マイナンバーカードを使ったコンビニでの公的証明書を交付するサービスで、別人の証明書が発行される問題が、今年3月以降に各地で相次いで発生した。
マイナンバーカードと健康保険証を一体化をする作業では、同姓同名など他の人との情報とひも付けてしまうケースが判明。公金受け取り口座とのひも付けにおいても、本人ではなく親など別な人物の口座が登録される事案が約13万件見つかった。
トラブル多発の理由
トラブル多発のマイナンバーカード。セキュリティー面などで不安を抱く人も多いのでは?
「コンビニで別の人の証明書が発行されたのは、『富士通Japan』が作ったプログラムのバグが主な原因です。問題が発生したのは、富士通のこのシステムを使った自治体ばかりなんです」
そう教えてくれたのは、セキュリティー事情に詳しいITジャーナリストの三上洋さん。誤登録などのトラブルが起こった背景について解説してもらった。
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「健康保険証のひも付けミスは、7300件以上も発覚しています。これは自治体や健康保険組合が、限られた人数で膨大な数の入力作業を一気にしているのに、国がそのための予算や新たな人員をきちっと割り当てていないため。だから現場に無理が生じている。ヒューマンエラーは、人間ですから絶対になくならないんです。エラーが出ることを前提にして、早めに検知し直していく。そういう仕組みづくりが必要です」(三上さん、以下同)
政府は2026年中に新マイナンバーカードの導入を目指すことを発表。
現在のカードには性別や生年月日、住所などが記載されているが、本人であることを証明する機能を残しながら、記載する情報を精査したり、新規データ誤登録の防止策の徹底なども検討していく方針だ。
今後の改善策は?
三上さんはカード本体のセキュリティーにほぼ問題はないという。トラブルの原因が、前述のとおりシステムや作業時の人的要素にあるからだ。しかし、問題点はほかにもある。
「公金の受け取り口座とのひも付けで別人の口座を登録するなどのミスが起きているのは、マイナンバーカードには名前のふりがなの記載がないことも原因です。これは、戸籍法に問題があります。自治体によって違いますが、戸籍や住民票には基本的にふりがなの記載がない。一方、銀行口座の名義人はカタカナで登録されています。そのためひも付けようとしても、現状では名前が合っているかどうか照会できないんです」
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6月2日、これまで記載のなかった戸籍や住民票などに名前のふりがなを必須とする戸籍法の改正案が参議院を通過し、施行される運びとなった。公金の受け取り口座とマイナンバーカードのひも付けのトラブル防止が期待されるが、ほかにどんな改善策が必要とされているのか?
「マイナンバーカードに名前のふりがなをふるのは必要でしょう。もうひとつは、マイナンバーカードの使い方をなかなか理解できない高齢の方などのフォローも課題です。こういった層の困りごとも吸い上げるような仕組みづくりも必要だと思います」
不安材料だらけの運用となったマイナンバーカード。3年後の新カード導入の際には、トラブルのない門出を迎えてほしい。
◎三上 洋さん セキュリティー、ネット事件、スマートフォン、ネット動画が専門のITジャーナリスト。守備範囲はウイルスからネット炎上まで多岐にわたる。
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