ソロアイドルの時代は「はっきり言って来ない」レコード会社OBが語るアイドルの難しさ

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2023年04月09日 10:00  週刊女性PRIME

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(左から)小泉今日子、山口百恵、中森明菜

 ソロアイドルの全盛期が終わってから約30年以上が過ぎた。山口百恵さん(63)や小泉今日子(56)、中森明菜(56)ら大物ソロアイドルを輩出した日本テレビ系『スター誕生!』(1971年〜83年)の終了からは丸40年になる。

ソロアイドルがなかなか誕生しないのはなぜか

 大手レコード会社と大手芸能プロダクションが合同で行っていたソロアイドルのオーディションも1990年代半ばに消えた。アイドルと言えばグループを指す時代。どうしてなのだろう。

 複数のソロアイドルを育てたレコード会社OBが解説する。

「1985年のおニャン子クラブ結成が大きかった。ソロでは目立ちにくくなってしまった。また、グループアイドルの大半が使う歌唱法のユニゾン(メロディーを同じ音程で重ねて歌う)は技術的なレベルは低いが、その歌声はソロより迫力がある」(レコード会社OB)

 確かにソロアイドルのデビューラッシュはおニャン子の登場した1980年代半ばで終わった。明菜、キョンキョン、石川秀美(56)、堀ちえみ(56)、早見優(56)たちが1982年に一斉にデビューした後、1985年に南野陽子(55)中山美穂(53) 浅香唯(53)らがデビューしたのがピークだった。

 島崎和歌子(50)がソロアイドルとしては恵まれなかったのはよく知られているが、やむを得なかった。デビューした1989年の時点でソロアイドルの時代が終わっていた。同じ年、永作博美(52)が所属していた3人組アイドルグループ・ribbonがデビューしている。

 そもそもアイドルとは何か。いつから日本に存在するのか。まず、日本のアイドル第1号は諸説あるが、正しくは1971年にデビューした南沙織さん(68)にほかならない。アイドルという言葉を日本に持ちこんだ元CBS・ソニーの敏腕プロデューサーの故・酒井政利さんが、南さんをデビューさせるにあたって、そう呼ぶことにしたからだ。

 アイドルの意味は「偶像」。生前の酒井さんによると、南さんの歌が抜群にうまく、神秘的な美しさを持っていたから、そう呼ぶことを決めた。世間から手が届かない存在という意味が込められていた。

 以降の1970年代のソロアイドルも普通の女の子とは違う雰囲気を漂わせていた。麻丘めぐみ(67)、アグネスチャン(67)、百恵さんらである。

 ソロではないが、キャンディーズは1977年の解散宣言時に「普通の女の子に戻りたい!」とファンに訴えたくらい。つまり普通じゃないのがアイドル。それは1980年代に入ってからも続いた。

アイドルグループの誕生はおニャン子クラブから

 ところが、1980年代半ばになると、アイドルの定義が「普通の女の子」に一変する。やはり、おニャン子からだ。身近に存在しそうだからこそ、人気を博すようなった。

「それまでは普通とは違う存在になれる女の子を探し、レッスンしていたのですから、みんな困りましたよね(笑)。蓄積したノウハウが通用しなくなった」(芸能プロダクションスタッフ)

 ほかにもファン心理の変化があった。

「グループの中から自分のタイプの子を選ぶ時代になった。今になって思うと、『推し』の始まりもおニャン子」(同)

 応援の仕方も激変した。

「それまではソロアイドルごとに親衛隊なるファン集団が存在し、自由な応援を規制することもあった。ほかの親衛隊とトラブルになることもあり、その存在は評判がよくなかった。

 一方、おニャン子以降は親衛隊がいなかった。みんなでグループ全体を応援し、その中の好みの子を特にプッシュするようになった。今のグループアイドルの応援と同じ。こっちのほうがファンたちに支持された」(同)

 おニャン子のプロデューサーが時代観察に長けた秋元康氏(64)というのが大きかった。また、秋元氏がおニャン子のメンバーで考えた「卒業制度」はのちのグループアイドルに大きな影響を与える。

 この制度を最初にフル活用したのが「モーニング娘。」だった。1997年『ASAYAN』(テレビ東京)のオーディションの落選者5人によって結成されたグループなのは知られている通りだ。

「グループはつくるのは簡単だが、維持するのが難しい。メンバーが1人でも『脱退したい』『引退したい』と言ったら、存続が危ぶまれる。無理に続けても持たない」(前出・レコード会社OB)

 ところが、モー娘。の場合、脱けたいメンバーたちは次々と卒業させ、メンバーを入れ替えた。1期の福田明日香(38)、中澤裕子(49)、6期の藤本美貴(38)、10期の佐藤優樹(23)……。モー娘。の看板は残るから、半永久的に存在させることも可能になった。メンバーの入れ替えによって、グループ全体の年齢の上昇も避けられた。

ソロアイドル誕生はこの先あるのか

 2005年に活動を開始したAKB48、2011年に結成された乃木坂46なども卒業制度を採り入れている。どちらもプロデューサーは、最初に卒業制度を考え出した秋元氏だ。1人で戦うソロアイドルはますます厳しい時代になった。

「もうソロアイドルがグループに太刀打ちするのは難しい。だから今の街頭スカウトの対象は各社とももっぱら女優の卵」(前出・芸能プロダクションスタッフ)

 もっとも、芸能プロとレコード会社にとって、本当はソロアイドルのほうが望ましいのだという。

「アゴ足(食事代と交通費)だけ考えたって、グループは大変です。メンバー同士の人間関係にも目を配っていないとならない」(前出・レコード会社OB)

 ただし、AKBなど秋元氏がプロデュースするグループはメンバーの所属芸能プロがバラバラで、経費の負担が分散されている。おニャン子から40年近くグループを手掛けている秋元氏だけにウィークポイントをつくらないようにしている。

 もうソロアイドルの時代は到来しないのだろうか。

「はっきり言って来ない。グループ内の人気者すら卒業すると歌手になるのは難しく、タレントか女優でしかやっていけないのですから」(同)

 百恵さんや明菜も今の時代にデビューしていたら、グループの一員としてやっていくしかなかったのだろうか。

取材・文/高堀冬彦(たかほり・ふゆひこ)放送コラムニスト、ジャーナリスト。1964年、茨城県生まれ。スポーツニッポン新聞社文化部記者(放送担当)、「サンデー毎日」(毎日新聞出版社)編集次長などを経て2019年に独立。

 

 

 

 

 

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  • 今日NHK-FMで、南沙織さんの『潮風のメロディ』(『シルバー仮面』第六回『さすらいびとの荒野』挿入歌♪)と、シモンズの『恋人もいないのに』がかかって嬉しい(^^)。
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