店舗も増えているというから、街角で超精密スーパーカー消しゴムとめぐり合う機会もあるだろう。その際は、ぜひ完成度の高さに注目してほしいと思うが、ひとつ手に入れてしまうと、あなたのコレクター魂に火がついてしまうかもしれない。復活のスーパーカー消しゴムは、そんな大人も納得のアイテムに進化を遂げている。



大音安弘 おおとやすひろ 1980年生まれ。埼玉県出身。クルマ好きが高じて、エンジニアから自動車雑誌編集者に。現在はフリーランスの自動車ライターとして、自動車雑誌やWEBを中心に執筆を行う。主な活動媒体に『webCG』『ベストカーWEB』『オートカージャパン』『日経スタイル』『グーマガジン』『モーターファン.jp』など。歴代の愛車は全てMT車という大のMT好き。 この著者の記事一覧はこちら(大音安弘)

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